退職を言い出せないとき|第二新卒が切り出すまでの手順と台本【2026年版】
〜言い出せないのは性格の問題ではなく、準備が足りていないだけです〜
内定は出た。入社日も決まりそう。でも、上司に言い出せない。
気づけば1週間、2週間と経っている。
これは、第二新卒の転職で最も多い停滞です。そして、この停滞には実害があります。
退職を伝えるのが遅れると、引き継ぎの期間が圧迫され、入社日を遅らせるか、円満に辞められないかのどちらかになります。
ただ、「勇気を出しましょう」と言われて出せる人はいません。
言い出せない理由は、たいてい4つのうちのどれかです。そして、それぞれに具体的な対処があります。
「怖い」という感情の問題ではなく、「何を、どの順番で言えばいいか決まっていない」という準備の問題です。
この記事では、切り出せない4つの理由と対処、そしてそのまま使える台本を用意します。
1. 結論:やることは3つだけ
| # | やること | 所要時間 |
|---|---|---|
| ① | 言う日時を決める(カレンダーに入れる) | 3分 |
| ② | 最初の1文を紙に書く | 5分 |
| ③ | 上司にアポイントを取る(内容は言わない) | 1分 |
③まで済めば、あとは当日を迎えるだけです。
言い出せない人の多くは、①をやっていません。「そのうち」「機会があれば」と思っているうちに、機会は来ません。
機会は作るものです。
アポイントの取り方
内容を言わずに時間を確保します。
「◯◯さん、15分ほどお時間をいただきたいのですが、明日の夕方はいかがでしょうか。お伝えしたいことがあります。」
「お伝えしたいこと」で十分です。
「相談があります」と言うと、相談として扱われ、引き止めの余地を与えます。
退職の意思はすでに固まっているので、「伝える」です。
2. 言い出せない4つの理由と、それぞれの対処
| 理由 | 実態 | 対処 |
|---|---|---|
| ① 引き止められるのが怖い | 断り方を知らない | 断る文を先に用意する |
| ② 迷惑をかけると思う | 責任範囲を広く見積もりすぎ | 引き継ぎ計画を作る |
| ③ 言うタイミングがない | 機会を待っている | アポを取る |
| ④ 怒られると思う | 過去の場面を想像している | 台本を用意する |
① 引き止められるのが怖い
引き止めは、高い確率で来ます。
だから、「来ない」と期待するのではなく、「来たときにどう返すか」を先に決めておきます。
| 引き止めの言葉 | 返し方 |
|---|---|
| 「もう少し考え直してくれないか」 | 「考えた上での結論です」 |
| 「給与を上げる」 | 「金額の問題ではありません」 |
| 「異動を検討する」 | 「業務内容の問題ではなく、方向性の問題です」 |
| 「後任が決まるまで待ってくれ」 | 「引き継ぎには全力で協力します。退職日は◯月◯日で調整させてください」 |
共通するのは、「感謝を述べてから、結論は変えない」です。
引き止めへの対応は、専用の記事に詳しくまとめています。
② 迷惑をかけると思う
この感覚は、責任範囲を実際より広く見積もっていることから来ます。
次の質問に答えてください。
| 質問 | 答え |
|---|---|
| あなたが1ヶ月休んだら、会社は止まりますか | 止まりません |
| あなたの業務を引き継げる人はいますか | いない場合は、それは会社の体制の問題です |
| あなたが辞めた後、その業務はどうなりますか | 誰かが担当します |
「自分がいないと回らない」という感覚は、たいてい過大評価です。
それでも不安なら、引き継ぎ計画を先に作ってください。
「引き継ぎの資料を用意しています」と言えると、切り出すときの心理的な負担が大幅に下がります。
③ 言うタイミングがない
タイミングは、来ません。
忙しくない週も、上司の機嫌が良い日も、来ないと思ってください。
やることは、アポイントを取ることだけです。
④ 怒られると思う
怒られる可能性は、ゼロではありません。
ただし、怒られたところで、退職はできます。
退職の意思表示は、法的に認められた行為です。上司の感情は、退職の可否とは関係ありません。
怖いのは「怒られること」ではなく、「怒られたときに何を言えばいいか分からないこと」です。
台本を用意すれば、その場で考える必要がなくなります。
3. 編集長の実体験:3週間言い出せなかった話
私が第二新卒でSaaS企業に転職を決めたとき、内定承諾から上司に伝えるまで、3週間かかりました。
