退職の引き継ぎ資料の作り方|そのまま使えるテンプレートと3時間で終わらせる手順【2026年版】
〜引き継ぎ資料は「丁寧に作る」ものではなく「3時間で終わらせる」ものです。そのまま使えるテンプレートを置いておきます〜
退職が決まって最初に困るのが、引き継ぎ資料です。
何から書けばいいかわからない。全部書こうとすると終わらない。かといって雑に済ませると、退職後に連絡が来る。
引き継ぎ資料には、明確な目的が2つあります。
- 有給消化を通すための材料にすること
- 退職後に連絡が来ないようにすること
この2つを満たせば十分です。感謝や思いを込めた大作を作る必要はありません。この記事では、そのまま使えるテンプレートと、3時間で終わらせる手順を置いておきます。
1. 結論:引き継ぎ資料に必要なのは4項目だけ
引き継ぎ資料の4項目
① やることリスト(いつ、何を、どのくらいの頻度で)
② 担当先・案件の一覧(相手、状況、次にやること)
③ 手順書(自分しか知らない操作だけ)
④ 連絡先とアカウント(誰に聞けばいいか、何を持っているか)
①と④を先に作れば、8割は終わります。③は「自分しか知らないこと」だけで十分です。
全部を書こうとすると終わりません。「自分がいなくなったら止まること」だけを書いてください。
2. 引き継ぎ資料の本当の役割
2-1. 有給消化を通す最大の材料になる
退職を伝えると、多くの上司が「引き継ぎはどうする」と聞きます。このとき、資料を1枚持っていけるかどうかで交渉の結果が変わります。
- ✕「引き継ぎはしっかりやります」→ 抽象的。上司は不安なまま
- ○「担当40社の一覧と、優先度、引き継ぎの進め方をまとめてきました」→ 止まらないと判断できる
上司が気にしているのは有給ではなく、自分の管理する業務が止まらないかだけです。そこが解決すれば、有給の話は自動的に通ります。詳しくは退職時の有給消化にまとめています。
2-2. 退職後に連絡が来ないようにする
引き継ぎが不十分だと、退職後に電話やメッセージが来ます。すでに他社で働いている状態で、前職の質問に答えるのは相当なストレスです。
連絡が来る原因は、ほぼ次の3つに集約されます。
| 原因 | 対策 |
|---|---|
| ファイルの場所がわからない | ④にファイルパスを書く |
| パスワード・アカウントがわからない | ④に一覧を作る(パスワード自体は別途安全に引き渡す) |
| 過去の経緯がわからない | ②に「これまでの経緯」を1行ずつ書く |
この3つを潰すだけで、退職後の連絡はほぼゼロになります。
2-3. 完璧を目指さない
引き継ぎ資料に完璧はありません。どれだけ書いても、想定外のことは起きます。
目指すべきは「後任が自分で調べられる状態」であって、「後任が何も考えなくていい状態」ではありません。だから、答えより「誰に聞けばいいか」を書くほうが価値があります。
3. 実例:40社を1か月で引き継いだときにやったこと
私が第二新卒で転職したとき、担当していた既存顧客は約40社ありました。引き継ぎ期間は1か月です。
最初、全社ぶんの詳細な資料を作ろうとして、3日で挫折しました。1社あたり30分かけると20時間かかると気づいたからです。
そこで、やり方を変えました。
40社を3つに分けた
A:直近3か月で動きがある/金額が大きい(6社)→ 同行して引き継ぎ
B:安定して継続しているが動きは少ない(20社)→ 一覧に1行ずつ書く
C:ほぼ接点がない(14社)→ 社名と担当者名だけ
結果として、資料作成にかかったのは合計3時間でした。A群の6社に同行の時間を使い、B群とC群は一覧で済ませています。
全部を均等に扱わないこと。これが引き継ぎを終わらせる唯一のコツです。
4. そのまま使えるテンプレート
以下をコピーして使ってください。Excelでもスプレッドシートでも、Wordでも構いません。
4-1. ①やることリスト
【定期業務一覧】
■ 毎日
・[時刻] [業務名]:[何をするか] / 使うもの:[システム名・ファイル名]
例)9:00 メール確認:問い合わせ窓口の振り分け / 共有メールボックス
■ 毎週
・[曜日] [業務名]:[何をするか] / 提出先:[誰に]
例)金曜 週報作成:今週の商談数と受注をまとめる / 提出先:〇〇部長
■ 毎月
・[日付] [業務名]:[何をするか] / 期限:[いつまで]
例)月初3営業日 請求書発行:受注一覧から作成し送付 / 期限:5営業日まで
■ 不定期・年次
・[タイミング] [業務名]:[何をするか]
例)契約更新1か月前 更新案内の送付:契約管理表の期日を確認して連絡
