障害対応の動き方|未経験エンジニアが最初に覚える5つの順番【2026年版】
現場に入って数か月、まだ開発に慣れてきたところで「システムが止まっています」という連絡が飛んでくる。チャットが急に動き出し、先輩たちが短い言葉でやり取りを始める。何が起きているのか分からないまま、自分だけ何をすればいいか分からない。
障害対応は、学習中にはまず経験できない領域です。個人で作るアプリには利用者がおらず、止まっても誰も困らない。だから現場に入って初めて出会うことになり、しかもその場は最も緊張感が高い。
この記事では、未経験エンジニアが障害対応で何をして、何をしないかを順番に整理します。目的は障害を自分で直せるようになることではなく、事態を悪化させずにチームの役に立つことです。
1. 結論:最初にやるのは「見る・書く・伝える」
技術力を発揮する場面ではありません。最初に求められるのは別のことです。
| やること | 中身 | なぜ価値があるか |
|---|---|---|
| 見る | 症状と発生時刻を確認する | 事実がないと原因が絞れない |
| 書く | やり取りと時刻を記録する | 後の報告と再発防止に使う |
| 伝える | 分かったことを共有する | 重複した調査を防ぐ |
とくに「書く」は、経験の浅い人が最も貢献できる役割です。対応している人は手を動かすので記録を取る余裕がありません。誰が何時に何をしたかを残す人がいると、後の報告書作成が劇的に楽になります。
2. 絶対にやらないこと
先に禁止事項を押さえておくほうが安全です。
| やらないこと | 理由 |
|---|---|
| 独断で設定を変える | 原因の特定が不可能になる |
| 独断で再起動する | 証拠が消える、状況が悪化する |
| データを削除・修正する | 取り返しがつかない |
| 顧客や社外に自分の判断で連絡する | 会社としての説明とずれる |
| 推測を事実として共有する | 調査の方向が狂う |
「直そうとしないこと」が、経験の浅いうちの最も重要な行動指針です。良かれと思って再起動した結果、原因を示すログが消えて調査が振り出しに戻る——これは実際によく起きます。何かを変える必要があるなら、必ず先に声をかけてから行います。
推測と事実を分ける
「たぶんデータベースが原因です」と言ってはいけません。「データベースの応答時間が◯時◯分から伸びています」が事実で、原因はまだ分かりません。この区別ができない人が入ると、チーム全体が誤った方向を調べることになります。
3. 最初の5分でやること
連絡を受けたら、この順で動きます。
| 順 | やること | 具体的に |
|---|---|---|
| 1 | 手を止める | 今やっている作業を保存して中断 |
| 2 | 連絡先の場に入る | 障害対応のチャンネルや通話に参加 |
| 3 | 状況を読む | これまでのやり取りを最初から読む |
| 4 | 役割を聞く | 「何をすればよいですか」と一言 |
| 5 | 記録を開始する | 時刻つきでメモを取り始める |
4番目を飛ばして勝手に調べ始めるのが、よくある失敗です。誰が何を調べているか分からないまま各自が動くと、同じ場所を二重に調べたり、必要な調査が抜けたりします。一言聞くだけで、チームとして機能します。
4. 記録の取り方
障害対応の記録は、後で必ず必要になります。
| 記録する項目 | 書き方 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 発生時刻 | 最初に気づいた時刻と、通報の時刻 | 影響範囲の算定 |
| 症状 | 何がどう動かないか | 原因の絞り込み |
| やったこと | 誰が何時に何をしたか | 復旧手順の再現 |
| 変化 | 操作の前後で何が変わったか | 因果関係の確認 |
| 復旧時刻 | 正常に戻った時刻 | 報告書に必須 |
時刻を必ず入れてください。「再起動したら直った」ではなく「14:32に再起動、14:35に応答が正常化」と書く。この差が、原因究明で効いてきます。記録の残し方一般は議事録と資料作成|第二新卒が最初に評価される仕事の考え方が使えます。
記録は誰かに読まれる前提で書く
障害の記録は、その場のメモで終わりません。報告書、再発防止の検討、場合によっては顧客への説明にも使われます。感情や推測は入れず、事実だけを時系列で並べるのが原則です。
5. 自分が調査を任されたとき
「ログを見てもらえますか」と頼まれることがあります。その場合の進め方です。
手順
- 何を探すのかを確認する(時間帯、対象、キーワード)
- 見つかったものを、そのまま貼る(要約しない)
- 見つからなかった場合も報告する
- 判断は自分でせず、事実だけを渡す
3番目が重要です。「見つかりませんでした」も立派な情報で、その範囲は調査済みだと分かります。黙っていると、誰も調べていないのと同じ扱いになります。
要約しない理由
ログを自分の言葉でまとめると、重要な情報が落ちます。経験の浅いうちは、何が重要かの判断がつきません。長くても原文のまま渡し、必要なら相手に絞ってもらうのが安全です。質問と報告の型はエンジニアの質問の仕方|未経験・第二新卒が詰まったときに30分で先へ進む型にまとめています。
6. 復旧した後にやること
障害は復旧して終わりではありません。むしろここからが本番です。
| やること | タイミング | 目的 |
|---|---|---|
| 記録を整理する | 当日中 | 報告書の材料にする |
| 時系列を確定させる | 当日中 | 関係者の記憶が新しいうちに |
| 振り返りに参加する | 数日以内 | 原因と再発防止を決める |
| 自分の学びを残す | その週のうちに | 次に同じことが起きたとき使う |
