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退職・引き継ぎ

取引先の引き継ぎ|後任への渡し方と挨拶の順番【2026年版】

木戸 悠介 なぜキャリア? 編集長 公開 2026年9月6日 読了 約15分
取引先の引き継ぎ|後任への渡し方と挨拶の順番【2026年版】

営業や顧客対応を担当していた場合、退職時には社内の引き継ぎだけでなく、取引先への引き継ぎが必要になります。

社内の引き継ぎと違い、こちらは相手が自分の会社の人ではないという難しさがあります。タイミングを間違えると、取引先に不安を与えたり、後任が入りにくくなったりします。

そして、この引き継ぎのやり方は、退職後の自分にも返ってきます。同じ業界に転職すれば、数年後に取引先として再会することがあります。

この記事では、後任への情報の渡し方、挨拶の順番、文面、そして転職先を聞かれたときの答え方を整理します。

1. 結論:順番は3つ

①後任が決まってから動く。後任が決まる前に取引先へ伝えると、「担当が不在になる」という不安だけが残ります。

②後任と一緒に伝える。メールでも訪問でも、後任の名前と連絡先を同時に出します。

③自分の連絡先は渡さない。渡すと、退職後も連絡が来ます。窓口は後任に一本化してください。

「担当が変わります」ではなく「〇〇が担当します」と言えるかどうかで、取引先の受け止め方が変わります。

2. 全体の流れ

時期やること
退職の1か月半前上司と、後任と引き継ぎの範囲を決める
1か月前取引先ごとの引き継ぎ資料を作成
3〜4週間前後任に説明。同席の予定を組む
2〜3週間前主要な取引先へ、後任と一緒に挨拶
1〜2週間前残りの取引先へメールで連絡
最終出社日社内の窓口情報を整理して残す

訪問が必要なのは、取引額が大きい先と、関係が深い先だけです。全社を回る必要はありません。

訪問とメールの分け方

取引先方法
定期的に訪問していた先後任と一緒に訪問
電話・メール中心の先メールで連絡。必要なら後任が電話
案件が進行中の先必ず訪問。進行中の内容を対面で共有
取引が止まっている先メールのみ

案件が進行中の先は、必ず対面で引き継いでください。メールだけだと、経緯が伝わりません。

3. 編集長の実体験:先に言ってしまった

私が前職を辞めるとき、担当していた取引先は20社ありました。

後任が決まる前に、関係の深い1社にこう言ってしまいました。

私「実は、来月末で退職することになりまして」

先方「え、そうなんですか。次の担当の方は」

私「まだ決まっていないんです」

先方「……いつ決まりますか」

この会話の後、先方から上司に問い合わせが入りました。

上司「〇〇社さんから、担当変更の件で連絡があったよ。まだ後任が決まっていないのに、なぜ先に言ったの」

私「関係が長かったので、早めに伝えたほうがいいと思って」

上司「気持ちは分かるけど、先方は『放り出される』と受け取るよ」

誠実さのつもりでしたが、逆効果でした。

2週間後、後任が決まりました。改めて、後任と一緒に訪問しました。

私「後任の〇〇です。〇月から担当させていただきます」

後任「〇〇です。木戸から経緯は聞いております。〇〇の件は、来月の納品まで責任を持って進めます」

先方「そうですか。よかった、安心しました」

同じ「担当が変わる」という話でも、後任がいるかどうかで受け止め方がまったく違いました。

その後、私は同じ業界に転職しました。3年後、その取引先の担当者と別の場面で再会しました。

先方「木戸さん、あのとき後任の方をきちんと連れてきてくれましたよね」

覚えられているのは、最後の対応です。

4. 後任に渡す情報

項目内容
基本情報会社名、担当者名、役職、連絡先
取引の内容何を、どのくらいの頻度で
過去の経緯過去のトラブルとその対応
進行中の案件現在の状況と、次にやること
関係性どういう頼み方が通るか、避けるべき話題
訪問の頻度どのくらいの間隔で連絡していたか
決裁の流れ誰が決めるか

最も価値があるのは「過去の経緯」と「関係性」です。この2つは資料に残っていないことが多く、担当者しか知りません。

関係性の書き方

抽象的にならないよう、具体的な出来事で書いてください。

「〇〇様は、事前に資料を送ってから訪問すると話が早い。当日に資料を出すと、その場では判断されない。

2025年5月に納期が遅れた件があり、その際は事前連絡が遅かったことを指摘された。以降、進捗は週次で報告している」

過去のトラブルは必ず書いてください。知らずに同じことをすると、後任が信頼を失います。

資料は、後任が読むものであると同時に、その次の担当者も読むものです。固有名詞と日付を省略しないでください。

5. そのまま使えるメール文面

後任と一緒に送る場合:

件名:担当変更のご挨拶(株式会社〇〇 〇〇)

株式会社〇〇 〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社〇〇の〇〇です。

私事で恐縮ですが、〇月〇日をもちまして退職することとなりました。在任中は大変お世話になり、ありがとうございました。

後任は、同じ部署の〇〇が務めます。〇〇には、これまでの経緯と進行中の案件について引き継いでおります。

〇〇の連絡先は下記の通りです。 (メールアドレス) (電話番号)

引き続き変わらぬお付き合いをいただけますと幸いです。

改めまして、これまでのご厚情に深く感謝申し上げます。

後任からの挨拶(同日または翌日に送る):

