SESから抜けるための準備|案件を経歴に変える3ステップ【2026年版】
SESで2年働いたが、現場は3回変わり、やったことはテスト、マニュアル更新、問い合わせ一次対応。職務経歴書に書けることが見つからない。
これは能力の問題ではなく、SESという契約形態の構造から来ています。常駐先が求めるのは「その現場で回る人」であって、エンジニアのキャリアではないからです。
ただし、SESから自社開発や受託に移った人は多くいます。共通しているのは、抜ける前に「案件を経歴に変換する作業」を済ませていることです。運が良かったわけではありません。
この記事では、守秘義務の範囲で何を書けるのか、現場にいるうちに何を取りに行くのか、そして面接で何を聞かれるのかを整理します。
1. 結論:抜けるためにやることは3つ
①今の現場で「担当した」と言える範囲を作る。テストだけでも、テスト設計に関わったのか、実行だけかで書ける内容が変わります。設計に触れる余地は、頼めば出ることがあります。
②守秘義務の線を先に確認する。「案件名は出せないが、担当範囲・技術・チーム規模は書ける」が原則です。ここを曖昧にしたまま書類を書くと、書ける内容まで削ってしまいます。
③抜けるタイミングを契約の切れ目に合わせる。案件の途中で辞めると、引き継ぎの負担が大きく、退職交渉も長引きます。
この3つのうち、①が最も時間がかかります。今日から始めても3〜6か月かかると考えてください。
2. なぜ経歴が書きにくくなるのか
SESの構造上、次のことが起きます。
| 構造 | 起きること |
|---|---|
| 常駐先が求めるのは「今の工程の人手」 | 上流や設計に入る機会が回ってこない |
| 現場が変わると技術も変わる | 1つの技術を深掘りできない |
| 案件名が出せない | 実績の説明が抽象的になる |
| 評価するのは自社の営業担当 | 技術的な成長が評価軸に入りにくい |
| 短期案件が続く | 「作って終わり」の経験が残らない |
つまり、SESは「何をやったか」ではなく「どこにいたか」が記録される働き方です。だから、自分から範囲を取りに行かないと、経歴に何も残りません。
現場が良ければ書ける経歴は作れる
一方で、SESでも常駐先によっては設計から任される現場があります。SESという形態そのものが不利なのではなく、現場によって差が極端に大きいのが実態です。
だから最初にやるのは、今の現場が「取りに行けば範囲が広がる現場」なのか「工程が固定されていて広がらない現場」なのかの判定です。判定方法は次章です。
3. 編集長の実体験:抜けた人が現場でやっていたこと
私の知人にSESで3年働いた後、受託開発の会社に移った人がいます。仮にEさんとします。Eさんの最初の1年半は、テスト実行と障害の一次切り分けだけでした。
Eさんが変えたのは、常駐先のリーダーへの頼み方でした。
Eさん「テスト実行のとき、テスト設計の意図が分からなくて手が止まることがあります。設計のレビューに同席させてもらえませんか」
リーダー「見るだけならいいけど、時間取れる?」
Eさん「実行の空き時間で構いません。理解できれば、実行のスピードも上がると思います」
同席が3か月続いた後、テストケースの一部を書くようになりました。半年後には、担当機能の単体テスト設計を任されるようになりました。
Eさん「面接では『テスト設計を担当し、レビューを経て実行まで一貫して担当した』と書けました。それまでは『テスト実行』としか書けなかったんです」
Eさんが取りに行ったのは「その工程の1つ上」だけです。設計や実装をいきなり頼んだわけではありません。
Eさん「いきなり実装をやらせてくださいと言っていたら、断られていたと思います。今やっている作業の理由を知りたい、という頼み方なら通りました」
1工程だけ上を取りに行く。これがSESの中で経歴を作る現実的な方法です。
4. 守秘義務の範囲で書けること
書けるものと書けないものを分けます。
| 項目 | 書ける/書けない |
|---|---|
| 常駐先の企業名 | 原則書けない(許可があれば可) |
