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退職の意思は撤回できるのか|伝える前と後で変わること【2026年版】

木戸 悠介 なぜキャリア? 編集長 公開 2026年9月6日 読了 約15分
退職の意思は撤回できるのか|伝える前と後で変わること【2026年版】

退職を上司に伝えた数日後、気持ちが揺れる。引き止められた、条件を提示された、あるいは単に不安になった。「やっぱり撤回できないか」と考える場面は、実際にあります。

結論から書くと、段階によって扱いが変わります。そして、法的な扱いより先に考えるべきなのは、撤回した後にその職場で働き続けられるかです。

この記事では、段階ごとの一般的な整理と、撤回すべきかどうかの判断基準をまとめます。個別の判断は専門機関にご確認ください。

1. 結論:3つの段階で扱いが変わる

段階1、口頭で伝えただけ。まだ退職届を出していない。撤回の申し出はしやすい段階です。

段階2、退職届を提出した。会社が受理する前か後かで扱いが変わるとされます。

段階3、会社が承諾した(合意が成立した)。一般的に、一方的な撤回は難しくなるとされています。

ただし、いずれの段階でも「会社が応じてくれるかどうか」が実質的な分かれ目です。法的にどうかという話と、実際に撤回が認められるかは別です。

まず確認すること

確認内容
退職届を出したか出していなければ段階1
会社が受理したか受理の連絡があったか
後任の採用が始まっているか始まっていると撤回は難しい
社内に周知されているか周知後だと影響が大きい

2. 段階ごとの一般的な整理

段階一般的な扱い
口頭で伝えただけ会社の承諾がなければ、撤回の余地があるとされる
退職届を提出、未受理受理前であれば撤回の余地があるとされる
退職届が受理された会社の合意がなければ撤回は難しいとされる
退職日が確定し周知された実務上、撤回は極めて難しい

「受理」の判断は、書面や意思表示の内容によって変わります。誰が受け取ったか、承諾の返答があったかなど、状況によって評価が分かれる部分です。

この記事は一般的な整理であり、個別の判断はできません。実際に問題になりそうな場合は、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士など専門機関にご確認ください。

実務上、より重要なのは次のことです。会社が「戻っていいですよ」と言えば撤回できますし、「もう手続きを進めた」と言われれば、法的にどうであれ関係は悪化します。

3. 編集長が相談を受けた話:撤回したが1年で辞めた

退職を撤回した方から、1年後に話を聞いたことがあります。

相談者「あのとき撤回して、結局1年後に辞めました」

私「撤回したあと、どうでした?」

相談者「最初の1か月はよかったんです。給与も少し上がって、担当も変えてもらって」

私「そのあとは」

相談者「『またいつ辞めると言い出すか分からない人』という扱いになって。新しい案件が回ってこなくなりました」

撤回そのものより、その後の扱いが問題になったケースです。

引き止めで条件を良くしてもらった場合、短期的には状況が改善します。ただし、「一度辞めると言った人」という認識は残ります。重要な仕事を任せる判断のときに、それが影響することがあります。

すべての職場でそうなるわけではありません。ただ、撤回を考えるときは、この可能性を織り込んでおく必要があります。

4. 撤回すべきか判断する3つの質問

撤回を申し出る前に、自分に確認します。

質問1「辞めたいと思った理由は解消されたか」

条件の提示で解消されるものと、されないものがあります。

辞めたい理由条件提示で解消するか
給与解消する可能性がある
担当業務異動があれば解消する
業務量人員の増加があれば解消する
上司との関係異動がなければ解消しない
会社の方向性解消しない
業界そのもの解消しない

下3行が理由だった場合、撤回しても半年後に同じ状況になります。

質問2「提示された条件は書面になっているか」

口頭での「給与を上げる」「異動させる」は、実現しないことがあります。撤回の条件として提示されたものは、書面か、少なくともメールで確認してください。

質問3「撤回後の扱いを受け入れられるか」

第3章のような状況になる可能性があります。それでも残る価値があるかを考えてください。

5. 撤回を申し出る手順

判断したうえで撤回する場合の進め方です。

手順1、早く伝える。時間が経つほど、会社の手続きが進みます。決めたその日に伝えてください。

手順2、直属の上司に直接伝える。最初に退職を伝えた相手です。

手順3、理由を明確に伝える。「気が変わった」だけだと、信頼を失います。

伝え方の例

「先日、退職の意思をお伝えしましたが、あらためて考え直したいと思い、ご相談に参りました。退職を考えた理由は、担当業務の範囲が限られていることでした。〇〇部長から、来期の異動を検討いただけるとのお話をいただき、その環境であれば続けたいと考えています。勝手を申し上げて申し訳ございませんが、退職の意思を撤回させていただくことは可能でしょうか。」

構成は4つです。

要素内容
撤回したいこと結論を先に
元の理由何が不満だったか
何が変わったか提示された条件、状況の変化
謝意手間をかけたことへの一言

手順4、会社の判断を待つ。その場で答えが出ないことがあります。人事や上長との調整が必要になるためです。

手順5、認められた場合、提示された条件を書面で確認する。第4章の質問2の通りです。

6. 撤回が認められなかった場合

会社が撤回に応じない場合もあります。

その場合にやること

1、理由を確認する。後任の採用が進んでいる、体制の変更が決まっているなど、会社側の事情があります。

2、予定通り退職の準備を進める。関係を悪化させないためにも、引き継ぎは丁寧に行ってください。

3、転職活動を再開または継続する。撤回を考えていた期間、活動を止めていた場合、再開が必要です。

4、この経験を次の判断に使う。撤回したくなった理由を書き出しておくと、次の会社を選ぶ基準になります。

撤回したくなった理由次の会社選びで見るべき点
人間関係が惜しかった職場の雰囲気、チームの構成
条件が良くなった給与テーブル、昇給の仕組み
転職先に不安が出た内定先の情報収集が不足していた
単に不安だった判断の材料が足りていない

