異動願いと転職はどちらを先に出すか|社内で動かせる範囲を確かめる【2026年版】
今の仕事が合わない。ただ、会社そのものが嫌なわけではない。この状態のとき、選択肢は転職だけではありません。異動という手が先にあります。
にもかかわらず、異動を検討せずに転職活動を始める人が多い。理由は「異動願いを出したら評価が下がりそう」「どうせ通らない」という予測です。どちらも、実際に出してみないと分かりません。
この記事では、異動で解決する不満と解決しない不満を分けたうえで、異動願いの出し方と、通らなかった場合の切り替え方を整理します。
1. 結論:不満の種類で順番が決まる
異動で解決する不満。業務内容が合わない、特定の人との関係、勤務地、担当している顧客層。これらは部署が変われば変わります。
異動で解決しない不満。会社の給与水準、評価制度、事業の方向性、業界そのもの。これらは部署を変えても同じです。
判断は簡単です。「隣の部署に移ったら、この不満は消えるか」を自問してください。消えるなら異動が先、消えないなら転職が先です。
迷う場合は異動を先に出してください。理由は第3章に書きますが、異動願いを出す過程で得られる情報が、転職の判断にも使えるからです。
2. 不満の切り分け表
| 不満 | 異動で解決するか | 補足 |
|---|---|---|
| 業務内容が合わない | ○ | 別職種の部署があるかが条件 |
| 上司との関係 | ○ | ただし異動先の上司は選べない |
| 担当顧客・担当領域 | ○ | 同じ部署内の担当替えでも足りる場合がある |
| 勤務地・通勤時間 | ○ | 拠点が複数ある場合 |
| 業務量が多すぎる | △ | 部署による。会社全体の問題の場合もある |
| 給与水準 | × | 部署が変わっても給与テーブルは同じ |
| 評価制度 | × | 全社共通のことが多い |
| 事業の将来性 | × | 会社の問題 |
| 業界そのもの | × | 転職しかない |
| 社風・価値観 | × | 全社的なもの |
×が3つ以上並ぶなら、異動を検討せず転職に進んで構いません。○が多いなら、異動を先に試す価値があります。
5行目の△は判断が難しい部分です。その部署だけが忙しいのか、会社全体がそうなのか。他部署の同期に聞くのが最も早い確認方法です。
3. 編集長が相談を受けた話:通らなかったが情報が得られた
異動願いを出して通らなかった方から、その後の話を聞きました。
相談者「異動願いは通りませんでした」
私「理由は言われましたか」
相談者「『今は人が足りないから、来年度に検討する』と。ただ、そのとき部長がもう一つ言ったんです」
私「何ですか」
相談者「『うちの会社で企画をやりたいなら、あと5年は現場だと思う』って。それを聞いて、転職に切り替えました」
異動願いは通らなかったが、判断材料が手に入ったケースです。
「あと5年は現場」という情報は、異動願いを出さなければ得られませんでした。転職活動を始めていたとしても、この情報がないまま「今の会社では無理そう」という推測で動くことになります。
異動願いは、通らなくても意味がある行動です。会社が自分をどう見ているか、今後どういう道を想定しているかが、その回答の中に出てきます。
4. 異動願いの出し方
手順1、制度を確認する。会社によって形が違います。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 社内公募 | 部署が募集を出し、応募する形。年に数回 |
| 自己申告制度 | 年1回、希望を提出する仕組み |
| 上司への相談 | 制度がない場合の実質的なルート |
| 人事への直接相談 | 制度として認められている会社もある |
1行目の社内公募がある会社では、それを使うのが最も確実です。制度に沿った手続きなので、評価への影響も基本的にありません。
手順2、上司に伝えるタイミングを選ぶ。評価面談や、期初の目標設定の場が自然です。突然切り出すより、制度上の面談の中で話すほうが受け取られ方が穏やかです。
手順3、伝え方を組む。次章で詳しく書きます。
手順4、回答の期限を確認する。「いつ頃までに結論が出ますか」と聞いておきます。回答がないまま半年経つことを防げます。