振り返りの場では、犯人探しをしないのが原則です。個人の不注意ではなく、なぜその不注意が事故につながる仕組みだったのかを見る。ここを取り違えると、次から誰も正直に報告しなくなります。
自分の学びの残し方
「何が起きたか」より「どこを見れば分かったか」を残すと再利用できます。調査に使ったコマンド、確認した画面、参照した資料。次に似た症状が出たときに、そのまま辿れる形にしておくと価値が高くなります。
7. 当番制がある場合
運用の当番に入ると、時間外の連絡を受ける立場になります。
| 確認しておくこと | 理由 |
|---|---|
| 自分が判断してよい範囲 | 独断で動く範囲を明確にする |
| エスカレーションの相手と順番 | 手に負えないときに誰を呼ぶか |
| 手順書の場所 | 夜間に探し回らないため |
| 連絡手段と応答の期限 | 何分以内に反応すべきか |
| 当番の手当と代休の扱い | 労働時間として記録される範囲 |
最初の当番に入る前に、この5つは必ず確認してください。とくにエスカレーションの相手は、名前と連絡手段まで具体的に把握しておくこと。夜間に「誰を呼べばいいか分からない」が最も困る状況です。当番や夜勤の実態はエンジニアの夜勤と当番|実態と面接で確認する項目にまとめています。
なお、時間外の待機や呼び出しの扱いは労働時間の記録に関わります。ここに書いているのは一般的な整理であり、個別の取り扱いは勤務先の規程や労働基準監督署などの専門機関に確認してください。記録の残し方は残業の申請と記録|第二新卒が自分を守る残し方を参考にしてください。
8. 障害対応の経験は転職で効く
この経験は、職務経歴書に書ける材料になります。
| 薄い書き方 | 厚い書き方 |
|---|---|
| 障害対応を経験 | 月◯件の障害の一次対応を担当し、記録と報告書の作成を担当 |
| 復旧作業に参加 | 調査手順を手順書化し、対応時間の短縮に寄与 |
| 運用業務を担当 | 当番として時間外の一次切り分けを担当 |
評価されるのは「直したこと」より「仕組みに戻したこと」です。手順書を作った、記録の様式を整えた、再発防止の提案をした。ここが書けると、運用から開発や設計側へ移るときの材料になります。移り方は運用保守から開発へ移る|第二新卒が現職で作れる材料と移り方の順番、信頼性を扱う職種はSREとは何をする仕事か|第二新卒がインフラから移るための道筋にまとめています。
9. よくある質問
障害中に何もできないのが申し訳ないです
経験が浅い時期はそれが普通です。記録を取る、状況を整理する、他の作業を引き取るといった形で貢献できます。「何をすればよいですか」と聞ける人のほうが、勝手に動く人よりチームには有用です。
自分のコードが原因かもしれないと思ったら
すぐに伝えてください。可能性の段階でも共有する価値があります。責任を問われることを恐れて黙っていると、原因の特定が遅れ、影響が広がります。心当たりがある人からの情報は、調査の速度を大きく上げます。
障害対応の連絡が来ても何をしているか分かりません
まず過去のやり取りを最初から読んでください。それでも分からない場合は、その旨を伝えて構いません。「状況を把握できていないので、記録を取る役をやります」と申し出れば、その場で役割が生まれます。
深夜に連絡が来たら必ず対応すべきですか
当番であれば、決められた範囲で対応します。当番でない場合の対応義務は、会社の運用によって異なります。時間外の待機や呼び出しの扱いは労働時間の記録に関わる部分なので、規程を確認し、不明点は上司や専門機関に確認してください。
復旧させたら早く報告すべきですか
復旧の事実は即座に共有してください。ただし原因の特定は別なので、「復旧しましたが原因は調査中です」と分けて伝えます。復旧と原因究明を混同すると、後から説明が食い違います。
振り返りで自分のミスを言い出しにくいです
事実を時系列で述べるだけで足ります。個人の不注意を責める場ではなく、仕組みを見直す場です。むしろ隠したまま同じ事故が繰り返されるほうが、結果として本人の負担が大きくなります。
記録を取る役は誰でもできる雑用ですか
雑用ではありません。時刻つきの正確な記録は、原因究明にも顧客への説明にも使われる中核の情報です。手を動かしている人には取れない役割なので、担える人がいると対応全体の質が上がります。
障害の少ない環境に移りたいのですが
求人票や面接で、システムの性質と当番の有無を確認するのが確実です。利用者が24時間使うサービスと、業務時間内だけ動くシステムでは負荷がまったく違います。応募前に確認する項目として整理しておくと、入社後のずれが減ります。
10. まとめ:今週やる3つのこと
障害対応で経験の浅い人に求められるのは、直すことではありません。事態を悪化させず、事実を残し、チームの動きを助けること。ここができれば、十分に役割を果たしています。
今週やる3つのこと
① 自分の現場で「障害時にまずどこに集まるか」を確認する
② 独断でやってはいけない操作を、上司や先輩に聞いて明文化する
③ 記録用のテンプレート(時刻・症状・やったこと・変化)を手元に作る
準備してあるかどうかで、最初の障害での動き方はまったく変わります。起きてから考えるのでは間に合いません。
この先、読むべき記事
- エンジニアの夜勤と当番|実態と面接で確認する項目(当番制の実際)
- エンジニアの質問の仕方|未経験・第二新卒が詰まったときに30分で先へ進む型(報告と質問の型)
- 運用保守から開発へ移る|第二新卒が現職で作れる材料と移り方の順番(経験を次につなげる)
- 仕事で大きなミスをしたとき|第二新卒が立て直す順番(自分が原因だったとき)
- 議事録と資料作成|第二新卒が最初に評価される仕事(記録を残す技術)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。