要件定義・上流工程へ移る|第二新卒が実装から移るための材料と順番【2026年版】
〜「言われたものを作る」から抜けたい人へ〜
エンジニアとして実装を続けていると、あるとき疑問が出てきます。「そもそも、なぜこれを作るのか」です。
決まった仕様どおりに作ってはいるが、その仕様が本当に課題を解くのか分からない。この違和感が出てきたら、上流工程に関心が向いている合図です。
ただ、実装を続けているだけでは、自動的に上流へ移ることはありません。意識的に材料を作る必要があります。
この記事では、上流工程で実際にやることを分解して、そこへ向かう順番を整理します。
1. 結論:押さえるべきは3点
上流へ移るときの3つの前提
① 上流の仕事は「何を作るか」ではなく「何を解くか」を決めること
② 技術力より、聞き出す力と、曖昧さを潰す力が中心
③ 実装の経験があることが、上流での強みになる
③が第二新卒にとって重要です。
実装を知らずに要件を決めると、作れないものや、無駄に手間のかかるものを要求してしまいます。作る側の感覚を持っている人が上流に入ると、判断の質が変わります。
だから、実装の年数は無駄になりません。むしろ前提として必要です。
2. 上流工程で実際にやること
| 仕事 | 中身 |
|---|---|
| 課題の把握 | 顧客や事業側が何に困っているかを聞く |
| 要求の整理 | 言われたことの背後にある目的を探る |
| 優先順位の決定 | 何から作るかを決める |
| 要件の文書化 | 曖昧さのない形にまとめる |
| 実現性の判断 | 技術的に可能か、どのくらいかかるか |
| 関係者の合意 | 決めた内容に納得してもらう |
2行目が、上流工程の中心です。
「この機能が欲しい」と言われたとき、そのまま作るのが実装、なぜそれが欲しいのかを聞くのが上流です。
目的を聞くと、別の解き方が見つかることがあります。作らずに解決できるなら、それが最も良い結果です。
「言われたものを作らない」ことの意味
これは、要求を無視するという意味ではありません。
実際にやること
・「これが欲しい」の背後にある困りごとを聞く
・その困りごとを解く方法を、複数考える
・それぞれの手間と効果を並べる
・相手と一緒に選ぶ
この過程を経ると、相手も納得したうえで進められます。
そして、この進め方は業種を問わず通用します。上流工程の経験が、他の職種でも評価される理由です。
3. 必要な力
| 力 | なぜ必要か |
|---|---|
| 聞き出す力 | 相手は困りごとを言語化できていない |
| 曖昧さを潰す力 | 解釈の差が後で問題になる |
| 文書にする力 | 口頭の合意は残らない |
| 実現性の判断 | 作れないものを約束しない |
| 合意を作る力 | 関係者が複数いる |
「曖昧さを潰す力」が最も実務的です。
「だいたいこんな感じで」を、そのまま進めると、出来上がったものが期待と違います。作り始める前に、解釈が分かれる箇所を特定して確認するのが、この仕事の中心です。
この力は、海外のチームと開発するブリッジSEの役割とも共通しています。詳しくはブリッジSEという職種|第二新卒が開発と言語の間に立つ仕事を知るを参照してください。
4. 現職で作れる4つの材料
実装をしながら作れるもの
① 仕様の曖昧な箇所を見つけて、確認する
② 「なぜこれを作るのか」を聞く
③ 実装した後、使われたかどうかを追う
④ 作らずに解決できた例を作る
①が最も始めやすく、最も評価されます。
仕様書を読んで、解釈が分かれる箇所を先に指摘するだけです。これは実装者の立場でもできますし、やっていると上流側から見て「話が早い人」になります。
④は難易度が高いですが、一つあれば強い材料になります。「設定の変更で対応できたので、開発せずに済んだ」といった話です。
移り方の構造は運用保守から開発へ移る|第二新卒が現職で作れる材料と移り方の順番と共通しています。
5. 話を聞いた例:2年目で要件定義に入った人
知人に、実務2年目で要件定義の場に呼ばれるようになった人がいます。
その人がやっていたのは、次のことでした。
実際にやっていたこと
・仕様書を読んで、疑問点を箇条書きにして送っていた
・「この場合はどうなりますか」という条件の抜けを指摘していた
・実装の途中で気づいた矛盾を、その都度報告していた
・作った機能が使われているかを、記録で確認していた
2つ目が決め手でした。
条件の抜けは、上流の担当者が最も見落としやすい部分です。それを実装者が先に指摘してくれると、手戻りが減ります。
その結果、「最初から入ってもらったほうが早い」という判断になり、要件定義の場に呼ばれるようになりました。
年数ではなく、この動き方が呼ばれる理由を作っています。
6. 社内異動と転職の使い分け
| 社内異動 | 転職 | |
|---|---|---|
| 必要な材料 | 日々の動き方 | 書類で示せる実績 |
| 業務知識 | 既にある | 一から覚える |
| 難易度 | 制度と枠があれば現実的 | 上流の経験を求められる場合がある |
