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業務委託と正社員はどちらを選ぶか|20代が比べるときの5つの軸【2026年版】

木戸 悠介 なぜキャリア? 編集長 公開 2026年9月6日 読了 約15分
業務委託と正社員はどちらを選ぶか|20代が比べるときの5つの軸【2026年版】

転職活動をしていると、こういう提案を受けることがあります。

「まずは業務委託で入っていただいて、様子を見て社員化という形はいかがでしょうか」

あるいは、自分から業務委託を選ぼうか迷う場面もあります。

月の報酬額だけを比べると、業務委託のほうが高く見えることが多い。正社員の月給30万円と、業務委託の月額40万円。この2つを並べると、後者が良く見えます。

しかし、この比較は成立していません。

社会保険料の負担、賞与、有給休暇、税の申告の手間。これらを揃えて計算しないと、比べたことになりません。

そして、20代でこの選択をする場合、収入以外に考えるべきことがあります。

この記事では、収入の正しい比べ方、5つの判断軸、20代特有の考え方、そして戻れるのかという点を整理します。

なお、税や社会保険の具体的な取り扱いは個別の事情で変わります。実際の判断の前に、税理士や年金事務所などの専門機関に確認してください。

1. 結論:比べる軸は5つ

1. 手取りベースの年収(額面ではなく) 2. 安定性(契約が続く見込み) 3. 経歴としての評価(次の転職での扱い) 4. 身につく力(どんな経験が積めるか) 5. 時間の使い方(裁量と拘束)

20代では、3番目と4番目の比重を高くしてください。

理由は単純で、この年齢帯で積んだ経験が、その後10年の選択肢を決めるからです。

20代での比重
手取り年収
安定性
経歴としての評価
身につく力最も高い
時間の使い方

目先の月額で決めると、数年後に選択肢が狭まることがあります。

2. 収入の正しい比べ方

額面同士を比べても意味がありません。

正社員の場合、次のものが会社側から出ています。

項目内容
社会保険料の会社負担保険料の約半分を会社が負担
賞与支給がある場合、年収に加算
有給休暇休んでも収入が減らない
交通費支給される場合が多い
退職金制度がある場合

業務委託では、これらが全部なくなります。

社会保険料は全額自己負担になり、賞与も有給もありません。働かなかった日は、そのまま収入が減ります。

さらに、経費と税の申告の手間が加わります。

比べるための計算

正社員の額面年収を1とすると、同等の手取りを得るために業務委託で必要な額は、一般に1.2〜1.4倍程度と言われます。

ただし、これは目安であり、個々の状況で大きく変わります。加入する保険の種類、扶養の有無、経費として認められる範囲、住んでいる自治体。これらで結果が変わります。

だから、次の順で確認してください。

順番やること
1正社員側の年収を、賞与込みで出す
2業務委託側の年額を出す(12ヶ月分ではなく、実際に稼働できる月数で)
3社会保険料と税の概算を調べる
4手取りベースで比べる

2番目に注意してください。

業務委託では、契約が途切れる期間が発生し得ます。12ヶ月フルで稼働できる前提の計算は、楽観的すぎます。

3. 安定性の違い

契約の切れ方が根本的に違います。

項目正社員業務委託
契約の終了解雇には厳しい制限契約期間の満了で終了
予告法律上の予告義務契約書の定めによる
失業給付対象原則対象外
傷病時傷病手当金の制度がある場合原則なし

3行目と4行目が、実務的に大きい。

業務委託では、働けなくなったときの受け皿が薄い。体調を崩して1ヶ月働けなければ、その分の収入がなくなります。

この点は、若いうちほど軽く見られがちですが、実際にはリスクとして残ります。

契約書で必ず確認すること

業務委託を選ぶ場合、契約書の次の項目を確認してください。

項目確認すること
契約期間何ヶ月か、更新の条件
解除の条件何日前の通知が必要か
報酬の支払い支払日、締め日
業務の範囲どこまでが契約に含まれるか
知的財産の扱い成果物の権利がどちらにあるか

2行目が最も重要です。

「即時解除可能」と書かれている契約は、翌月から収入がゼロになり得ます。

契約書に不明な点があれば、署名の前に確認してください。内容によっては専門家への相談も検討してください。

4. 経歴としての評価

次の転職で、業務委託の経験はどう扱われるか。

結論から書くと、扱いは分かれます。

見られ方どんな場合か
実務経験として評価される職務内容が明確で、成果が説明できる
評価が難しい業務範囲が曖昧、期間が短い
懸念材料になる職歴が細切れになっている

3行目が、20代で最も注意すべき点です。

複数の業務委託を短期間で繰り返した経歴は、書類の段階で説明が必要になります。

そして、企業によっては「正社員としての勤務経験」を条件にしている場合があります。

20代で正社員の経験が浅いまま業務委託を続けると、正社員に戻るときの選択肢が狭まることがあります。

評価される形で書くには

業務委託の経歴を書く場合、次の3点を明記してください。

  1. 契約先と、担当した業務の範囲
  2. 期間
  3. 成果(数字で)

