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無期転換ルールとは|5年で申し込む権利と、転職を選ぶ場合の判断【2026年版】

木戸 悠介 なぜキャリア? 編集長 公開 2026年9月6日 読了 約15分
無期転換ルールとは|5年で申し込む権利と、転職を選ぶ場合の判断【2026年版】

契約社員として働いていて、4年目に入ったあたりでこの話を聞くことがあります。

「5年を超えると、無期に転換できるらしい」

これは事実です。ただし、内容を正確に理解している人はかなり少ない。

誤解が多いのは、次の3点です。

1. 自動的に無期になるわけではない(自分から申し込む必要がある) 2. 無期になっても正社員になるわけではない(雇用期間が消えるだけ) 3. 5年を待たずに雇止めされることがある

この3つを知らないまま5年目を迎えると、権利があったのに使えなかった、あるいは無期になったのに条件が何も変わらなかった、という結果になります。

そして、この制度を理解すると「転職するか、無期転換を待つか」の判断ができるようになります。

この記事では、制度のしくみ、申し込みの手順と文面、無期雇用と正社員の違い、そして転職と比べたときの判断基準を整理します。

1. 結論:確認することは3つ

1. 通算の契約期間を数える。今の会社で有期契約を何年続けているかを、契約書で確認します。

2. 空白期間があるかを確認する。契約と契約の間に一定以上の空白があると、通算がリセットされます。

3. 無期転換後の労働条件を先に聞く。これを聞かずに申し込むと、期待した変化が起きない場合があります。

3番目が最も見落とされます。

無期転換は、雇用期間の定めがなくなるだけの制度です。給与、賞与、職務内容、勤務地は、原則としてそのまま引き継がれます。

変わるもの変わらないもの
契約期間の定め給与
更新の有無賞与
雇止めの不安職務内容
退職金の有無

「無期になれば正社員と同じ」と思って申し込むと、期待外れになります。

2. 制度のしくみ

労働契約法18条により、同一の会社との有期労働契約が通算5年を超えたとき、労働者は無期労働契約への転換を申し込む権利を得ます。

要点は3つです。

1. 通算5年を「超えた」時点で権利が発生する。ちょうど5年ではありません。5年を超える契約に入った時点です。

2. 申し込みは労働者から行う。会社が自動的に転換するものではありません。

3. 会社は拒否できない。申し込みがあった時点で、無期契約が成立します。

3番目が、この制度の強い部分です。

申し込みは会社の承諾を必要としません。労働者が申し込んだ時点で、次の契約から無期に切り替わります。会社に断る権利はありません。

具体的な時期の数え方

1年契約を更新している場合で見ます。

契約期間通算
1回目1年目1年
2回目2年目2年
3回目3年目3年
4回目4年目4年
5回目5年目5年
6回目6年目5年超 → 権利発生

6回目の契約が始まった日から、その契約期間中に申し込めます。

3年契約の場合は、2回目の契約(通算6年)の初日から権利が発生します。

3. 空白期間に注意する

契約と契約の間に一定以上の空白があると、それ以前の期間がリセットされます。これをクーリングと呼びます。

直前の契約期間リセットされる空白
2ヶ月以下1ヶ月以上
2ヶ月超4ヶ月以下2ヶ月以上
4ヶ月超6ヶ月以下3ヶ月以上
6ヶ月超8ヶ月以下4ヶ月以上
8ヶ月超10ヶ月以下5ヶ月以上
10ヶ月超6ヶ月以上