5. 伝え方の型
避けたい伝え方 「今の仕事が合わないので、異動させてください。」
理由が「合わない」だけだと、異動先でも同じことを言うと思われます。
使える型
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 今の業務でやってきたこと | 数字を入れて具体的に |
| そこで気づいたこと | 業務の中で面白かった部分 |
| 希望する部署でやりたいこと | 具体的な業務名 |
| 今の部署への貢献 | 引き継ぎや、それまでの期間の話 |
伝え方の例
「2年間、法人営業として40社を担当してきました。特に、案件管理の形式を統一してチームで運用する部分に手応えを感じていて、営業の現場より、仕組みを作る側の仕事に関心が移ってきました。可能であれば、営業企画の部署で経験を積みたいと考えています。現在の担当は継続しますし、引き継ぎが必要になる場合も期間をいただければ問題ありません。」
4つめの「今の部署への貢献」を必ず入れてください。これがないと、「逃げたいだけ」に聞こえます。逆にこれが入っていると、会社側は前向きな異動として検討しやすくなります。
6. 通らなかった場合の切り替え
異動願いが通らない場合、返ってくる答えは3種類あります。
| 回答 | 意味 | 次の動き |
|---|---|---|
| 「来年度に検討する」 | 可能性はある | 期限を確認して待つ |
| 「今の部署で〇〇ができてから」 | 条件が示された | 条件を満たせば道がある |
| 「その部署は経験者しか取らない」 | 社内では無理 | 転職に切り替える |
2行目が最も良い回答です。条件が示されたということは、道があるということです。「具体的にどういう状態になれば異動の対象になりますか」と重ねて聞いてください。
3行目が出たら、転職に切り替えて構いません。社内でその職種に移れないことが確定したので、判断が楽になります。
1行目は判断が難しいところです。「来年度」が本当に来るかどうかは分かりません。期限を切って、そこまで待つという決め方をおすすめします。「来年度の4月に動きがなければ転職活動を始める」と自分の中で決めておくと、待つ期間が惰性になりません。
異動が決まった場合にやること
異動願いが通った場合、そこからの動き方で結果が変わります。
1、異動前に、期待されている役割を確認する。異動先の上司に「何を期待されて受け入れていただいたか」を聞いてください。ここがずれていると、半年後に「思っていたのと違う」が起きます。
2、元の部署への引き継ぎを丁寧にやる。社内異動は、辞めるわけではありません。異動先で元の部署と仕事をする可能性もあります。引き継ぎが雑だと、その評判は社内に残ります。
3、異動後3か月は評価を求めない。新しい部署では、実質的に新人と同じ立場です。すぐに成果を出そうとすると空回りします。
4、半年後に判断する。異動して半年経った時点で、当初の希望が満たされているかを確認します。満たされていなければ、そこで転職を考える形になります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 異動前 | 期待されている役割を確認 |
| 異動時 | 元の部署への引き継ぎ |
| 異動後1〜3か月 | 覚えることに集中。成果を焦らない |
| 異動後6か月 | 希望が満たされたか判断 |
4行目の判断を先送りにしないでください。異動したこと自体で満足してしまい、2年経ってから「やはり違った」となるケースがあります。半年で一度立ち止まる形にしておくと、判断が遅れません。
7. 面接で異動願いの話をするか
転職に切り替えた場合、面接で異動願いの経緯を話すかどうか。
話す価値があります。理由は2つです。
1つめ、社内で努力したことの証拠になる。「不満があったからすぐ辞めた」ではなく、「社内で解決を試みたが道がなかった」という順序が伝わります。
2つめ、志望動機の裏付けになる。異動願いで希望した職種と、応募先の職種が一致していれば、志望の一貫性が示せます。
伝え方の例
