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SESの単価と年収の関係|自分の市場価格を知る計算【2026年版】

木戸 悠介 なぜキャリア? 編集長 公開 2026年9月6日 読了 約15分
SESの単価と年収の関係|自分の市場価格を知る計算【2026年版】

SESで働いていると、自分が常駐先にいくらで出されているのかが分かりません。そして、その金額と自分の給与がどうつながっているのかも説明されません。

これは構造上そうなっています。SESは、自社が常駐先から受け取る金額(単価)の中から、給与、社会保険料の会社負担分、社内の管理費、そして利益が支払われる形だからです。

単価を知らないまま働くと、自分の市場価格が分からないまま年数だけが過ぎます。転職のとき、いくらを希望していいかも判断できません。

この記事では、単価と年収のつながり、単価を聞く方法、単価を上げるために何をするか、そして転職の判断基準を整理します。なお、実際の金額は企業や案件によって大きく異なるため、ここでは考え方の枠組みを扱います。

1. 結論:知るべきことは3つ

①自分の単価を知る。聞いていい情報です。多くの企業は、聞かれれば答えます。答えない会社は、それ自体が判断材料になります。

②単価から給与までの引き算を理解する。単価がそのまま給与になるわけではありません。何が引かれるかを知ると、交渉の材料が変わります。

③単価が上がる条件を確認する。「経験年数」なのか「担当工程」なのか「資格」なのか。ここが分からないと、努力の方向が定まりません。

この3つを聞くだけで、キャリアの見通しが変わります。

2. 単価から給与までの流れ

常駐先が自社に支払う金額から、次のものが差し引かれます。

差し引かれるもの内容
社会保険料の会社負担分給与に応じて発生
賞与の原資月額給与とは別に積まれる
交通費・経費常駐先までの通勤費など
営業・管理部門の費用案件を取ってくる人件費、事務、家賃
教育・待機中の人件費案件が決まっていない社員の給与
会社の利益

つまり、単価と月給が一致することはありません。差が大きいこと自体は、必ずしも問題ではありません。待機期間中も給与が出る仕組みや、研修の費用がここから出ているためです。

問題になるのは、単価が上がっても給与が動かない場合です。

確認すべきは「単価が上がったとき何が起きるか」

単価そのものより、次の質問が重要です。

「単価が上がった場合、給与にはどのように反映されますか」

「評価制度に基づいて」という答えなら、その評価制度の中身を聞いてください。「その都度検討」という答えなら、反映される仕組みがない可能性があります。

3. 編集長の実体験:単価を聞いた人と聞かなかった人

私の知人に、SESで働くエンジニアが2人います。仮にIさんとJさんとします。2人とも入社3年目で、給与はほぼ同じでした。

Iさんは、2年目の面談で単価を聞きました。

Iさん「今、私はいくらで出ていますか」

上長「その質問は珍しいね。……教えてもいいけど、なぜ知りたいの」

Iさん「自分の市場価格を知っておきたいのと、上げるために何をすればいいか知りたいからです」

上長は金額を教えたうえで、こう続けたそうです。

上長「上げるには、今の工程より上に入る必要がある。テスト工程だけだと、単価は動かない」

Iさんはこの一言で、やるべきことが分かりました。常駐先に設計への参加を打診し、半年後に担当範囲が広がりました。3年目の契約更新で単価が上がり、給与も上がりました。

Jさんは、聞きませんでした。

Jさん「聞いていいものだと思っていなかったです。給料の話をするのは、なんとなく気まずくて」

3年目の時点で、Jさんの担当工程は入社時と同じでした。単価も変わっていませんでした。

Jさん「後から聞いたら、1年目のときとほぼ同じ金額でした。3年間、何も変わっていなかったということです」

差がついたのは、聞いたかどうかだけでした。単価は自分から聞かない限り、教えられることはありません。

なお、金額の具体的な水準は、地域・技術領域・工程・案件の性質によって大きく変わります。他人の金額と比べるより、自分の単価が時間とともに動いているかどうかを見てください。

4. 単価を聞くときの伝え方

聞き方によって、答えが返るかどうかが変わります。

通りやすい聞き方:

「今後のキャリアを考えるうえで、自分の単価と、それがどう決まっているのかを知っておきたいです。教えていただけますか」

「給料を上げてほしい」ではなく「基準を知りたい」という形にすると、答えが返りやすくなります。

続けて聞くこと:

  • 「単価が上がるのは、どういう条件がそろったときですか」
  • 「単価が上がった場合、給与にはどう反映されますか」
  • 「同じ年次の方の単価は、どのくらい幅がありますか」

3つ目は答えにくい質問ですが、「幅があるのか、ほぼ一律なのか」だけでも分かると有益です。一律であれば、個人の努力では動かない仕組みだということになります。

教えてもらえない場合

「その情報は開示していません」と言われることもあります。その場合は、次の質問に切り替えてください。

「金額は伺いませんが、単価が上がる条件だけ教えていただけますか」

条件も答えない場合は、昇給の仕組みが実質的に存在しない可能性があります。これは転職を検討する材料になります。

聞いた内容は記録する

面談で聞いた金額と条件は、その日のうちにメモしてください。次の更新時に「前回はこう伺いました」と言えるかどうかで、話の進み方が変わります。

記録するのは、単価、上がる条件、給与への反映の仕組み、そして誰がいつ言ったか。この4点です。

5. 単価が上がる要素

要素上がりやすさ理由
担当工程が上がる大きい設計・要件定義は単価が別建てになることが多い
一人で担当できる範囲が広がる大きいレビュー工数が減る
特定の技術領域の経験中程度需要のある領域なら効く
常駐先での評価中程度更新時の交渉材料になる
経験年数小さい年数だけでは動かないことが多い
資格小さい案件によっては要件になる