3番目が最も重要です。

業務委託では、何をしたかが外から見えにくい。だから、数字で書くことがより重要になります。

5. 20代で業務委託を選ぶ場合

選ぶこと自体は否定されるものではありません。ただし、条件があります。

次の3つが揃っているなら、選択肢として成立します。

条件理由
既に売れる技能がある単価が下がらない
契約が複数ある、または見込みがある1件切れても止まらない
数年後の姿が描けている経歴の説明ができる

1行目が最も重要です。

技能がない状態で業務委託に入ると、単価の低い作業を続けることになります。そして、その作業では次につながる経験が積みにくい。

逆に、次の場合は慎重に考えてください。

  • 正社員の職歴が1年未満
  • 提示された業務委託の内容が、正社員の仕事とほぼ同じ
  • 「社員化を前提に」と言われているが、条件が書面にない

3行目に補足します。

「様子を見て社員化」という提案は、書面で条件が示されていなければ、実現しない可能性があります。

受ける場合は、社員化の条件(時期、評価の基準)を書面で確認してください。

6. 実態は雇用なのに業務委託、という場合

注意が必要なのが、この形です。

契約は業務委託だが、実態は社員と同じ働き方をしている場合があります。

実態が雇用に近い兆候
勤務時間と場所が指定されている
業務の進め方を細かく指示される
他の仕事を受けることが制限されている
会社の設備を使い、会社の指揮下で働いている

これらに当てはまる場合、契約の形式にかかわらず労働者と判断される可能性があります。

この判断は、契約書の名称ではなく実態で行われます。

心当たりがある場合は、労働局の総合労働相談コーナーで相談できます。無料で相談できる窓口です。

ただし、判断は個別の事情によります。この記事は一般的な整理であり、個別の判断は専門機関に確認してください。

7. 戻れるのか

戻れます。ただし、条件があります。

戻りやすい場合

  • 業務委託の期間が1〜2年程度
  • 職務内容が明確で、成果を数字で説明できる
  • 業界・職種が一貫している

戻りにくくなる場合

  • 期間が長く、正社員としての勤務経験が少ない
  • 短期の契約を細かく繰り返している
  • 職務内容がばらばら

20代であれば、多くの場合は戻れます。

ただし、期間が長くなるほど、正社員としての勤務経験を求める企業の選考で不利になる場面が出てきます。

戻る場合の面接での説明

「業務委託として○○の領域を2年間担当してきました。裁量の大きさは経験になりましたが、事業全体の数字に責任を持つ立場で、より長い期間で成果を積み上げたいと考えるようになりました」

「安定が欲しくなった」だけで終わらせないでください。職務の方向で理由を作ってください。

8. 判断の手順

順番やること
1両方の年収を、手取りベースで計算する
2業務委託側の稼働可能月数を現実的に見積もる
33年後にどんな経験が積めているかを比べる
4契約書の解除条件を確認する
5迷ったら、20代は経験の質で選ぶ

5行目が結論です。

20代の数年は、収入の差より経験の差のほうが後の年収に効きます。

月額で5万円高い業務委託と、レビューを受けながら育つ正社員。3年後の市場価値では、後者が上回ることが多い。

ただし、既に売れる技能がある人は、この限りではありません。自分がどちらの状態かを、正直に判断してください。

9. よくある質問

Q. 業務委託のほうが自由に働けますか

契約の内容によります。

裁量が大きい契約もあれば、勤務時間と場所が指定される契約もあります。「業務委託だから自由」ではありません。契約書で確認してください。

Q. 社会保険はどうなりますか

業務委託では、原則として自分で加入します。

国民健康保険と国民年金が基本となり、保険料は全額自己負担です。正社員では会社が約半分を負担しているため、この差は大きい。

具体的な金額は自治体と所得で変わるため、年金事務所や自治体の窓口で確認してください。

Q. 確定申告は必要ですか

原則として必要です。

正社員の年末調整とは違い、自分で申告します。手間と、場合によっては税理士への費用がかかることを見込んでおいてください。

具体的な手続きは、税務署または税理士に確認してください。

Q. 「社員化前提」の業務委託はどう判断しますか

条件が書面にあるかで判断してください。

時期と評価の基準が書面で示されていない場合、実現しない可能性があります。受ける場合は、確認した内容をメールなどの記録に残してください。

Q. 業務委託の経験は職務経歴書に書けますか

書けます。正式な職歴として記載します。

契約先、期間、業務内容、成果を明記してください。期間が細切れになる場合は、まとめ方を工夫する必要があります。

Q. 副業で業務委託を受けるのはどうですか

現職の就業規則を確認してください。

許可制や届出制の会社が多く、無断で行うと問題になる場合があります。認められている場合、経験を積む方法としては現実的です。

Q. 業務委託から正社員に戻るとき、年収は下がりますか

下がる場合があります。

業務委託の報酬額と、正社員の年収は基準が違うためです。ただし、社会保険料の会社負担や賞与を含めた総額で比べる必要があります。

Q. どちらか迷って決められません

3年後にどんな経験が積めているかで比べてください。

収入の差は後から埋められますが、経験の差は時間でしか埋まりません。20代であれば、この基準で判断するのが現実的です。

10. まとめ:今週やる3つのこと

1. 両方の収入を、手取りベースで計算し直す。額面同士の比較は成立しません。

2. 業務委託側の稼働可能月数を、現実的に見積もる。12ヶ月フルの前提は楽観的です。

3. 3年後にどんな経験が積めているかを、それぞれ書き出す。20代ではこれが最も重要な判断材料です。

この記事は一般的な整理です。税や社会保険、契約内容の個別の判断は、税理士・年金事務所・労働局などの専門機関に確認してください。

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この記事を書いた人

木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。

23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。