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取引先に転職していいのか|第二新卒が確認する4点と伝える順番【2026年版】

木戸 悠介 なぜキャリア? 編集長 公開 2026年9月6日 読了 約15分
取引先に転職していいのか|第二新卒が確認する4点と伝える順番【2026年版】

営業や制作の仕事をしていると、こう思う瞬間があります。

「担当している取引先のほうが、うちより働きやすそうだ」

実際、取引先への転職はよくある動き方です。そして、うまくいく確率が比較的高い転職でもあります。

理由は明確です。お互いに相手を知っているからです。会社の中身、仕事の進め方、人の雰囲気。書類と面接だけでは絶対に分からない部分を、既に見た上で判断できます。

ただし、これは最も揉めやすい転職でもあります。

前職から見れば、取引関係を使って人を持っていかれた形に見えます。取引先から見れば、取引先との関係を悪くしたくないという事情があります。

この転職の成否は、契約の確認と、伝える順番でほぼ決まります。

この記事では、応募前に確認する4点、応募ルートの選び方、前職への伝え方の順番、そして入社後に起きやすい摩擦への備えを整理します。

1. 結論:応募前に確認する4点

1. 自分の雇用契約に競業避止の条項があるか。就業規則と、入社時にサインした誓約書を確認します。

2. 前職と取引先の間の契約に、引き抜き禁止の条項があるか。これは自分では見られないため、取引先側に確認してもらいます。

3. 取引先の中で、誰が採用の判断をするか。担当者と人事は別です。

4. 取引が現在も続いているか。継続中か、終了しているかで難易度が大きく変わります。

2番目が最も見落とされます。

企業間の業務委託契約や取引基本契約には、相手方の従業員を採用しない旨の条項が入っていることがあります。個人の契約とは別に、会社同士の約束として存在します。

契約の種類誰が確認するか
自分の雇用契約・誓約書自分
就業規則の競業避止条項自分
会社間の取引契約取引先の担当者・法務

この確認を飛ばして話を進めると、選考の最終段階で止まります。

2. なぜ揉めやすいのか

3者の利害が食い違うからです。

立場考えていること
自分良い環境で働きたい
前職顧客と人材を同時に失う
取引先良い人が欲しいが取引は壊したくない

最も動きにくいのが取引先です。

採用したい気持ちがあっても、取引先との関係を悪化させてまで採ることは、多くの会社ではしません。特に、その取引が売上に占める割合が大きい場合ほど慎重になります。

だから、取引先が動きやすい状況を作ることが、この転職の実務です。

具体的には、次の3つです。

  1. 取引先から誘われた形にしない(自分から応募した記録を残す)
  2. 公募の求人に応募する(正規のルートを通す)
  3. 前職への伝達を自分で行う(取引先に矢面に立たせない)

3番目が特に重要です。

「引き抜き」に見えない形を作る

引き抜きと転職の違いは、どちらから声をかけたかです。

取引先の担当者から「うちに来ないか」と言われて動いた場合、形式上は引き抜きになります。この形は、会社間の契約に抵触する可能性が最も高い。

誘われた場合であっても、正規の求人に自分から応募する形に整えてください。

「大変ありがたいお話です。ただ、御社と現職の取引関係を考えますと、公募の求人があればそちらに私から応募する形を取らせていただきたいのですが、いかがでしょうか」

この一言を言えるかどうかで、後の展開が変わります。

3. 応募ルートの選び方

ルート手続きの明確さ注意点
公募の求人サイト高い最も安全
取引先の採用ページ高い安全
転職エージェント経由高い手数料が発生する
担当者からの紹介低い引き抜きに見える
リファラル制度制度として明文化されていれば可

公募が最も安全です。

応募の記録が残り、選考の過程も通常の採用と同じになります。何かを問われたときに、「求人に自分で応募した」という事実で説明できます。

エージェント経由は、手数料の面で取引先が嫌がる場合があります。

年収の30%前後が発生するため、直接応募できる関係がある人をエージェント経由で採ると、コストだけがかかります。直接応募できるなら、そちらを選んでください。

公募の求人がない場合

時期を待つのが基本です。

どうしても今動きたい場合は、取引先の人事部宛に直接応募する形が取れます。ただし、担当者を経由せず、人事に直接連絡してください。

貴社の求人情報を拝見しておりますが、現在○○職の募集がないようでしたので、直接ご連絡いたしました。私は現在○○株式会社に在籍しており、貴社を担当しております。業務を通じて貴社の○○に関心を持ち、応募を検討しております。ご検討いただける可能性がございましたら、お時間をいただけますと幸いです。