最も効くのは、担当工程です。テストや運用だけを続けていると、年数が増えても単価は動きにくくなります。

そして担当工程は、常駐先に頼まないと広がりません。自社の営業担当は、常駐先の工程配分までは決められないためです。

常駐先での頼み方

「今担当している範囲の1つ上、設計のレビューに同席させていただけませんか。実行のスピードも上がると思います」

いきなり設計を任せてもらうのではなく、同席から始めるのが通りやすい進め方です。

待機期間の扱いも確認する

案件と案件の間に待機期間が発生した場合、給与がどうなるかを確認してください。満額支給される会社と、減額される会社があります。

待機中も満額出る会社は、そのぶん平常時の還元率が抑えられていることがあります。単価と給与の差を評価するときは、待機時の保障とセットで見てください。差が大きいこと自体が不当とは限りません。

6. 転職で年収を上げる判断

状況判断
単価が上がったのに給与が動かない転職を検討する材料になる
単価も給与も3年動いていない環境を変えないと変わらない
担当工程が広がっていないまず工程を広げる。それから動く
自社開発・受託に移りたい書ける経歴を作ってから動く
同業他社に移る単価の還元の仕組みを事前に確認する

単価が上がっているのに給与が変わらない場合が、最も明確な判断材料です。会社が受け取る金額は増えているのに、還元されていないということだからです。

一方、担当工程が広がっていない状態で転職しても、行き先の単価も上がりません。先に工程を広げるほうが、結果的に年収は上がります。

転職先で確認すること

同業他社に移る場合は、面接で次を確認してください。

  • 「単価は本人に開示されますか」
  • 「単価が上がったとき、給与への反映の仕組みはありますか」
  • 「案件の選択に、本人の希望はどの程度反映されますか」

1つ目に即答できる会社は、透明性が高い傾向があります。

単価の話をいつするか

契約更新の1〜2か月前が最も適しています。更新の交渉が始まる前なら、自分の希望を反映させる余地があるからです。

更新が決まった後に話しても、次の更新まで動きません。年に2回の更新なら、その1〜2か月前を目安に面談を入れてください。

7. やってはいけない5つ

対応何が起きるか
単価を一度も聞かない市場価格が分からないまま年数が過ぎる
常駐先の人に単価を聞く契約上の情報なので、自社との関係が悪化する
「給料を上げてください」とだけ言う根拠がないため動かない
単価を他の社員と比較して話す情報管理の問題になる
工程を広げずに転職だけ考える行き先でも同じ単価になる

2番目は特に注意してください。単価は自社と常駐先の契約情報です。聞く相手は自社の上長か営業担当です。

8. 進め方と時間配分

段階時間やること
面談の設定5分上長か営業担当に時間をもらう
質問の準備15分単価・条件・反映の3問を用意
面談30分聞いて、答えをメモする
工程を広げる打診1〜3か月常駐先のリーダーに同席を依頼
判断半年後単価と給与が動いたかを確認

まず1回、聞いてください。それだけで、次にやることが決まります。

9. よくある質問

単価を聞くのは失礼ではないですか

失礼ではありません。自分の労働がいくらで取引されているかを知ることは、正当な関心です。キャリアを考えるためという理由を添えれば、多くの会社は答えます。

単価と給与の差が大きいのは問題ですか

差があること自体は構造上当然です。問題なのは、単価が上がっても給与が動かない場合です。差の大きさより、連動しているかどうかを見てください。

単価が下がることはありますか

あります。案件が変わるとき、常駐先の予算によって下がることがあります。その場合に給与がどうなるかも、あわせて確認してください。

経験年数が増えれば単価は上がりますか

自動的には上がりません。担当工程が変わらなければ、年数だけでは動きにくいのが実態です。

常駐先から直接評価されていれば単価は上がりますか

更新時の交渉材料にはなります。ただし交渉するのは自社の営業担当なので、本人の評価が自社に伝わっているかを確認してください。

資格を取れば単価は上がりますか

案件の要件になっている資格であれば効きます。ただし、担当工程を広げるほうが影響は大きいのが一般的です。

単価を知ったうえで、給与交渉はできますか

できます。ただし「単価が高いから給与を上げてほしい」ではなく、「担当範囲が広がったので、評価基準に照らして見直しをお願いしたい」という形にしてください。根拠が業務内容にあるほうが通ります。

自社開発に移れば年収は上がりますか

上がるとは限りません。移った先での担当範囲によります。SESで設計まで担当していた人が、自社開発で実装だけになると下がることもあります。

10. まとめ:今週やる3つのこと

SESで働くうえで、単価は自分の市場価格を知る唯一の手がかりです。知らないまま年数だけ増えるのが、最も避けたい状態です。

1. 上長か営業担当に、単価を聞く時間をもらう。「今後のキャリアを考えるうえで知っておきたい」と伝えれば、多くの場合は答えてもらえます。

2. 質問を3つ用意する。今の単価、上がる条件、給与への反映の仕組み。この3つで、努力の方向が決まります。

3. 常駐先のリーダーに、1工程上への同席を頼む。単価が最も動くのは担当工程です。設計レビューへの同席から始めてください。

聞かなければ、3年経っても何も変わりません。まず1回、聞いてください。

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この記事を書いた人

木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。

23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。