1年契約を続けている場合、6ヶ月以上の空白があるとリセットです。

ここで問題になるのが、意図的に空白を作られるケースです。

4年11ヶ月で契約を終了し、半年後にまた契約する。この形にすると、通算がリセットされて5年に到達しません。

この運用自体を直接禁じる規定はありませんが、実質的に無期転換を避ける目的が明らかな場合は、争いになる余地があります。

4年目に入ったら、次の更新の話が出た時点で契約書の期間を確認してください。更新のたびに期間が短くなっている場合は、注意する材料になります。

4. 申し込みの手順

申し込みに決まった様式はありません。口頭でも成立します。

ただし、必ず書面かメールで行ってください。「言った・聞いていない」の争いを避けるためです。

そのまま使える文面です。

○○株式会社 人事部 ○○様

お世話になっております。○○部の○○です。

労働契約法第18条に基づき、無期労働契約への転換を申し込みます。

現在の有期労働契約は○年○月○日から○年○月○日までで、貴社との通算契約期間は5年を超えております。

つきましては、現在の契約期間の満了日の翌日である○年○月○日より、期間の定めのない労働契約への転換をお願いいたします。

ご確認のほど、よろしくお願いいたします。

入れるのは4つです。法律の根拠、現在の契約期間、通算が5年を超えている事実、転換の開始日。

送った記録を必ず残してください。メールなら送信済みフォルダ、書面なら控えとコピーです。

申し込みのタイミング

権利が発生している契約期間中であれば、いつでも構いません。

ただし、契約更新の話が出る前に申し込むほうが安全です。更新しない方針が固まった後に申し込むと、話がこじれやすくなります。

タイミング進めやすさ
契約開始の直後最も安全
契約期間の途中問題なし
更新面談の場話が複雑になりやすい
契約満了の直前手続きが慌ただしい

5. 無期雇用と正社員の違い

ここが最も誤解されている部分です。

項目有期契約無期転換後正社員
契約期間ありなしなし
雇止めありなしなし
解雇のハードル契約満了で終了高い高い
給与契約による原則そのまま正社員規程
賞与契約による原則そのまま正社員規程
退職金多くはなし原則そのままあることが多い
昇進対象外が多い原則そのまま対象

無期転換で得られるのは、主に「雇止めの不安がなくなること」です。

これは小さくない価値です。契約更新のたびに次があるか分からない状態は、生活の設計を難しくします。その不安が消えるだけでも、意味があります。

しかし、給与が上がるわけではありません。

会社によっては、無期転換とあわせて「限定正社員」や「地域限定社員」といった区分に移す制度を持っています。この場合は処遇も変わりますが、これは会社独自の制度であり、法律上の無期転換とは別物です。

転換後の条件を先に聞く言い方

無期転換について確認させてください。転換後の労働条件は、現在の契約と同一という理解でよろしいでしょうか。また、無期転換とあわせた社員区分の変更などの制度がございましたら、お教えいただけますと幸いです。

この質問をしてから申し込むかどうかを決めてください。

6. 転職と比べたときの判断

「無期転換を待つか、転職するか」で迷う人は多い。

判断の材料を整理します。

無期転換を選ぶほうがいい場合転職を選ぶほうがいい場合
仕事の内容に不満がない職務の幅が広がらない
給与が同年代と大きく離れていない給与が頭打ちで上がる仕組みがない
正社員登用の実績がある登用の実績が数年ゼロ
通勤や勤務時間の条件が良い条件面の魅力が薄い
5年目が近い3年目以前

最後の行が現実的な分かれ目です。

3年目以前なら、転職を先に検討する価値があります。第二新卒の年齢帯で動けるうちに、正社員としての職歴を作るほうが、長い目で見て選択肢が広がります。

5年目が目前なら、権利を得てから考えるのも合理的です。無期転換の権利を得た状態で転職活動をするのは、何のリスクもありません。転職先が決まれば辞めればいいだけです。

無期になってから辞めても構わない

無期転換したら辞められない、ということはありません。

無期雇用は期間の定めがない契約なので、民法上、原則として2週間前の申し出で退職できます(就業規則で1ヶ月前などと定めている会社が多く、実務ではそちらに合わせます)。