担当者を経由すると、その担当者が板挟みになります。

4. 前職への伝え方と順番

順番を間違えると、確実に揉めます。

正しい順番はこれです。

  1. 内定を得る
  2. 直属の上長に退職の意思を伝える(転職先は言わない)
  3. 引き継ぎの計画を提示する
  4. 転職先を聞かれたら答える
  5. 取引先の担当変更を正式に進める

2番目で転職先を言わないのが要点です。

退職の意思と転職先の情報は、別の話です。最初に両方を出すと、退職の話ではなく「取引先に行くこと」の話になり、引き止めではなく詰問の場になります。

まず退職を確定させ、それから転職先を伝えてください。

伝え方起きること
退職と転職先を同時に伝える転職先の話に終始する
退職を先に伝え、後で転職先退職の話が先に進む
転職先を最後まで伏せる後で発覚してこじれる

3番目も避けてください。取引先である以上、必ず分かります。隠したことのほうが問題になります。

転職先を伝えるときの言い方

「転職先は○○様です。業務を通じて志望するようになり、公募されていた求人に私から応募いたしました。取引に影響が出ないよう、引き継ぎは通常より厚めに時間を取りたいと考えております」

入れるのは3つです。自分から応募した事実、公募のルートを通ったこと、引き継ぎへの配慮。

言い訳や謝罪は入れないでください。正規のルートで応募した以上、悪いことはしていません。事実だけを述べてください。

5. 引き継ぎで特に注意すること

この転職では、引き継ぎの質が後の評判を決めます。

同じ取引先の中で働くため、引き継ぎが雑だと、その評価がそのまま転職先に届きます。

通常の引き継ぎこの場合の引き継ぎ
後任に情報を渡す後任が困らない状態まで作る
資料をまとめる未解決の案件を先に片づける
挨拶をする後任を先方に紹介する場を作る

特に、後任と取引先の顔合わせを自分が設定してください。

自分が抜けた後、後任が一から関係を作るのは大変です。その場を作っておくことが、前職への最大の配慮になります。

そして、この配慮は転職先からも見られています。

持ち出してはいけないもの

顧客リスト、価格表、提案資料、社内の技術情報は、一切持ち出さないでください。

これは競業避止以前の問題で、営業秘密の侵害にあたる可能性があります。

持ち出し不可問題ないもの
顧客リスト・名簿自分の頭の中にある経験
価格表・原価情報業界の一般的な知識
提案書・見積書のデータ公開されている情報
社内システムのデータ自分の職務経歴の記憶

迷ったら持ち出さないでください。取引先で働く以上、前職の情報を持っているのではないかという疑いは、常についてまわります。

「何も持ち出していない」と言い切れる状態にしておくことが、自分を守ります。

6. 面接で聞かれる3問

質問1:「現職との関係に問題は生じませんか」

この質問は必ず来ます。取引先側が最も気にしている点です。

「就業規則と入社時の誓約書を確認しましたが、競業避止に関する定めはございませんでした。応募も公募の求人に私から行っております。退職の際は引き継ぎを通常より厚く行い、御社との取引に影響が出ない形で進めるつもりです」

確認済みであることを、具体的に示すのが要点です。「大丈夫だと思います」では不十分です。

質問2:「現職の情報を持ち込むつもりはありますか」

答えは一つです。

「持ち込みません。データや資料は一切持ち出さない方針です。私が持ち込めるのは、業務を通じて身についた進め方だけだと考えております」

ここで「役に立つ情報を持っています」と答えると、その瞬間に落ちます。同じことを次の転職でされる人だと見られるためです。

質問3:「なぜ当社なのですか」

取引先への応募では、この答えが最も作りやすい。

「御社の○○の進め方を、担当として2年間見てきました。特に、○○の場面で△△を優先される判断に一貫性があり、そこで働きたいと考えるようになりました」

実際に見た場面を一つ、具体的に出してください。外部からは書けない内容になるため、他の応募者との差が明確に出ます。

7. 入社後に起きやすい摩擦

入社して終わりではありません。この転職には、入社後に特有の難しさがあります。

1. 前職の担当としての目線が抜けない

「前の会社ではこうしていた」を言いたくなりますが、最初の3ヶ月は言わないでください。取引先だった立場から中に入ると、外から見えていた非効率が目につきます。しかし、それを言う権利はまだありません。