| 業種・システムの種類 | 書ける(「金融系の基幹システム」など) |
| 担当工程 | 書ける |
| 使った技術・言語・ツール | 書ける |
| チームの人数と自分の役割 | 書ける |
| システムの規模感 | 書ける(「利用者数万人規模」など) |
| 具体的な設計内容・画面仕様 | 書けない |
| 顧客固有の業務ルール | 書けない |
書けないのは「その企業を特定できる情報」と「顧客の内部仕様」だけです。担当範囲・技術・規模は書けます。
書き方の例
案件A(保険会社向け契約管理システムの改修)/2025年4月〜2026年3月
・チーム8名(自社2名、他社6名)のうち、テスト設計・実行を担当 ・担当機能:契約更新画面のバリデーション処理、帳票出力 ・使用技術:(言語名)、(フレームワーク名)、(DB名) ・単体テスト設計をレビュー後に単独で作成。障害の一次切り分けから修正依頼まで対応 ・後半4か月は改修の実装も担当(設計レビューあり)
企業名がなくても、この粒度で書けば選考は通ります。逆に「保守運用業務」の一行だけでは通りません。
自社の営業担当や上長に、書類に書いてよい範囲を一度確認しておくと安心です。確認したという事実そのものが、面接で信頼材料になります。
5. 現場でやっておく3ステップ
| ステップ | 期間 | やること |
|---|---|---|
| 1. 記録 | 今日から毎日 | 担当した作業・使った技術・詰まった点を1日3行メモ |
| 2. 1工程上を取る | 1〜3か月 | 「設計の意図を知りたい」と頼み、レビューに同席 |
| 3. 担当を持つ | 3〜6か月 | 小さい範囲でよいので「自分が決めた」部分を作る |
ステップ1を飛ばさないでください。半年前にやったことは思い出せません。1日3行のメモが、そのまま職務経歴書の材料になります。
ステップ2で断られた場合は、理由を聞きます。「契約範囲外だから」という回答なら、その現場では広がりません。その場合は自社の営業担当に、次の案件で工程を変えられないか相談します。
自社の営業担当への頼み方
「次の案件では、テスト工程だけでなく実装にも入れる現場を希望したいです。技術は(言語名)系で続けられると助かります。難しい場合は、どういう条件なら可能か教えてください」
営業担当は「単価が合う現場」で探すため、希望を出さないと同じ工程が続きます。希望を出しても通らないことが2回続いたら、抜ける判断の材料になります。
6. 抜けにくくなる型5つ
| 型 | 何が起きるか |
|---|---|
| 案件の途中で退職を申し出る | 引き継ぎが長引き、退職日が後ろにずれる |
| 資格取得費用の返還条件がある | 退職時に返還を求められることがある |
| 案件記録を残していない | 職務経歴書が抽象的になり、書類が通らない |
| 現場に相談してしまう | 自社より先に常駐先に伝わり、話がこじれる |
| 技術を1つも深掘りしていない | 経験者枠で応募できる求人が見つからない |
4番目は特に注意が必要です。退職の話は必ず自社の上長が先です。常駐先の人に先に話すと、自社に伝わって関係が悪化します。
契約の切れ目は、案件の更新月です。多くは3か月・6か月単位なので、更新1〜2か月前に自社へ意思を伝えるのが最も揉めません。
7. 面接で聞かれること
自社開発や受託の面接では、次の質問が来ます。
- 「常駐先ではどこまでの工程を担当していましたか」
- 「自分で判断した部分はどこですか」
- 「技術の選定に関わったことはありますか」
- 「なぜSESから自社開発に移りたいのですか」
- 「案件が変わるたびに技術が変わったと思いますが、続けている技術はありますか」
最後の質問への答えを用意しておくと、印象が変わります。業務で触れていなくても、個人で継続している技術があれば言えます。
志望理由については、SESの批判にしないでください。「一つのプロダクトに継続して関わり、改善のサイクルを回したい」という形にすると、前職否定になりません。
「案件ガチャが嫌で」と言ってはいけない理由
