無期転換ルールとは|5年で申し込む権利と、転職を選ぶ場合の判断【2026年版】
契約社員として働いていて、4年目に入ったあたりでこの話を聞くことがあります。
「5年を超えると、無期に転換できるらしい」
これは事実です。ただし、内容を正確に理解している人はかなり少ない。
誤解が多いのは、次の3点です。
1. 自動的に無期になるわけではない(自分から申し込む必要がある) 2. 無期になっても正社員になるわけではない(雇用期間が消えるだけ) 3. 5年を待たずに雇止めされることがある
この3つを知らないまま5年目を迎えると、権利があったのに使えなかった、あるいは無期になったのに条件が何も変わらなかった、という結果になります。
そして、この制度を理解すると「転職するか、無期転換を待つか」の判断ができるようになります。
この記事では、制度のしくみ、申し込みの手順と文面、無期雇用と正社員の違い、そして転職と比べたときの判断基準を整理します。
1. 結論:確認することは3つ
1. 通算の契約期間を数える。今の会社で有期契約を何年続けているかを、契約書で確認します。
2. 空白期間があるかを確認する。契約と契約の間に一定以上の空白があると、通算がリセットされます。
3. 無期転換後の労働条件を先に聞く。これを聞かずに申し込むと、期待した変化が起きない場合があります。
3番目が最も見落とされます。
無期転換は、雇用期間の定めがなくなるだけの制度です。給与、賞与、職務内容、勤務地は、原則としてそのまま引き継がれます。
| 変わるもの | 変わらないもの |
|---|---|
| 契約期間の定め | 給与 |
| 更新の有無 | 賞与 |
| 雇止めの不安 | 職務内容 |
| ー | 退職金の有無 |
「無期になれば正社員と同じ」と思って申し込むと、期待外れになります。
2. 制度のしくみ
労働契約法18条により、同一の会社との有期労働契約が通算5年を超えたとき、労働者は無期労働契約への転換を申し込む権利を得ます。
要点は3つです。
1. 通算5年を「超えた」時点で権利が発生する。ちょうど5年ではありません。5年を超える契約に入った時点です。
2. 申し込みは労働者から行う。会社が自動的に転換するものではありません。
3. 会社は拒否できない。申し込みがあった時点で、無期契約が成立します。
3番目が、この制度の強い部分です。
申し込みは会社の承諾を必要としません。労働者が申し込んだ時点で、次の契約から無期に切り替わります。会社に断る権利はありません。
具体的な時期の数え方
1年契約を更新している場合で見ます。
| 契約 | 期間 | 通算 |
|---|---|---|
| 1回目 | 1年目 | 1年 |
| 2回目 | 2年目 | 2年 |
| 3回目 | 3年目 | 3年 |
| 4回目 | 4年目 | 4年 |
| 5回目 | 5年目 | 5年 |
| 6回目 | 6年目 | 5年超 → 権利発生 |
6回目の契約が始まった日から、その契約期間中に申し込めます。
3年契約の場合は、2回目の契約(通算6年)の初日から権利が発生します。
3. 空白期間に注意する
契約と契約の間に一定以上の空白があると、それ以前の期間がリセットされます。これをクーリングと呼びます。
| 直前の契約期間 | リセットされる空白 |
|---|---|
| 2ヶ月以下 | 1ヶ月以上 |
| 2ヶ月超4ヶ月以下 | 2ヶ月以上 |
| 4ヶ月超6ヶ月以下 | 3ヶ月以上 |
| 6ヶ月超8ヶ月以下 | 4ヶ月以上 |
| 8ヶ月超10ヶ月以下 | 5ヶ月以上 |
| 10ヶ月超 | 6ヶ月以上 |
1年契約を続けている場合、6ヶ月以上の空白があるとリセットです。
ここで問題になるのが、意図的に空白を作られるケースです。
4年11ヶ月で契約を終了し、半年後にまた契約する。この形にすると、通算がリセットされて5年に到達しません。
この運用自体を直接禁じる規定はありませんが、実質的に無期転換を避ける目的が明らかな場合は、争いになる余地があります。
4年目に入ったら、次の更新の話が出た時点で契約書の期間を確認してください。更新のたびに期間が短くなっている場合は、注意する材料になります。
4. 申し込みの手順
申し込みに決まった様式はありません。口頭でも成立します。
ただし、必ず書面かメールで行ってください。「言った・聞いていない」の争いを避けるためです。
そのまま使える文面です。
○○株式会社 人事部 ○○様