「2年間の営業経験の中で、仕組みを作る側に関心が移り、社内で営業企画への異動を希望しました。ただ、その部署は社内では経験者採用のみという回答でした。社内での道がないことが分かったので、外に出る判断をしました。」
会社を批判しないこと。「異動させてもらえなかった」ではなく「社内ではその道がなかった」という事実の言い方にします。
異動願いが通ったが、それでも辞めた場合は、その経緯も説明が必要になります。「異動して半年やってみたが、想定していた業務と違った」のように、実際にやってみた結果として説明してください。
8. 進め方と時間配分
| 手順 | やること | 目安時間 |
|---|---|---|
| 1 | 第2章の表で、自分の不満を分類する | 20分 |
| 2 | ×が3つ以上なら転職へ。○が多いなら次へ | 5分 |
| 3 | 社内の異動制度を確認する(就業規則・社内ポータル) | 30分 |
| 4 | 希望する部署の業務内容を調べる | 1時間 |
| 5 | 第5章の型で伝え方を組む | 30分 |
| 6 | 評価面談などの場で伝える | 面談内 |
| 7 | 回答の期限を確認する | 面談内で1分 |
| 8 | 並行して職務経歴書を作っておく | 3時間 |
手順8を並行して進めてください。異動願いの結果を待ってから転職の準備を始めると、そこから2〜3か月かかります。書類だけ作っておけば、結果が出た時点ですぐ動けます。
手順4も飛ばさないでください。希望する部署の業務を調べずに異動願いを出すと、「その部署が何をしているか分かっていない」と受け取られます。可能なら、その部署の人に一度話を聞いてください。
9. よくある質問
異動願いを出すと評価が下がりますか
制度として異動希望の仕組みがある会社では、下がることは基本的にありません。制度がない会社で、上司に直接相談する場合は、伝え方に配慮が必要です。第5章の型を使ってください。
異動願いは何回まで出せますか
制度によります。年1回の自己申告制度なら年1回、社内公募なら募集のたびに応募できます。
直属の上司を飛ばして人事に相談していいですか
原則として上司が先です。ただしハラスメントなど上司に関わる事情がある場合は、人事に先に相談する選択肢があります。
異動先の部署に知り合いがいる場合、先に話していいですか
制度の形によります。社内公募なら、応募前に業務内容を聞くのは自然です。ただし「異動願いを出す」ことを先に広めるのは避けてください。
異動が決まるまでどのくらいかかりますか
社内公募なら1〜3か月、自己申告制度なら次の人事異動の時期(半年〜1年後)が目安です。会社によって大きく異なります。
転職活動をしていることは会社に言うべきですか
言う必要はありません。異動願いと転職活動は別の話として進めて構いません。
異動願いを出したあとに転職を決めたら
異動の話が進んでいる場合、早めに辞退の意思を伝えてください。異動先の部署も準備を進めている可能性があります。
第二新卒で異動願いを出すのは早すぎますか
在籍1年を超えていれば、出すこと自体は不自然ではありません。ただし「今の部署でまだ十分にやっていない」と受け取られる可能性はあるので、第5章の1つめ(やってきたこと)を具体的に書いてください。
10. まとめ:今週やる3つのこと
転職を決める前に、社内で動かせる範囲があるかどうかを確かめる価値があります。
1つめ、第2章の表で自分の不満を分類する。異動で消えるものと消えないもの。×が3つ以上なら、異動を検討せず転職に進んで構いません。所要20分。
2つめ、社内の異動制度を確認する。社内公募があるか、自己申告制度があるか。就業規則か社内ポータルで調べられます。所要30分。
3つめ、異動願いを出すかどうかに関わらず、職務経歴書を作る。異動願いの結果を待ってから準備を始めると、そこから2〜3か月かかります。並行して進めてください。所要3時間。
異動願いは、通らなくても会社が自分をどう見ているかが分かるという価値があります。
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この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。