正直な理由ではありますが、面接官には「配属や環境が希望と違ったらまた辞める人」と聞こえます。同じ内容を伝えるなら、次の形にします。
「案件ごとに担当工程が変わるため、一つの機能を長く育てる経験が積めませんでした。次は自社のプロダクトに継続して関わりたいと考えています」
環境への不満ではなく、やりたいことの説明になっているかどうかで判断されます。
8. 進め方と時間配分
| 段階 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 記録開始 | 毎日5分 | 作業・技術・判断した点を3行メモ |
| 守秘範囲の確認 | 30分 | 自社の上長に書類記載範囲を確認 |
| 1工程上の交渉 | 1〜3か月 | 現場のリーダーに同席を依頼 |
| 職務経歴書 | 3時間 | 案件ごとに「範囲・技術・規模・判断」で記述 |
| 求人選定 | 2時間 | 自社開発・受託で経験者枠を10件 |
| 応募〜退職交渉 | 2〜3か月 | 契約更新月の1〜2か月前に自社へ伝える |
準備を含めると半年前後かかります。「辞めたい」と思った時点で記録を始めておくと、動くときに困りません。
9. よくある質問
SESの経験は評価されませんか
されます。複数の現場を経験していることは、環境適応力として評価されます。不利になるのは経歴の中身が書けていない場合だけで、SESであること自体ではありません。
案件名を書かないと信用されませんか
されます。守秘義務があることは採用側も理解しています。むしろ案件名を書いてしまうほうが、情報管理を疑われます。業種とシステムの種類まで書けば十分です。
自社開発は未経験の技術でも受かりますか
受かります。ただし「使ったことはないが、業務で近い領域をやっていた」と説明できる必要があります。まったく接点のない技術に移る場合は、個人での学習実績を用意してください。
何年目で動くのがよいですか
1〜3年です。1年未満は書ける案件が少なく、3年を超えると「その年数でこの範囲か」と見られます。担当範囲が広がっているなら、3年以上でも問題ありません。
現場のリーダーに転職を相談してもいいですか
やめてください。雇用関係があるのは自社なので、常駐先に先に伝わると自社との関係が悪化します。相談したい場合は、社外の人かエージェントにしてください。
資格を取れば移れますか
資格だけでは移れません。担当範囲が書けることのほうが優先されます。ただし、インフラやクラウドなど業務で触れていない領域に移りたい場合は、資格が入口になることがあります。
退職を申し出たら、案件が終わるまで引き止められませんか
引き止めは起きます。ただし退職の意思表示から2週間で退職できるのが原則です。実務上は、案件の更新月に合わせるほうが円満に進みます。就業規則の記載も確認してください。
転職エージェントはSESでも使えますか
使えます。エンジニア専門か総合型を選んでください。未経験特化のエージェントは経験者枠の求人を持っていないことがあります。守秘義務の範囲は、担当者にも先に伝えておくと書類作成が早く進みます。
10. まとめ:今週やる3つのこと
SESから抜けるのは、意思よりも準備の量で決まります。そして準備の中心は、今の現場で「担当した」と言える範囲を作ることです。
1. 今日から1日3行のメモを始める。やった作業、使った技術、判断したこと。これが3か月分たまれば、職務経歴書の材料になります。
2. 現場のリーダーに「1工程上」を頼む。設計レビューへの同席、テスト設計への参加。今やっている作業の理由を知りたい、という頼み方なら通りやすくなります。
3. 自社の上長に、書類に書ける範囲を確認する。業種・工程・技術・規模のどこまで書けるか。これが分かれば、書ける内容を自分で削らずに済みます。
抜けるのは、書ける経歴ができてからです。順番を逆にすると、次も同じ働き方に戻ります。
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この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。