言えなかった理由は、②です。
当時、私は担当エリアの40社を一人で持っていました。チームは私を含めて3名で、明らかに人手が足りていませんでした。
「自分が抜けたら、確実に回らなくなる」と思っていました。
3週間経った頃、エージェントの担当者から連絡が来ました。
担当者「入社日の件、先方から確認が入っています。上司の方にはお伝えいただけましたか」
私「……まだです」
担当者「何が引っかかってますか」
私「40社持ってて、引き継ぐ人がいないんです。抜けたら回らないので」
担当者「木戸さん、それ、会社が解決する問題です」
私「でも……」
担当者「人が足りてないのは、木戸さんが辞めるからじゃなくて、元から足りてないんですよ。木戸さんが辞めなくても、いつか誰かが辞めます。そのときのために体制を作るのは、木戸さんの仕事じゃないです」
私「……」
担当者「木戸さんがやるべきなのは、引き継ぎ資料を作ることまでです。そこまでやれば、十分すぎるくらいです」
この会話の後、私は引き継ぎ資料を作り始めました。
40社の担当リスト、それぞれの担当者名、直近のやり取り、次のアクション。Excelで2日かけて作りました。
そして、それを持って上司にアポを取りました。
切り出したとき、こう言いました。
「お時間をいただきありがとうございます。退職させていただきたく、ご相談に参りました。担当している40社について、引き継ぎの資料をまとめてきました。」
上司の反応は、想像していたものとまったく違いました。
「そうか」と言った後、少し黙って、それから「引き継ぎ資料、もう作ったのか」と言いました。
怒られませんでした。
後で分かったことですが、上司は私が転職活動をしていることに、うすうす気づいていました。
ここで学んだのは2つです。
1つ目:資料を持っていくと、話の性質が変わる。「辞めたい」という相談ではなく、「辞める準備ができている」という報告になります。
2つ目:3週間の遅れは、完全に無駄だった。その3週間で、私は何も解決していません。ただ不安なまま過ごしただけです。
4. 伝える相手・場所・時間
相手
必ず直属の上司が最初です。
| 順番 | 相手 |
|---|---|
| 1 | 直属の上司 |
| 2 | 上司が指定した相手(部長、人事) |
| 3 | チームメンバー(上司の許可後) |
| 4 | 取引先(会社の指示に従う) |
人事に先に相談してはいけません。
人事から上司に伝わると、上司の面目が潰れ、その後の引き継ぎが難しくなります。
同僚に先に話すのも避けてください。噂として上司の耳に入ると、最悪の形になります。
場所
| 場所 | 適否 |
|---|---|
| 会議室(個室) | 最適 |
| オンライン(1対1) | 可(リモート中心の職場なら) |
| 上司の席の横 | 不可(周囲に聞こえる) |
| 飲み会の場 | 不可 |
| メール・チャットのみ | 不可(対面が原則) |
個室を確保してください。
リモート勤務が中心の職場では、オンラインの1対1で構いません。ただし、チャットで済ませるのは避けてください。
時間
| タイミング | 適否 |
|---|---|
| 週の半ば(火〜木) | 推奨 |
| 月曜の朝 | 避ける(週の立ち上がり) |
| 金曜の夕方 | 避ける(週末を挟んで話が止まる) |
| 終業前の30分 | 推奨 |
| 繁忙期のピーク | 可能なら避ける |
終業前を推奨する理由は、話が長引いても業務に影響しないからです。
そして、退職の話は1回で終わりません。その日は「伝える」だけで、詳細は後日になります。
5. そのまま使える台本
基本の型(3文)
① 結論
「お時間をいただきありがとうございます。私事で恐縮ですが、退職させていただきたく、ご報告に参りました。」
② 理由(簡潔に)
「◯◯の分野に挑戦したいと考えており、そのための機会をいただきました。」
③ 誠意
「引き継ぎについては、責任を持って対応いたします。退職日については、ご相談させていただければと思います。」
この3文で十分です。
長く話す必要はありません。むしろ、長く話すと引き止めの余地が増えます。
理由の伝え方
| 言ってよいこと | 言わない方がよいこと |
|---|---|
| 新しい分野に挑戦したい | 給与が低い |
| 経験を広げたい | 上司と合わない |
| 家庭の事情 | 会社の将来性に不安がある |
| 具体的にやりたいことが見つかった | 残業が多い |
不満を理由にすると、「改善するから」という引き止めが必ず来ます。
