みなし残業を見抜く5項目|第二新卒が求人票の年収の中身を確認する手順【2026年版】
〜提示された年収の中に、何時間分の残業代が入っているかを確認していますか〜
「年収400万円」と書かれた求人が2つあったとして、中身は同じとは限りません。
片方は、基本給ベースで400万円。もう片方は、月45時間分の固定残業代を含んで400万円。
この2つは、実質的にまったく違う条件です。
後者の場合、月45時間の残業をして、ようやく提示額に届きます。45時間働かなくても支給はされますが、逆に言えば、45時間までは残業をしても追加の支払いがありません。
これが、固定残業代(みなし残業)です。
制度そのものは違法ではありません。適切に運用されていれば、問題のない仕組みです。
問題は、応募者が気づかずに入社することです。
この記事では、求人票で確認すべき5項目と、面接での聞き方を整理します。
1. 結論:求人票で確認する5項目
| # | 確認項目 | どこを見るか |
|---|---|---|
| ① | 固定残業代が含まれているか | 給与欄の但し書き |
| ② | 何時間分か | 「◯時間分」の記載 |
| ③ | いくら分か | 「◯円を含む」の記載 |
| ④ | 超過分は支払われるか | 「超過分は別途支給」の記載 |
| ⑤ | 基本給はいくらか | 固定残業代を引いた額 |
①〜④は、求人票への記載が求められている項目です。
固定残業代を採用する場合、次の3点を明示することとされています。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に相当する時間数と金額
- 固定残業時間を超える分は、追加で支給する旨
この3つが書かれていない求人は、その時点で判断材料になります。
書かれていないなら、面接で聞いてください。
2. なぜ気づかないのか
求人票の書き方に、理由があります。
実際の記載の例
月給 280,000円〜350,000円 ※固定残業代(45時間分/62,000円〜77,500円)を含む ※超過分は別途支給
「月給28万円」が大きく表示され、その下に小さく但し書きがある形です。
検索結果の一覧では、但し書きが表示されないことも多くあります。
そして、応募者は「月給28万円」だけを見て応募します。
分解してみる
上の例を分解すると、こうなります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月給の総額 | 280,000円 |
| 固定残業代(45時間分) | −62,000円 |
| 基本給 | 218,000円 |
基本給は21.8万円です。
この会社で残業がゼロだった場合も28万円は支給されますが、実際には45時間の残業を前提にした設計です。
そして、45時間は決して少ない残業時間ではありません。
| 月の残業時間 | 1日あたり(月20営業日) |
|---|---|
| 20時間 | 1時間 |
| 30時間 | 1.5時間 |
| 45時間 | 2時間15分 |
| 60時間 | 3時間 |
45時間分の固定残業代がある会社は、「毎日2時間程度の残業がある」ことを前提に設計されている、と読んでください。
3. 編集長の実体験:面接の場で気づいた
私が第二新卒で転職活動をしていたとき、4社目の一次面接で、固定残業代の存在に初めて気づきました。
それまで3社の面接を受けていましたが、一度も確認していませんでした。
その日の面接で、こういうやり取りがありました。
面接官「給与について、何かご質問はありますか」
私「求人票に月給30万円とありましたが、その理解で合っていますでしょうか」
面接官「はい。ただ、そこには固定残業代が45時間分含まれています」
私「……45時間分、ですか」
面接官「基本給は23万4千円です。残業が45時間を超えた分は、別途お支払いします」
私「実際の残業時間は、どのくらいでしょうか」
面接官「部署によりますが、うちのチームだと月30〜40時間くらいですね」
その場で、この会社への志望度が下がりました。
金額の問題ではありません。
「月30〜40時間の残業が常態化している」ことが分かったからです。
そして、私が問題だと思ったのは、自分がそれまでの3社でこれを確認していなかったことです。
帰宅してから、それまでに受けた3社の求人票を見直しました。
1社に、「固定残業代30時間分を含む」という記載がありました。読んでいませんでした。
ここで学んだのは、求人票の給与欄は、金額ではなく但し書きを読むということです。
そして、面接では必ず聞くべきだということです。
「給与のことを聞くと印象が悪いのでは」と思っていましたが、この面接官は普通に答えてくれました。
むしろ、聞かない方が、後で困ります。
4. 記載パターン別の読み方
求人票の書き方は、大きく4パターンあります。
パターン① 明記されている
月給 280,000円(固定残業代45時間分・62,000円を含む。超過分は別途支給)
最も誠実な書き方です。時間数、金額、超過分の扱いがすべて書かれています。
判断材料が揃っているので、あとは45時間という数字をどう見るかだけです。
パターン② 時間数だけ書かれている
月給 280,000円(固定残業代を含む)
時間数と金額が書かれていません。
面接で必ず確認してください。
パターン③ 別欄に小さく書かれている
給与欄には金額だけがあり、「備考」や「その他」の欄に固定残業代の記載があるパターンです。
求人票は、給与欄だけでなく全体を読んでください。
パターン④ 記載がない