| 年収 | 大きくは変わらないことが多い | 変動する |
まず社内で機会を作るほうが現実的です。
上流工程は、その事業や顧客の業務を知っていることが前提になります。転職して一から覚えるより、今の環境で入り込むほうが早く到達します。
ただし、実装のみを請け負う会社では、上流の仕事が社内に存在しない場合があります。その場合は転職が必要です。
会社の型による違いはSES・受託・自社開発の違い|未経験エンジニアが最初に選ぶ基準、SIerと事業会社の違い|どちらを選ぶかの基準を参照してください。社内異動の仕組みは社内公募の使い方|辞めずに職種を変える手順にまとめています。
7. 求人票での見分け方
| 手がかり | 意味 |
|---|---|
| 「要件定義から参画」 | 上流に関われる |
| 「設計・開発」 | 設計の範囲を確認する |
| 「顧客折衝あり」 | 顧客と直接話す |
| 「詳細設計以降」 | 上流には関わらない |
| 「一次請け」 | 上流に近い位置 |
「詳細設計以降」と書かれている場合、要件定義には関わりません。
また、商流の位置も影響します。顧客と直接契約している会社のほうが、上流に関わる機会が多くなります。
技術名から環境を読む観点は技術スタックの見方|求人票の技術名から3年後を読むを参照してください。
8. 面接で聞かれることと答え方
| 質問 | 見られていること | 答え方の軸 |
|---|---|---|
| 上流に関わった経験は | 実際の範囲 | 指摘した内容で話す |
| 仕様の矛盾を見つけた経験 | 曖昧さへの感度 | 具体的な場面で話す |
| 顧客と話した経験は | 対人の力 | 相手と内容で話す |
| なぜ上流へ移りたいか | 動機 | 「なぜ作るか」への関心で答える |
| 実装は続けたいか | 期待値の確認 | 正直に答える |
「上流に関わった経験」で、正式に要件定義を担当した経験は不要です。
「仕様の曖昧な箇所を指摘した」「条件の抜けを見つけた」という話で構いません。やっていることの性質が同じだからです。
「実装は続けたいか」も重要な質問です。上流に移ると、コードを書く時間は減ります。ここを曖昧にすると、入社後にずれます。
書類の作り方はエンジニアの職務経歴書|書く順番と3つの必須欄にまとめています。
9. よくある質問
何年目から目指せますか
年数より材料です。仕様の曖昧な箇所を指摘した経験があれば、2年目からでも土俵に乗ります。
技術力が落ちませんか
コードを書く時間は減ります。ただし、実現性を判断するために技術の理解は必要であり、学び続ける必要があります。
顧客と話すのが苦手です
上流の仕事は、話すより聞くことが中心です。「聞いて、整理して、確認する」という流れなので、話が上手である必要はありません。
実装に戻れますか
戻れます。ただし、離れる期間が長くなると、技術の変化に追いつく手間が増えます。
SESからでも移れますか
案件によります。実装のみを請け負う案件では、上流の経験が積めません。SESから抜けるための準備|案件を経歴に変える3ステップを参照してください。
資格は評価されますか
土台の証明としては機能します。ただし、上流の仕事では実際の経験が優先されます。IT系の資格はどれを取るか|第二新卒が目的別に選ぶ順番を参照してください。
PMOやテックリードとどう違いますか
PMOは進行の管理、テックリードは技術の判断、上流は作るものの決定に重心があります。それぞれPMOという職種|第二新卒が未経験から入れる理由と仕事の実際、テックリードという役割|第二新卒が最初に任される先を知るにまとめています。
事業会社とSIerではどちらが上流に近いですか
事業会社では自社の課題を扱い、SIerでは顧客の課題を扱います。どちらも上流の仕事はありますが、対象が違います。
10. まとめ:今週やる3つのこと
上流へ移るには、実装をしながら「決める側」の動き方を始めることです。
今週やる3つのこと
① 今の仕様書を読み直し、解釈が分かれる箇所を3つ探す
② それを箇条書きにして、確認を送る
③ 次の機能で「なぜこれを作るのか」を一度聞く
②が最も効きます。実装者が先に曖昧さを潰してくれると、上流側は助かります。そこから声がかかります。
この先、読むべき記事
- テックリードという役割|第二新卒が最初に任される先を知る(技術側の進路)
- PMOという職種|第二新卒が未経験から入れる理由と仕事の実際(管理側の進路)
- ブリッジSEという職種|第二新卒が開発と言語の間に立つ仕事を知る(曖昧さを潰す近い役割)
- 運用保守から開発へ移る|第二新卒が現職で作れる材料と移り方の順番(同じ構造の移り方)
- 社内公募の使い方|辞めずに職種を変える手順(社内で移る方法)
- 仕様書・設計書の読み方|未経験エンジニアが実装前に確かめる6つの観点(仕様書の読み方)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。