株式会社〇〇 〇〇様

お世話になっております。〇〇の後任として担当いたします〇〇と申します。

〇〇より、これまでの経緯を引き継いでおります。進行中の〇〇の件につきましては、〇月〇日の納品に向けて予定通り進めております。

ご不明な点がございましたら、いつでもご連絡ください。近日中にご挨拶に伺えればと存じます。

2通をセットで送ると、取引先の不安がほぼ解消されます。

送る順番

  1. 関係の深い先に、先に訪問または電話
  2. その他の先に、メールで一斉ではなく個別に送信
  3. 後任からの挨拶を、同日か翌日に

一斉送信は避けてください。宛名が入っていないだけで、扱いが軽く見えます。

なお、退職の連絡は、こちらから出す前に取引先に伝わっていることがあります。業界内で人の異動の話は早く回るため、先方が先に知っている前提で構えておいてください。その場合も、後任を紹介する形は変わりません。

6. やってはいけない5つ

行動何が起きるか
後任が決まる前に伝える「放り出される」と受け取られる
自分の私用の連絡先を渡す退職後も業務の連絡が来る
転職先を伝える前職と現職の双方で問題になる可能性
退職理由を詳しく話す会社への不満が取引先に伝わる
引き継ぎ資料を作らずに口頭だけで済ます後任が対応できず、取引先に迷惑がかかる

3番目は特に注意してください。同業に転職する場合、取引先に転職先を伝えると、後から営業をかけたと受け取られる可能性があります。

2番目も避けてください。親しくしていた相手ほど渡したくなりますが、渡すと窓口が二重になります。後任が入りにくくなり、退職後も連絡が続きます。

転職先を聞かれたときの答え方

「同じ業界の会社に移ります。詳細は控えさせていただきますが、これまでのご縁には感謝しております」

これで十分です。しつこく聞かれても、同じ答えを繰り返してください。

同席する訪問での話し方

同席する訪問では、話す時間の配分を意識してください。自分が7割話すと、後任が紹介されただけの人になります。

進め方は次の通りです。最初の5分で自分が退職と後任の紹介をし、そこから先は後任が話す。取引先の質問には、後任が答えられるものは後任に答えてもらってください。

答えられない質問が出たときだけ補足します。この形にすると、取引先は「この人に聞けばいい」と理解します。

7. 引き継ぎ後のトラブルを防ぐ

対策内容
資料に索引を付ける後任が探せる形にする
進行中の案件は期日を明記いつ何をするかを一覧に
過去のトラブルを必ず書く同じことを繰り返させない
決裁者を明記する誰に話せば決まるかを残す
引き継ぎ後1〜2週間は社内で対応可能にする質問に答えられる状態にしておく

最後の項目が効きます。最終出社日までの1〜2週間、後任からの質問に答えられる状態にしておくと、退職後の連絡が減ります。

退職後に連絡が来た場合は、後任か社内の窓口に回してください。個別に対応すると、それが前提になります。

引き継ぎの資料は、社内の共有フォルダに置いてください。後任だけに渡すと、その後さらに担当が変わったときに失われます。

8. 進め方と時間配分

段階時間やること
取引先の一覧化60分全社を書き出し、対応方法を分類
資料の作成1社30分経緯・関係性・進行案件を記録
後任への説明1社20分資料を見ながら口頭で補足
訪問1社1〜2時間主要な先のみ
メールの送信1社10分個別に宛名を入れて送信

20社なら、資料作成に10時間、訪問に5社で10時間ほどです。1か月前から始めれば間に合います。

9. よくある質問

後任が決まらないまま最終出社日が来そうです

資料を完成させて上司に渡してください。取引先への連絡は、後任が決まってから会社側が行う形になります。自分から先に伝えないでください。

取引先に個人的に感謝を伝えたいです

会社の窓口として送る挨拶メールの中に、一文入れるだけにしてください。私用の連絡先を渡す形は避けてください。

全社を訪問すべきですか

必要ありません。取引額が大きい先、案件が進行中の先、定期的に訪問していた先に絞ってください。それ以外はメールで足ります。

取引先から「あなたに担当してほしい」と言われました

後任を紹介する形で応じてください。「〇〇が責任を持って担当します。私からも経緯はすべて伝えてあります」と伝えます。個人的な対応は約束しないでください。

転職先の会社と取引がある場合はどうしますか

転職先の上司に、先にその事実を伝えてください。前職との関係で配慮が必要な場合があります。自分だけで判断しないでください。

退職後に取引先から直接連絡が来ました

後任か、前職の窓口に回してください。「退職しておりますので、〇〇にご連絡いただけますでしょうか」で十分です。

引き継ぎ資料はどのくらいの分量が必要ですか

1社あたり1ページで足ります。基本情報、取引内容、経緯、進行中の案件、関係性の5項目です。長すぎると読まれません。

同業に転職する場合、競業の問題はありませんか

就業規則や誓約書を確認してください。取引先への営業活動が制限される場合があります。判断に迷う場合は、労働相談の窓口などで確認してください。

10. まとめ:今週やる3つのこと

取引先の引き継ぎで最も重要なのは、後任と一緒に伝えることです。順番を守れば、大半の問題は起きません。

1. 取引先の一覧を作り、対応方法を分類する。訪問するのか、メールで足りるのか。20社あっても、訪問が必要なのは5社程度です。

2. 1社あたり1ページの資料を作る。基本情報、取引内容、過去の経緯、進行中の案件、関係性。「過去のトラブル」を必ず入れてください。

3. 後任が決まるまで、取引先には伝えない。先に伝えると、不安だけを残すことになります。

最後の対応は、数年後に返ってきます。同じ業界で働き続けるなら、なおさらです。

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この記事を書いた人

木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。

23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。