固定残業代の制度がない場合と、記載を省いている場合の両方があります。
面接で「固定残業代の制度はありますか」と確認してください。
求人票の読み方全般については、専用の記事にまとめています。
5. 面接での聞き方
聞いて印象が悪くなることはありません。
むしろ、条件を確認せずに入社して早期に辞める方が、企業にとっても損失です。
聞くタイミング
| タイミング | 適否 |
|---|---|
| 一次面接の逆質問 | 可(ただし他の質問の後に) |
| 二次面接の逆質問 | 推奨 |
| 最終面接 | 可 |
| 内定後の条件確認 | 必ず確認 |
| エージェント経由 | 担当者に聞くのが最も楽 |
エージェント経由なら、担当者に聞いてください。面接の場で聞く必要がなくなります。
聞き方の文例
文例①(記載がある場合)
「求人票を拝見しまして、固定残業代が45時間分含まれるとありました。実際の平均的な残業時間は、どのくらいでしょうか。」
文例②(記載がない場合)
「給与について1点確認させてください。提示いただいている金額に、固定残業代は含まれておりますでしょうか。」
文例③(内定後)
「条件面について確認させてください。基本給、固定残業代の時間数と金額、超過分の扱いについて、ご教示いただけますでしょうか。」
③は、内定通知書または労働条件通知書に記載されているはずです。
書面で受け取り、内容を確認してから承諾してください。
実際の残業時間を聞く
固定残業代の時間数より、実際の残業時間の方が重要です。
| 質問 | 分かること |
|---|---|
| 「配属予定の部署の、月平均の残業時間を教えてください」 | 実態 |
| 「繁忙期と閑散期で、どのくらい差がありますか」 | 年間の波 |
| 「45時間を超える方は、どのくらいいらっしゃいますか」 | 超過の頻度 |
「部署によります」という答えが返ってきたら、「配属予定の部署では」と重ねて聞いてください。
6. 固定残業代の仕組みを正確に理解する
誤解が多い点を整理します。
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 固定残業代は違法 | 違法ではない(要件を満たせば適法) |
| 何時間残業しても給与は同じ | 超過分は支払われる(支払わないのは違法) |
| 残業しなければ減額される | 減額されない(固定額として支給) |
| 45時間分あるなら45時間残業しないといけない | そうではない |
重要なのは、超過分の扱いです。
固定残業時間を超えて働いた分については、別途割増賃金を支払う必要があります。
「45時間分の固定残業代を払っているから、それ以上は払わない」という運用は、法令に反します。
求人票に「超過分は別途支給」と書かれていない場合、面接で必ず確認してください。
時間数の目安
時間数そのものについても、目安を持っておいてください。
| 固定残業時間 | どう読むか |
|---|---|
| 10〜20時間 | 一般的な範囲 |
| 20〜30時間 | やや多め |
| 30〜45時間 | 常態的な残業を前提とした設計 |
| 45時間超 | 労働時間の管理体制を確認すべき |
時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間と定められています(労働基準法)。
特別条項付きの労使協定がある場合は例外がありますが、45時間を超える固定残業代の設定は、慎重に見た方がよい水準です。
7. 年収を正しく比較する方法
複数社の条件を比較するときは、次の表を埋めてください。
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 提示月給 | 280,000円 | 265,000円 |
| 固定残業代 | 45時間/62,000円 | 20時間/33,000円 |
| 基本給 | 218,000円 | 232,000円 |
| 賞与 | 年2回(2ヶ月分) | 年2回(3ヶ月分) |
| 実際の残業(面接で確認) | 月30〜40時間 | 月15時間 |
| 時間あたりの実質 | 低い | 高い |
提示月給はA社が高いですが、基本給と実際の残業時間を見るとB社の方が条件が良い、という判断になります。
賞与は基本給を基準に計算されることが多いため、基本給の差は賞与にも影響します。
この表を作らずに提示額だけで比較すると、判断を誤ります。
8. 入社後に気づいた場合
入社してから固定残業代の存在に気づいた場合、次の順で確認してください。
| # | 確認すること | どこを見るか |
|---|---|---|
| ① | 労働条件通知書の記載 | 入社時に受け取った書面 |
| ② | 就業規則・賃金規程 | 社内のイントラネットまたは人事に請求 |
| ③ | 給与明細の内訳 | 基本給と固定残業代が分かれているか |
| ④ | 実際の残業時間との差 | 勤怠記録 |
③が重要です。
給与明細で基本給と固定残業代が区別されていない場合、固定残業代として有効に機能していない可能性があります。
そして、④で「固定残業時間を超えているのに追加の支給がない」場合は、問題です。
その場合、まず人事に確認してください。
それでも解決しない場合は、勤務先を管轄する労働基準監督署に相談できます。
個別の事案については、労働基準監督署または弁護士に相談してください。この記事は法的助言を行うものではありません。
9. よくある質問
固定残業代は違法ではないのですか?