お世話になっております。○○部の○○です。
労働契約法第18条に基づき、無期労働契約への転換を申し込みます。
現在の有期労働契約は○年○月○日から○年○月○日までで、貴社との通算契約期間は5年を超えております。
つきましては、現在の契約期間の満了日の翌日である○年○月○日より、期間の定めのない労働契約への転換をお願いいたします。
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
入れるのは4つです。法律の根拠、現在の契約期間、通算が5年を超えている事実、転換の開始日。
送った記録を必ず残してください。メールなら送信済みフォルダ、書面なら控えとコピーです。
申し込みのタイミング
権利が発生している契約期間中であれば、いつでも構いません。
ただし、契約更新の話が出る前に申し込むほうが安全です。更新しない方針が固まった後に申し込むと、話がこじれやすくなります。
| タイミング | 進めやすさ |
|---|---|
| 契約開始の直後 | 最も安全 |
| 契約期間の途中 | 問題なし |
| 更新面談の場 | 話が複雑になりやすい |
| 契約満了の直前 | 手続きが慌ただしい |
5. 無期雇用と正社員の違い
ここが最も誤解されている部分です。
| 項目 | 有期契約 | 無期転換後 | 正社員 |
|---|---|---|---|
| 契約期間 | あり | なし | なし |
| 雇止め | あり | なし | なし |
| 解雇のハードル | 契約満了で終了 | 高い | 高い |
| 給与 | 契約による | 原則そのまま | 正社員規程 |
| 賞与 | 契約による | 原則そのまま | 正社員規程 |
| 退職金 | 多くはなし | 原則そのまま | あることが多い |
| 昇進 | 対象外が多い | 原則そのまま | 対象 |
無期転換で得られるのは、主に「雇止めの不安がなくなること」です。
これは小さくない価値です。契約更新のたびに次があるか分からない状態は、生活の設計を難しくします。その不安が消えるだけでも、意味があります。
しかし、給与が上がるわけではありません。
会社によっては、無期転換とあわせて「限定正社員」や「地域限定社員」といった区分に移す制度を持っています。この場合は処遇も変わりますが、これは会社独自の制度であり、法律上の無期転換とは別物です。
転換後の条件を先に聞く言い方
無期転換について確認させてください。転換後の労働条件は、現在の契約と同一という理解でよろしいでしょうか。また、無期転換とあわせた社員区分の変更などの制度がございましたら、お教えいただけますと幸いです。
この質問をしてから申し込むかどうかを決めてください。
6. 転職と比べたときの判断
「無期転換を待つか、転職するか」で迷う人は多い。
判断の材料を整理します。
| 無期転換を選ぶほうがいい場合 | 転職を選ぶほうがいい場合 |
|---|---|
| 仕事の内容に不満がない | 職務の幅が広がらない |
| 給与が同年代と大きく離れていない | 給与が頭打ちで上がる仕組みがない |
| 正社員登用の実績がある | 登用の実績が数年ゼロ |
| 通勤や勤務時間の条件が良い | 条件面の魅力が薄い |
| 5年目が近い | 3年目以前 |
最後の行が現実的な分かれ目です。
3年目以前なら、転職を先に検討する価値があります。第二新卒の年齢帯で動けるうちに、正社員としての職歴を作るほうが、長い目で見て選択肢が広がります。
5年目が目前なら、権利を得てから考えるのも合理的です。無期転換の権利を得た状態で転職活動をするのは、何のリスクもありません。転職先が決まれば辞めればいいだけです。
無期になってから辞めても構わない
無期転換したら辞められない、ということはありません。
無期雇用は期間の定めがない契約なので、民法上、原則として2週間前の申し出で退職できます(就業規則で1ヶ月前などと定めている会社が多く、実務ではそちらに合わせます)。
むしろ、有期契約のほうが期間途中の退職は制約が大きいのが実態です。無期になることで、辞める自由はむしろ広がります。
7. 面接での説明のしかた
契約社員から正社員への転職では、この点を必ず聞かれます。
質問:「無期転換の権利があるのに、なぜ転職するのですか」
答えてはいけないのは、現職の批判です。
「無期になっても給与が変わらないと言われたので」
これは事実であっても、条件の不満だけが理由に見えます。
職務の方向で答えてください。