4行目が最も多いです。この場合、次の会社を決めるときに、第2章の情報収集を厚くしてください。

転職先に内定を承諾した後に撤回したくなった場合

退職を撤回する場合、内定先への辞退が必要になります。こちらの扱いも整理します。

内定承諾後の辞退は、法的には可能とされていますが、企業には大きな影響があります。採用の枠を確保し、入社の準備を進めている段階だからです。

やること

1、決めたその日に連絡する。時間が経つほど、企業側の準備が進みます。

2、電話で伝えてからメールを送る。メールだけで済ませないでください。

3、理由を簡潔に伝える。詳細を説明する義務はありませんが、事実は伝えます。

電話での伝え方の例

「先日内定を承諾させていただいた〇〇です。大変申し訳ないのですが、現職に残る判断をいたしました。承諾後のご連絡となり、多大なご迷惑をおかけいたします。誠に申し訳ございません。」

4、エージェント経由の場合は担当者に先に伝える。担当者から企業に連絡が行きます。

影響として考えられること

項目影響
その企業への再応募難しくなる可能性が高い
エージェントとの関係以降の紹介に影響する場合がある
業界内での評判狭い業界では伝わる可能性

だからこそ、承諾する前に判断してください。迷いがある段階なら、承諾を待ってもらう依頼のほうが、はるかに影響が小さく済みます。

7. 面接で聞かれる可能性

撤回が認められず退職した場合、その経緯を面接で話す必要はありません。退職の事実だけを伝えれば足ります。

ただし、次のような場合には触れることがあります。

Q「退職を伝えてから、引き止められませんでしたか」

回答例:「引き止めのお話はいただきました。条件面の提示もありましたが、私が転職したい理由は業務の内容にあったので、条件では解消しないと判断してお断りしました。」

撤回を検討したこと自体は、正直に話しても問題ありません。むしろ、条件で揺れずに理由に立ち返って判断した、という説明になります。

言わないほうがよいこと

「一度撤回しようとしたが、会社に断られた」

この言い方だと、判断が定まっていない人に見えます。「検討したが、理由に立ち返って辞める判断をした」という形にしてください。

8. 撤回を考えないための準備

そもそも揺れないための準備です。

準備1、退職を伝える前に、辞める理由を書面にする。3つ書き出して、紙に残します。揺れたときに読み返します。

準備2、引き止められたときの答えを用意しておく。「条件を上げる」と言われたときに、その場で「考えます」と言わない準備です。

準備3、次が決まってから伝える。内定がない状態で退職を伝えると、不安から揺れやすくなります。

準備効果
理由を3つ書面に揺れたときに立ち返れる
引き止めへの答えを用意その場で流されない
内定を得てから伝える不安による揺れが減る

準備1が最も効きます。退職を伝えた直後は、感情が動きます。そのときに、冷静なときに書いた3つを読み返すと、判断が戻ります。

9. よくある質問

口頭で伝えただけなら撤回できますか

会社の承諾がなければ撤回の余地があるとされますが、状況によって評価が変わります。個別の判断は専門機関にご確認ください。

退職届を出した翌日でも撤回できますか

受理されているかどうかによります。まず上司に相談してください。

撤回すると評価は下がりますか

会社と上司によります。第3章のような状況になる可能性は織り込んでおいてください。

条件を上げてもらって残るのはよくないですか

一概には言えません。ただし、給与以外に理由があった場合、条件では解消しません。第4章の表で確認してください。

転職先に内定辞退の連絡が必要ですか

撤回して残る場合、内定先に辞退の連絡をします。早めに、誠実に伝えてください。

撤回したあと、また辞めたくなったら

第3章のケースです。半年〜1年で同じ状況になることがあります。その場合、次は撤回せずに進めるほうが結果的に穏当です。

会社が撤回に応じてくれません

会社の事情がある場合があります。理由を確認したうえで、予定通り退職の準備を進めてください。

撤回したことは次の転職で不利になりますか

書類に書く項目ではないので、原則として影響しません。面接で聞かれた場合のみ、第7章の形で答えてください。

10. まとめ:撤回を考えたときにやる3つのこと

退職の撤回は、法的な整理よりその後の職場での扱いを先に考える必要があります。

1つめ、辞めたいと思った理由を3つ書き出す。そのうち、提示された条件で解消するものがいくつあるかを数えてください。ゼロなら、撤回しても状況は変わりません。所要20分。

2つめ、提示された条件が書面になっているか確認する。口頭の「検討する」は実現しないことがあります。メールでも構わないので、記録に残る形にしてもらってください。所要10分。

3つめ、撤回するなら、その日のうちに伝える。時間が経つほど、会社の手続きが進み、撤回が難しくなります。

なお、退職の意思表示の効力については一般的な整理です。個別の判断は、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士など専門機関にご確認ください。

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この記事を書いた人

木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。

23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。