違法ではありません。基本給と区別されていること、時間数と金額が明示されていること、超過分が支払われることなどの要件を満たせば、適法な制度です。問題になるのは、これらの要件を満たしていない運用です。
残業をしなかった月も、固定残業代はもらえますか?
もらえます。固定残業代は、実際の残業時間にかかわらず定額で支給されるものです。残業がゼロの月に減額することは、原則としてできません。
45時間分の固定残業代がある会社は、避けるべきですか?
一概には言えません。重要なのは、実際の残業時間です。面接で「配属予定部署の月平均残業時間」を確認し、固定残業時間との差を見てください。実際が月15時間なのに45時間分が支給されるなら、応募者に有利な設計です。
面接で残業について聞くと、印象が悪くなりませんか?
なりません。労働条件の確認は、応募者の正当な行為です。ただし、逆質問の1問目に持ってくると、条件だけを見ていると受け取られる可能性があります。業務内容の質問をした後に聞いてください。
求人票に固定残業代の記載がない場合、制度はないと考えていいですか?
そうとは限りません。記載を省いている場合があります。面接または内定後の条件確認で、必ず直接確認してください。
内定後に、条件が求人票と違っていました。
労働条件通知書の内容を確認し、違いがあれば企業に確認してください。説明に納得できない場合、内定を辞退することは可能です。承諾する前に、書面で条件を受け取ってください。
固定残業代の分、基本給が低いと何が困りますか?
賞与と退職金の算定に影響することがあります。賞与を「基本給の◯ヶ月分」で計算する会社では、基本給が低いと賞与も低くなります。賞与の計算基準を、面接で確認してください。
みなし残業と裁量労働制は同じですか?
違います。固定残業代(みなし残業)は、一定時間分の残業代を定額で支払う制度です。裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたとみなす制度で、対象となる業務が法令で限定されています。求人票にどちらの記載があるかを確認してください。
10. まとめ:今夜やる3つのこと
求人票の給与欄は、金額ではなく但し書きを読んでください。
「年収400万円」の中に、月45時間分の残業代が含まれているかどうかで、条件はまったく変わります。
今夜やること
① 応募を検討している求人の給与欄を開き、但し書きを読む(5分)
② 固定残業代の記載があれば、時間数を引いて基本給を計算する
③ 記載がなければ、面接で聞く質問文をメモに書く
目安時間:合計20分
①は5分で終わります。
私は、これを3社分やらずに面接を受けていました。4社目の面接で指摘されるまで、自分が何を見ていなかったのかに気づいていませんでした。
この先、読むべき記事
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- 第二新卒の年収|下がるのか上がるのか、職種転換のときの実態(年収の考え方)
- 正社員・契約社員・派遣の違い|第二新卒が雇用形態を選ぶ基準(雇用形態と条件)
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- 面接の逆質問|第二新卒がそのまま使える30例と聞いてはいけない質問(条件の聞き方)
- 残業が少ない会社の見分け方|第二新卒が求人票と面接で確認する7項目(残業の少ない会社の見分け方)
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- 時短・フレックス求人の見抜き方|第二新卒が確認する7項目(フレックス求人の見抜き方)
- 週休3日制と裁量労働制の実際|求人票で確かめる5項目(裁量労働制の場合)
- 給与明細の見方|提示年収と手取りの差を埋める(給与明細で内訳を確認する)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。