2. 前職との窓口を任される

事情を知っている人だからと、前職との折衝を任されることがあります。これは断って構いません。

「前職との関係については、私が窓口に立つと双方にとって難しい面があるかと思います。当面は別の方にお願いできますでしょうか」

3. 前職の情報を求められる

「前の会社の原価はどのくらいだったのか」と聞かれることがあります。答えないでください。

「前職の内部情報については、お答えできない立場にあります。ご理解いただけますと幸いです」

この一線を最初に引いておくと、以後は聞かれなくなります。

8. 進め方と時間配分

時期やること
応募の1ヶ月前就業規則と誓約書を確認
応募前会社間の契約を取引先に確認してもらう
応募公募ルートで自分から応募
内定後引き継ぎ計画を先に作る
退職の申し出転職先は最初に言わない
退職まで後任と取引先の顔合わせを設定

最初の2つを飛ばさないでください。

確認せずに進めて、最終面接で「契約上できないことが分かった」となるケースが実際にあります。その時点で前職に退職の意思を伝えていたら、行き場がなくなります。

確認は、応募より前です。

9. よくある質問

Q. 競業避止の条項があったら諦めるべきですか

諦める必要はありませんが、慎重な確認が必要です。

競業避止義務は、無制限に有効なわけではありません。期間、地域、職種の範囲、代償措置の有無によって、有効性が判断されます。

条項がある場合は、弁護士への相談を検討してください。会社の言い分がそのまま通るとは限りません。

Q. 取引が終了している取引先なら問題ないですか

難易度は大きく下がります。

現在の取引に影響しないため、取引先側も動きやすくなります。ただし、競業避止の条項は取引の有無と関係なく適用されるため、自分の契約の確認は必要です。

Q. 担当者に相談してもいいですか

おすすめしません。

担当者は、自社の人事と、取引先である前職の間で板挟みになります。相談するなら、公募に応募した後に「応募しました」と伝える形が、相手の負担が最も小さくなります。

Q. 前職に知られずに進められますか

内定までは可能ですが、退職時には必ず伝わります。

取引先である以上、隠し通すことはできません。隠して発覚するほうが、はるかに悪い結果になります。

Q. 前職の顧客を連れていくことはできますか

やらないでください。

顧客の引き抜きは、競業避止よりも重い問題になり得ます。営業秘密の不正使用や、不法行為として争われる可能性があります。

Q. 同業他社への転職とどちらが難しいですか

手続きの面では、取引先のほうが複雑です。会社間の契約が絡むためです。

ただし、選考の通りやすさでは取引先のほうが有利です。相互に相手を知っているためです。難しさの種類が違います。

Q. 入社後、前職の担当者と会う機会はありますか

あります。取引が続いていれば、会議で顔を合わせることもあります。

だからこそ、退職時の引き継ぎを丁寧に行っておくことが、後の自分を助けます。

Q. 給与交渉はしにくいですか

むしろしやすい場合があります。

業務内容を既に理解しているため、即戦力としての評価がしやすいからです。ただし、前職の給与水準が相手に推測されやすい点は不利に働くことがあります。希望額は根拠とセットで伝えてください。

10. まとめ:今週やる3つのこと

1. 就業規則と入社時の誓約書を探して、競業避止の条項を読む。これが最初です。

2. 取引先の採用ページで、公募の求人を確認する。公募があるかどうかで進め方が変わります。

3. 引き継ぎ計画を、応募前に書き始める。後任が困らない状態を作ることが、この転職の最大の防御です。

正規のルートで応募し、引き継ぎを丁寧に行う。この2つを守れば、揉める要素はほとんど消えます。

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この記事を書いた人

木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。

23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。