そして、改善されても辞めるのであれば、話が長引くだけです。
「前向きな理由」で統一してください。嘘をつく必要はありませんが、言わない自由はあります。
転職先を聞かれたら
答える義務はありません。
「詳細は、まだお伝えできる段階ではないのですが、同じ業界ではありません。」
競合他社への転職の場合は、特に慎重に判断してください。
ただし、会社によっては競業避止義務の規定があるため、就業規則を確認しておいてください。
6. 引き止められたときの返し方
1回目の引き止めは、ほぼ確実に来ます。
引き止めの4類型と返し方
| 類型 | 上司の言葉 | 返し方 |
|---|---|---|
| ① 情に訴える | 「君がいないと困る」 | 「ありがとうございます。ただ、決めたことです」 |
| ② 条件提示 | 「給与を上げる」「異動させる」 | 「条件の問題ではありません」 |
| ③ 引き延ばし | 「少し考え直してくれ」 | 「考えた上での結論です」 |
| ④ 圧力 | 「今辞めるのは無責任だ」 | 「引き継ぎには全力で対応します」 |
すべてに共通する構造は、「感謝→結論は変えない」です。
「そう言っていただけるのはありがたいです。ただ、時間をかけて考えた上での結論なので、変わりません。」
この1文を覚えておけば、ほぼすべての引き止めに使えます。
「考え直してくれ」と言われて保留になった場合
その場で日を決めてください。
「承知しました。ただ、結論は変わらないと思います。次にお時間をいただけるのは、◯日でよろしいでしょうか。」
日を決めないと、そのまま2週間が過ぎます。
4類型のうち④が続く場合
「無責任だ」「損害賠償だ」といった圧力が続く場合、法的な整理を知っておいてください。
期間の定めのない雇用契約では、労働者はいつでも解約の申入れができ、申入れから2週間の経過によって契約は終了します(民法第627条第1項)。
就業規則で「1ヶ月前まで」と定められている場合も多く、実務上はそれに従うのが円満ですが、退職そのものを会社が拒否することはできません。
それでも進まない場合は、労働基準監督署や、勤務先の所在地を管轄する労働局の相談窓口に相談してください。
7. 言い出せないまま時間が経った場合
すでに1ヶ月以上経っている場合の対処です。
入社日が迫っている場合
まず、転職先に連絡してください。
「現職での引き継ぎ調整に時間を要しております。入社日を◯月◯日に変更いただくことは可能でしょうか。」
1回であれば、多くの企業が応じます。
ただし、2回目は難しくなります。そして、印象は確実に悪くなります。
だから、1回目の延期を使う前に、伝えてください。
期限を自分に課す
「今週中」ではなく、日と時間を決めてください。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 日 | 9月10日(水) |
| 時間 | 17時30分 |
| 場所 | 第2会議室 |
| アポを取る日 | 9月9日(火)の朝 |
最後の行が重要です。
アポを取ってしまえば、後戻りできません。これが、最も効く方法です。
誰かに宣言する
エージェントの担当者に、「◯日に伝えます」と宣言してください。
担当者は、その日以降に確認の連絡をします。
外部に締切を作ることで、実行率が上がります。
8. 伝えた後にやること
伝えたら、その日のうちに次の3つを確認してください。
| # | 確認すること | 誰に |
|---|---|---|
| ① | 退職届の提出方法と期限 | 上司または人事 |
| ② | 退職日の候補 | 上司 |
| ③ | チームへの共有のタイミング | 上司 |
③を確認せずに同僚に話すと、上司との関係が悪化します。
「いつ、誰に伝えてよいか」は、必ず上司の指示に従ってください。
そして、退職日の決め方には制約があります。
| 制約 | 内容 |
|---|---|
| 就業規則 | 「◯ヶ月前までに申し出ること」の規定 |
| 引き継ぎ | 後任の有無、業務量 |
| 有給休暇 | 残日数と消化の可否 |
| 転職先の入社日 | 逆算の起点 |
退職日の決め方と、その後の手続きについては、専用の記事にまとめています。
9. よくある質問
上司が忙しそうで、アポを取るのが申し訳ないです。
15分のアポは、どんなに忙しい上司でも取れます。そして、退職の話は、上司にとっても早く聞きたい情報です。遅く伝えるほど、上司の対応も難しくなります。
メールやチャットで伝えてはいけませんか?
