アジャイル開発の現場|第二新卒が求人票から実態を読む【2026年版】
〜求人票の「アジャイル開発」が、実態を表しているとは限りません〜
エンジニアの求人票で、「アジャイル開発を採用しています」という記載をよく見かけます。そして、それが良い環境の証だと受け取られがちです。
ただし、この言葉は実態の幅が非常に広い言葉です。本来の意味で運用している組織もあれば、短い期間で区切って進めているだけの組織もあります。
そして、未経験の第二新卒にとっては、この進め方が有利にも不利にも働きます。短い周期で確認が入るぶん軌道修正が早い一方、自分で判断する場面が多くなります。
この記事では、進め方の実態と、求人票から読む方法を整理します。
1. 結論:押さえるべきは3点
アジャイル開発を考えるときの3つの前提
① 「短い周期で作って、確かめて、直す」という進め方
② 求人票の記載と実態が一致しないことがある
③ 未経験には、軌道修正が早いという利点がある
③は見落とされがちです。
数か月分をまとめて作ってから確認する形では、方向がずれていたときの手戻りが大きくなります。短い周期で確認が入る環境では、間違いに早く気づけます。
これは、経験の浅い人にとって有利に働きます。
2. 従来の進め方との違い
| 従来の進め方 | アジャイルな進め方 | |
|---|---|---|
| 計画 | 最初に全体を決める | 大枠を決め、細部は進めながら |
| 期間の区切り | 工程ごと | 短い周期を繰り返す |
| 確認のタイミング | 工程の終わり | 周期ごと |
| 変更への対応 | 手続きが必要 | 前提として組み込む |
| 動くものが出る時期 | 終盤 | 早い段階から |
「変更が前提かどうか」が、最も大きな違いです。
従来の進め方では、決めたことを変えるのに手続きが必要でした。アジャイルな進め方では、進めながら分かったことを反映する前提で設計されています。
どちらが優れているという話ではありません。作るものの性質によって、適した進め方が変わります。
スクラムという枠組み
アジャイルな進め方を、具体的な手順に落とした枠組みの一つです。
よく使われる要素
・一定の期間で区切って進める
・毎日、短時間で状況を共有する
・期間の終わりに、できたものを見せる
・進め方そのものを振り返って改善する
・作るものに優先順位をつけて並べる
最後の「振り返って改善する」が、この枠組みの核心です。これがない組織は、形だけを取り入れている可能性があります。
3. 日々の流れ
| 場面 | 中身 |
|---|---|
| 朝の共有 | 昨日やったこと、今日やること、詰まっていること |
| 開発 | 割り当てられた作業を進める |
| 相談 | 詰まったら、その場で聞く |
| 期間の終わり | できたものを関係者に見せる |
| 振り返り | 進め方の問題を洗い出す |
「詰まったら、その場で聞く」ことが求められます。
抱え込むと、周期の終わりに間に合いません。そのため、この環境では早く聞くことが評価されます。
これは、未経験にとって有利な文化です。ただし、自分から声を上げる必要があるため、待っている姿勢だと埋もれます。
エンジニアの日々の仕事はエンジニアの1日の流れ|入社前に知っておくこと、チームでの働き方はチーム開発の経験がないとき|一人で作った実績の伝え方を参照してください。
4. 話を聞いた例:形だけだった現場
知人に、「アジャイル開発」と書かれた求人に入って、実態が違ったという人がいます。
その人が入社後に気づいたのは、次のことでした。
実際に起きていたこと
・2週間で区切ってはいたが、内容は最初に全部決まっていた
・朝の共有はあったが、進捗の報告だけで終わっていた
・振り返りの場はなく、進め方は変わらなかった
・変更の要望が出ると、追加の作業として積み上がった
「短い期間で区切っている」だけで、変更を前提にした設計になっていませんでした。
その人は、入社前の面接で「振り返りはどう運用していますか」と聞いていれば分かったと話していました。
形だけを取り入れている組織は、この質問への答えが具体的になりません。
5. 名ばかりの見分け方
| 確認する点 | 実態がある場合 | 形だけの場合 |
|---|---|---|
| 振り返り | 定期的に実施し、改善が出る | やっていない、形式的 |
| 優先順位 | 変わることがある | 最初から固定 |
| 変更への対応 | 次の周期に組み込む | 追加作業として積む |
| できたものを見せる場 | 関係者が参加する | 内部だけ |
| 見積 | チームで出す | 上から決まる |
最も分かりやすいのは、1行目と2行目です。
「振り返りをやっていて、そこから実際に変わったことがあるか」を面接で聞いてください。具体例が出てくるかどうかで、実態が見えます。