「毎月」の欄がいちばん重要です。月次の業務は忘れられやすく、退職後に連絡が来る最大の原因になります。
4-2. ②担当先・案件の一覧
【担当先一覧】(Excelで作成推奨)
| 会社名 | 担当者名 | 連絡先 | 重要度 | 現在の状況 | 次にやること | 期限 | 備考・経緯 |
|--------|---------|--------|--------|-----------|------------|------|-----------|
| ○○社 | ○○様 | 03-... | A | 契約更新の検討中 | 8/20までに提案書 | 8/20 | 昨年値上げで一度失注しかけた経緯あり |
| △△社 | △△様 | 03-... | B | 安定稼働 | 定例で月1回連絡 | - | 担当者が4月に交代。前任は□□様 |
| ××社 | ××様 | 03-... | C | 接点なし | - | - | 2年前に1度取引 |
「備考・経緯」の列が、退職後の連絡を防ぐ最大のポイントです。過去に何があったかは、資料に書かないと絶対に伝わりません。
重要度は必ず3段階でつけてください。後任は全部を同じ熱量では見られません。どこから手をつければいいかを示すのが親切です。
4-3. ③手順書(自分しか知らないことだけ)
【操作手順】
■ [業務名]の手順
1. [システム名]にログイン(URL:https://...)
2. [メニュー名] → [画面名]
3. [具体的な操作]
※注意:[間違えやすい点、過去にミスが起きた点]
4. [完了の確認方法]
■ よくあるトラブルと対処
・[症状]:[原因] → [対処法]
例)請求書が発行できない:前月の締め処理が未完了 → 経理部の○○さんに確認
マニュアルがすでにある業務は書かないでください。「マニュアル○○ページ参照」で十分です。書くのはマニュアルに載っていない、自分だけが知っていることだけです。
4-4. ④連絡先とアカウント一覧
【社内の相談先】
・[業務領域]:[部署] [氏名] さん(内線○○)
例)請求・入金の件:経理部 ○○さん(内線123)
例)システムの不具合:情報システム部 ○○さん(Slackの#it-help)
【使用システム・アカウント】
| システム名 | URL | ID | 権限 | 備考 |
|-----------|-----|-----|------|------|
| ○○CRM | https://... | your.name@... | 管理者 | パスワードは別途、情シス経由で引き渡し |
| ○○(外部サービス) | https://... | ... | 一般 | 契約は年次更新、次回は○月 |
【ファイルの保管場所】
・担当先の提案書:[共有ドライブのパス]
・月次の集計:[パス]/毎月○日に更新
・過去のやり取り:[メールのフォルダ名]
パスワードそのものを資料に書かないでください。「情報システム部経由で引き渡し」と書き、実際の受け渡しは会社のルールに従ってください。
5. 3時間で終わらせる手順
| 時間 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 30分 | 担当先・案件を全部書き出す | まず名前だけ。詳細は後 |
| 20分 | A/B/Cの重要度をつける | 直近の動き × 金額で判断 |
| 40分 | A群だけ、経緯と次にやることを書く | ここに時間を集中させる |
| 30分 | B群を1行ずつ埋める | 状況と次の連絡時期だけ |
| 20分 | ①やることリストを作る | 特に「毎月」を漏らさない |
| 30分 | ④連絡先とアカウントを埋める | 退職後の連絡防止に最も効く |
| 10分 | ③手順書(自分しか知らないものだけ) | なければ書かなくてよい |
合計3時間です。ポイントは、A群に時間を集中させて、B群・C群は割り切ること。全部を同じ密度で書こうとすると、10時間かけても終わりません。
6. やってはいけない5つ
| NG | なぜだめか |
|---|---|
| 全部を同じ密度で書く | 終わらない。優先度が伝わらない |
| 既存マニュアルを書き写す | 二重管理になる。参照先を書けばよい |
| パスワードを資料に直接書く | セキュリティ上の問題。会社のルールに従う |
| 退職直前にまとめて作る | 質問に答える時間がなくなる |
| 感情や思いを書き込む | 資料の役割ではない。挨拶は別で |
特に「退職直前にまとめて作る」のが最大の失敗です。資料は最終出社日の1〜2週間前に渡して、後任から質問を受ける時間を作ってください。質問に答える時間があるかどうかで、退職後の連絡の量が変わります。