むしろ、有期契約のほうが期間途中の退職は制約が大きいのが実態です。無期になることで、辞める自由はむしろ広がります。

7. 面接での説明のしかた

契約社員から正社員への転職では、この点を必ず聞かれます。

質問:「無期転換の権利があるのに、なぜ転職するのですか」

答えてはいけないのは、現職の批判です。

「無期になっても給与が変わらないと言われたので」

これは事実であっても、条件の不満だけが理由に見えます。

職務の方向で答えてください。

「無期転換の案内はいただいており、雇用の安定という点ではありがたい制度だと考えています。ただ、転換後も職務の範囲は現在と同じという説明を受けました。私は今後、○○の領域に業務を広げていきたいと考えており、その環境がある会社で働きたいと思い、転職を決めました」

制度を評価した上で、職務の理由を置くのが要点です。

「もらえるものは断らない」という姿勢ではなく、「安定より成長を選んだ」という構造にすると、前向きに受け取られます。

8. 権利を失わないための注意点

1. 契約書を毎回保管する。通算期間の証明は契約書です。更新のたびにファイルに残してください。

2. 更新の期間が短くなったら記録する。1年契約が半年契約になった、といった変化は、意図の推測材料になります。

3. 「更新しない」と言われた時期を記録する。5年に到達する直前の雇止めは、争いになる場合があります。

4. 申し込みは必ず記録の残る形で行う。

保管するもの理由
全ての契約書通算期間の証明
更新の案内文更新の意思の証明
申し込みのメール申込日の証明
就業規則の写し条件の確認

雇止めや無期転換をめぐって会社と話がまとまらない場合は、労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。無料で、匿名でも相談できます。

法的な判断が必要な場面では、弁護士や労働組合に相談してください。この記事は制度の説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。

9. よくある質問

Q. 5年ちょうどでは申し込めませんか

「5年を超える」ことが条件です。

1年契約を5回更新した時点では通算5年で、まだ権利は発生しません。6回目の契約が始まった時点で、通算が5年を超えるため権利が発生します。

Q. 派遣社員も対象ですか

対象です。ただし、通算するのは派遣元との契約です。

派遣先が変わっても、派遣元が同じであれば通算されます。派遣元が変わるとリセットされる点に注意してください。

Q. パートやアルバイトも対象ですか

対象です。雇用形態の名称は関係なく、期間の定めがある契約であれば全て対象です。

週2日の勤務でも、通算5年を超えれば権利が発生します。

Q. 申し込んだら断られました

会社に断る権利はありません。

労働契約法18条は、申し込みがあった時点で会社が承諾したものとみなす、という構造になっています。断られた場合は、労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。

Q. 無期転換を申し込むと、辞めさせられませんか

申し込みを理由とした不利益な取り扱いは認められません。

ただし、実際に嫌な空気になることはあります。だからこそ、記録を残しておくことが重要です。

Q. 転職先で契約社員になったら、通算は引き継げますか

引き継げません。通算は同一の会社との契約のみです。

転職すると、新しい会社でゼロから数え直しになります。この点は、転職と無期転換を比べるときの材料になります。

Q. 無期転換後に、勤務地や職務が変わることはありますか

あり得ます。期間の定めがなくなる一方で、正社員と同様の配置転換の対象になる場合があります。

転換前に、勤務地や職務の範囲がどうなるかを必ず確認してください。「限定なし」に変わる制度設計の会社があります。

Q. 会社から「無期転換の予定はない」と言われました

会社の意向は関係ありません。労働者の申し込みで成立する制度です。

ただし、通算5年を超えていることが前提です。まず自分の契約書で通算期間を確認してください。

10. まとめ:今週やる3つのこと

1. 手元の契約書を全部集めて、通算期間を数える。空白期間の有無もあわせて確認してください。

2. 5年に到達する時期を、カレンダーに書く。その3ヶ月前を、判断の期限にします。

3. 転換後の労働条件を人事に聞く。給与、賞与、職務範囲、勤務地。この4つです。

権利を得てから転職を考えるのは、何のリスクもありません。3年目以前なら転職を先に、5年目が近いなら権利を先に。この順で考えてください。

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この記事を書いた人

木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。

23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。