対面(またはオンラインの1対1)が原則です。ただし、リモート勤務でどうしても時間が合わない場合、まずチャットでアポイントを取り、通話で伝えてください。テキストだけで完結させるのは避けてください。
退職届は、伝えるときに持っていくべきですか?
初回は不要です。まず口頭で伝え、受理された後に提出するのが一般的な流れです。会社によって様式が指定されている場合もあるため、伝えた後に確認してください。
引き止めが強く、話が進みません。
「退職日を◯月◯日でお願いします」と、日付を明示してください。それでも進まない場合、人事部に直接相談する経路があります。就業規則の規定に沿って手続きを進める権利は、労働者側にあります。
転職先が決まっていないと、伝えづらいです。
決まっていない状態での退職は、経済的なリスクがあります。可能であれば、内定を得てから伝えてください。ただし、心身に影響が出ている場合は、この限りではありません。その場合は、生活費の見通しを立てた上で判断してください。
上司が退職を認めてくれません。
認める・認めないという性質のものではありません。期間の定めのない雇用契約では、退職の申入れから2週間の経過で契約は終了します(民法第627条第1項)。就業規則の規定に沿って手続きを進め、それでも受理されない場合は、労働基準監督署などの相談窓口を利用してください。
退職代行を使うべきでしょうか?
まずは自分で伝えることを推奨します。ただし、ハラスメントがある、上司と話せる状態にないなど、事情がある場合は選択肢になります。費用と、その後の手続きの扱いを確認してから判断してください。
伝えた後、職場に居づらくなりませんか?
多少の気まずさはありますが、多くの場合、想像より短期間で落ち着きます。引き継ぎを丁寧にやることが、最も効果的な対処です。「辞めるまでの仕事ぶり」が、最後の印象を決めます。
10. まとめ:今日やる3つのこと
退職を言い出せないのは、勇気の問題ではなく準備の問題です。
言う日を決めて、最初の1文を書いて、アポを取る。この3つが済めば、あとは当日を迎えるだけになります。
今日やること
① 伝える日時を、カレンダーに入れる(週の半ば、終業前の30分)
② 最初の1文を紙に書く(「退職させていただきたく、ご報告に参りました」)
③ その前日にアポを取る予定を、カレンダーに入れる
目安時間:合計10分
③まで入れてください。
アポを取ってしまえば、後戻りできません。そして、後戻りできない状態を作ることが、この問題の唯一の解決策です。
私は3週間かけて、何も解決しませんでした。不安なまま過ごしただけです。その3週間は、丸ごと無駄でした。
この先、読むべき記事
- 退職の流れ|第二新卒が伝えるところから入社日までにやること全部(伝えた後の全体像)
- 退職を引き止められたとき|第二新卒が角を立てずに断る順番と法的な線(引き止めへの対応)
- 退職届・退職願の書き方|第二新卒がそのまま使えるテンプレと出し方の手順(書類の準備)
- 退職日の決め方|第二新卒が逆算する順番と3つの制約(退職日の調整)
- 退職の引き継ぎ資料の作り方|そのまま使えるテンプレートと3時間で終わらせる手順(引き継ぎの準備)
- 退職を拒否されたとき|第二新卒が押さえる法的な線と相談窓口(拒否されたときの対処)
- 退職の意思は撤回できるのか|伝える前と後で変わること(伝えたあとに迷った場合)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。