7. 引き継ぎの進め方(資料以外)
資料を作るだけでは引き継ぎは完了しません。
| ステップ | やること | タイミング |
|---|---|---|
| 1 | 資料の作成 | 退職を伝えた直後 |
| 2 | 上司に資料を見せて、引き継ぎ先を確定 | 資料作成後すぐ |
| 3 | 後任への説明(資料を渡して口頭で補足) | 最終出社日の2週間前 |
| 4 | A群の顧客へ同行して挨拶 | 最終出社日の1〜2週間前 |
| 5 | 後任からの質問対応 | 最終出社日まで |
| 6 | 最終出社日に、残タスクの一覧を渡す | 最終日 |
4の同行が、最も感謝される部分です。資料に書けない関係性は、直接会って引き継ぐしかありません。重要顧客だけでいいので、必ず同行してください。
8. 後任が決まっていない場合
第二新卒の退職では、後任が決まらないまま辞めるケースが珍しくありません。その場合の対応です。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 後任が未定 | 上司に資料を渡す。「誰に渡すか」は上司の責任 |
| 分割して引き継ぐ | 担当先ごとに引き継ぎ先を明記した一覧を作る |
| 誰も引き継がない | 資料を共有ドライブに置き、場所を上司にメールで通知 |
後任が決まらないことを理由に退職日を延ばす必要はありません。後任の手配は会社の責任です。ただし、「資料は完成させて、置き場所を伝えた」という事実をメールに残しておいてください。後から「引き継ぎをしていない」と言われるのを防げます。
9. よくある質問
引き継ぎ資料の形式に決まりはありますか
ありません。会社に定型フォーマットがあればそれに従い、なければExcelやスプレッドシートで十分です。見た目を整える時間があるなら、内容を1件増やしてください。
どのくらいの分量が適切ですか
担当先の一覧+やることリスト+連絡先で、A4換算3〜5枚程度が目安です。20枚を超えるようなら、書きすぎている可能性があります。読まれない資料は存在しないのと同じです。
引き継ぎ期間はどのくらい必要ですか
担当業務の量によりますが、1か月あれば大半は足ります。私の場合、担当40社を1か月で引き継ぎました。重要なのは期間の長さより、A群への同行の時間が確保できるかです。
有給消化と引き継ぎ、どちらを優先すべきですか
引き継ぎ計画を先に作ってから、有給の交渉をしてください。順番が逆だと揉めます。詳しい交渉の手順は退職時の有給消化にまとめています。
退職後に連絡が来たら、対応すべきですか
法的な義務はありません。ただし、1〜2回程度なら対応しておくと関係が保てます。何度も来る場合は、「資料の○ページに記載しています」と資料を参照する形で返すと、次第に減ります。資料を作り込んでおくこと自体が、最大の防御策です。
引き継ぎをしないまま辞めることはできますか
法的には退職の自由が優先されます。ただし、業務に重大な支障を与えた場合に損害賠償を請求される可能性はゼロではありません。実務的には、資料を作って渡した事実をメールに残しておけば十分です。
在籍期間が短くて、引き継ぐものがほとんどありません
それでも資料は作ってください。量が少なくても、「担当していたこと」「途中の作業」「アカウント」を書いた1枚があるだけで、印象がまったく違います。在籍が短い場合の書類の書き方は在籍半年・1年未満の職務経歴書も参照してください。
引き継ぎ資料は転職活動に使えますか
そのままは使えませんが、素材になります。担当先の件数、扱った金額、定期業務の内容は、職務経歴書にそのまま書ける情報です。引き継ぎ資料を作るときに、自分の職務経歴書の材料も同時に集まると考えてください。
10. まとめ
引き継ぎ資料は、丁寧さではなく優先度のつけ方で決まります。
今日やる3つのこと
① 担当先・案件を全部書き出す(30分。名前だけでいい)
② A/B/Cの重要度をつける(20分。直近の動き × 金額)
③ ④の連絡先とアカウント一覧を埋める(30分。退職後の連絡防止に最も効く)
この3つで、実質的な引き継ぎ資料はほぼ完成します。残りはA群の詳細を埋めるだけです。全部を均等に書こうとしないでください。それが、3時間で終わるか10時間かかるかの分かれ目です。
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この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。