技術名から環境を読む観点は技術スタックの見方|求人票の技術名から3年後を読む、開発環境の見抜き方はレガシーな開発環境を求人票から見抜く|第二新卒が入社前に確認する7項目にまとめています。
6. 未経験にとっての利点と負荷
| 利点 | 負荷 | |
|---|---|---|
| 軌道修正 | 早く気づける | 頻繁に確認される |
| 質問 | 聞きやすい文化 | 自分から言う必要がある |
| 成果の見え方 | 短期で形になる | 周期ごとに評価される |
| 学習 | 幅広く触れる | 深く掘る時間が取りにくい |
| 判断 | 任される | 判断する場面が多い |
「自分から言う必要がある」が、最も大きな負荷です。
指示を待っている姿勢では、この環境では成果が出にくくなります。詰まったことを言葉にして、早く共有する習慣が必要です。
これは訓練で身につきます。入社後の最初の1か月で意識してください。
入社直後の動き方は入社後の3ヶ月|第二新卒がつらい時期を抜ける順番を参照してください。
7. 面接で聞く7項目
聞く7項目
① 周期は何日か
② 振り返りをやっているか、そこから何が変わったか
③ 優先順位は誰がどう決めるか
④ 見積は誰が出すか
⑤ できたものを見せる場に、誰が参加するか
⑥ チームの人数と、経験年数の構成
⑦ 未経験者が最初に担当するもの
②が最も実態を映します。
「やっています」で終わる回答と、「先月はこれを変えました」という回答では、組織の成熟度が違います。
逆質問の作り方は面接の逆質問|第二新卒がそのまま使える30例と聞いてはいけない質問を参照してください。
8. 経験がない場合の答え方
面接で「アジャイルの経験はありますか」と聞かれることがあります。
未経験であれば、正直に答えて構いません。そのうえで、次のように接続できます。
接続できる前職の経験
・短い期間で区切って、進捗を共有していた
・途中で方針が変わることに対応した
・詰まったことを早く報告する習慣があった
・やり方そのものを見直して改善した
4つ目が最も効きます。
「進め方を振り返って変えた」経験は、業種を問わず持っている人がいます。飲食店の仕込みの順番、事務作業の手順、店舗の運営。どれも同じ構造です。
書類での翻訳は未経験職種の自己PR|第二新卒が経験を翻訳する3手順と例文7パターンにまとめています。
9. よくある質問
アジャイルの経験がないと不利ですか
不利にはなりにくい項目です。入社後に慣れる前提の組織が多くあります。ただし、前職で「進め方を見直した」経験は材料になります。
資格は必要ですか
必須ではありません。スクラムに関する認定はありますが、実務の経験のほうが重視されます。
毎日の共有は負担になりませんか
数分から15分程度で終わるのが一般的です。長時間になっている場合、その運用自体が形骸化している可能性があります。
未経験でもアジャイルの現場に入れますか
入れます。むしろ軌道修正が早いため、経験の浅い人に向いている面があります。
従来の進め方の現場は避けるべきですか
避ける必要はありません。作るものによっては、計画を固めて進めるほうが適している場合があります。
「アジャイル」と書いてあれば良い会社ですか
そうとは限りません。振り返りの運用と、優先順位の決まり方を確認してください。
残業は少なくなりますか
進め方と残業は直接は関係しません。短い周期で区切ることで、終盤に負荷が集中しにくくなる面はあります。
開発以外の職種でも関係しますか
します。企画やデザインの担当も同じチームに入ることが多く、進め方を共有します。
10. まとめ:今週やる3つのこと
「アジャイル開発」という記載は、実態を確認して初めて意味を持ちます。
今週やる3つのこと
① 気になる求人3件で、業務内容に「振り返り」の記載があるか見る
② 面接で聞く質問として、②の「振り返りから何が変わったか」を用意する
③ 前職で「進め方そのものを見直した」場面を書き出す
③は、この環境で評価される力そのものです。業種を問わず、誰にでも1つはあります。
この先、読むべき記事
- レガシーな開発環境を求人票から見抜く|第二新卒が入社前に確認する7項目(環境を見抜く方法)
- エンジニアの1日の流れ|入社前に知っておくこと(日々の働き方)
- チーム開発の経験がないとき|一人で作った実績の伝え方(経験がない場合の説明)
- 技術スタックの見方|求人票の技術名から3年後を読む(求人票から環境を読む)
- 面接の逆質問|第二新卒がそのまま使える30例と聞いてはいけない質問(聞き方の設計)
- コードレビューの受け方|第二新卒が指摘から伸びるための3つの姿勢(チームの作法を知る)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。