「無期転換の案内はいただいており、雇用の安定という点ではありがたい制度だと考えています。ただ、転換後も職務の範囲は現在と同じという説明を受けました。私は今後、○○の領域に業務を広げていきたいと考えており、その環境がある会社で働きたいと思い、転職を決めました」
制度を評価した上で、職務の理由を置くのが要点です。
「もらえるものは断らない」という姿勢ではなく、「安定より成長を選んだ」という構造にすると、前向きに受け取られます。
8. 権利を失わないための注意点
1. 契約書を毎回保管する。通算期間の証明は契約書です。更新のたびにファイルに残してください。
2. 更新の期間が短くなったら記録する。1年契約が半年契約になった、といった変化は、意図の推測材料になります。
3. 「更新しない」と言われた時期を記録する。5年に到達する直前の雇止めは、争いになる場合があります。
4. 申し込みは必ず記録の残る形で行う。
| 保管するもの | 理由 |
|---|---|
| 全ての契約書 | 通算期間の証明 |
| 更新の案内文 | 更新の意思の証明 |
| 申し込みのメール | 申込日の証明 |
| 就業規則の写し | 条件の確認 |
雇止めや無期転換をめぐって会社と話がまとまらない場合は、労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。無料で、匿名でも相談できます。
法的な判断が必要な場面では、弁護士や労働組合に相談してください。この記事は制度の説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。
9. よくある質問
Q. 5年ちょうどでは申し込めませんか
「5年を超える」ことが条件です。
1年契約を5回更新した時点では通算5年で、まだ権利は発生しません。6回目の契約が始まった時点で、通算が5年を超えるため権利が発生します。
Q. 派遣社員も対象ですか
対象です。ただし、通算するのは派遣元との契約です。
派遣先が変わっても、派遣元が同じであれば通算されます。派遣元が変わるとリセットされる点に注意してください。
Q. パートやアルバイトも対象ですか
対象です。雇用形態の名称は関係なく、期間の定めがある契約であれば全て対象です。
週2日の勤務でも、通算5年を超えれば権利が発生します。
Q. 申し込んだら断られました
会社に断る権利はありません。
労働契約法18条は、申し込みがあった時点で会社が承諾したものとみなす、という構造になっています。断られた場合は、労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。
Q. 無期転換を申し込むと、辞めさせられませんか
申し込みを理由とした不利益な取り扱いは認められません。
ただし、実際に嫌な空気になることはあります。だからこそ、記録を残しておくことが重要です。
Q. 転職先で契約社員になったら、通算は引き継げますか
引き継げません。通算は同一の会社との契約のみです。
転職すると、新しい会社でゼロから数え直しになります。この点は、転職と無期転換を比べるときの材料になります。
Q. 無期転換後に、勤務地や職務が変わることはありますか
あり得ます。期間の定めがなくなる一方で、正社員と同様の配置転換の対象になる場合があります。
転換前に、勤務地や職務の範囲がどうなるかを必ず確認してください。「限定なし」に変わる制度設計の会社があります。
Q. 会社から「無期転換の予定はない」と言われました
会社の意向は関係ありません。労働者の申し込みで成立する制度です。
ただし、通算5年を超えていることが前提です。まず自分の契約書で通算期間を確認してください。
10. まとめ:今週やる3つのこと
1. 手元の契約書を全部集めて、通算期間を数える。空白期間の有無もあわせて確認してください。
2. 5年に到達する時期を、カレンダーに書く。その3ヶ月前を、判断の期限にします。
3. 転換後の労働条件を人事に聞く。給与、賞与、職務範囲、勤務地。この4つです。
権利を得てから転職を考えるのは、何のリスクもありません。3年目以前なら転職を先に、5年目が近いなら権利を先に。この順で考えてください。
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この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。