企業の将来性をどう見るか|公開情報から読む手順【2026年版】
「この会社に将来性はあるのか」
応募する前に、誰もが一度は考えることです。しかし、判断の方法を教わる機会はほとんどありません。
そして、多くの人は「業界の話」で判断しようとします。「この業界は伸びている」「あの業界は縮小している」という形です。
これは、判断としては粗すぎます。縮小している業界でも伸びている企業はあり、伸びている業界でも撤退する企業はあります。
この記事では、公開情報のどこを見るか、上場と非上場での違い、面接で聞くこと、そして判断できないことの線引きを整理します。
1. 結論:見るのは3つ
①何で稼いでいるか。売上がどこから来ているかを、まず把握してください。ここが分からないと、他の情報が読めません。
②その稼ぎ方が続くか。顧客が特定の1社に集中していないか、事業が1つだけでないか。
③人が増えているか、減っているか。従業員数の推移は、最も分かりやすい指標です。
「業界が伸びているか」ではなく、その企業の稼ぎ方を見てください。
2. 何で稼いでいるかを把握する
| 見る場所 | 分かること |
|---|---|
| 企業のサイトの事業紹介 | 何を売っているか |
| サービスや製品のページ | 誰に売っているか |
| 導入事例・お客様の声 | 実際の顧客の業種と規模 |
| ニュースリリース | 最近の動き |
| 採用ページの事業説明 | 力を入れている領域 |
最も情報があるのは、導入事例です。
どういう業種の、どういう規模の企業が顧客なのかが分かります。そして、顧客の業種が広いほど、特定の業界の影響を受けにくくなります。
導入事例が数件しかない、または特定の1業種に偏っている場合は、面接で確認する価値があります。
事業が1つか、複数か
| 状態 | 読めること |
|---|---|
| 事業が1つ | その事業に依存している |
| 事業が複数 | リスクが分散している |
| 新しい事業を始めている | 変化に対応しようとしている |
| 主力の事業が明確 | 何で稼いでいるかが分かりやすい |
事業が1つであること自体は問題ではありません。集中しているぶん、強いこともあります。
確認したいのは、その事業がどのくらい続いているかです。10年続いている事業と、始めて2年の事業では、安定性が違います。
3. 従業員数の推移を見る
最も分かりやすい指標が、従業員数の推移です。
| 状態 | 読めること |
|---|---|
| 増えている | 事業が拡大している |
| 横ばい | 安定している、または停滞 |
| 減っている | 縮小、または効率化 |
| 急に増えた | 拡大か、入れ替わりが多いか |
4番目の判断が難しい部分です。
従業員数が増えていても、採用と退職が同時に多い場合があります。この場合、実際には入れ替わっているだけです。
見分ける方法は、求人の掲載履歴です。同じ職種が毎年同じ時期に出ている場合、入れ替わりが多い可能性があります。
確認できる場所
| 情報 | 場所 |
|---|---|
| 現在の従業員数 | 求人票、企業のサイトの会社概要 |
| 推移 | 企業のサイト、採用ページ |
| 設立年 | 会社概要 |
| 拠点の数 | 会社概要 |
過去の従業員数が分からない場合は、面接で聞いてください。「従業員数は、3年前と比べてどう変化していますか」という質問で分かります。
4. 編集長の実体験:業界で判断して外した
私が第二新卒で活動していたとき、「業界の将来性」で応募先を絞っていました。
伸びている業界の企業を優先し、縮小していると言われる業界の求人は最初から外していました。
エージェントの担当者に、こう言われました。
担当者「業界で絞ると、良い企業を落としますよ」
私「でも、縮小している業界に入るのは……」
担当者「その業界の中で、シェアを伸ばしている企業もあります。逆に、伸びている業界でも、撤退する企業はあります」
紹介された1社は、私が外していた業界の企業でした。
担当者「ここは、業界全体は縮小していますが、この会社は5年で従業員数が倍になっています。競合が撤退した分を取っているんです」
面接で確認しました。
私「事業の状況について伺えますか」
面接官「業界全体は縮小しています。ただ、その中で当社は取引先を増やしています。撤退した企業の顧客を引き継いでいる形です」
私「その動きは、あとどのくらい続く想定ですか」
面接官「あと数年は続くと見ています。その後については、隣接する領域への展開を進めています」
業界の話ではなく、企業の話でした。
「業界が縮小しているから」で外していたら、この情報にはたどり着きませんでした。
なお、拠点や店舗の数の推移も、同じように使えます。増えているか、閉じているかで、事業の方向が見えます。
5. 上場と非上場の違い
| 項目 | 上場企業 | 非上場企業 |
|---|---|---|
| 財務の情報 | 公開されている | 原則として非公開 |
| 事業の説明 | 詳しい資料がある | 企業のサイトのみ |
| 見られる情報の量 | 多い | 限られる |
| 判断の材料 | 数字で見られる | 面接で聞くしかない |
上場企業であれば、公開されている資料から売上の構成や推移が分かります。
非上場企業では、公開されている情報が限られます。この場合、面接で聞くしかありません。
そして、日本の企業の大半は非上場です。つまり、多くの応募先では、面接での確認が主な手段になります。
上場企業の資料を見る場合
専門的な知識がなくても、次の2つは読めます。
- 売上の推移(増えているか、減っているか)
- セグメント別の売上(どの事業で稼いでいるか)
この2つだけで、何で稼いでいて、その稼ぎが増えているかが分かります。
利益率や財務の詳細まで見る必要はありません。第二新卒の判断には、上の2つで十分です。
なお、上場企業でも、日本法人や子会社の場合は個別の情報が公開されていないことがあります。その場合は、非上場企業と同じように面接で確認してください。
6. 面接で聞く5項目
| 質問 | 分かること |
|---|---|
| 「主力の事業と、その売上の比率を教えてください」 | 何で稼いでいるか |
| 「主なお客様の業種の構成は」 | 顧客の分散 |
| 「従業員数は3年前と比べてどう変化していますか」 | 事業の状況 |
| 「今後3年で力を入れる領域は何ですか」 | 方向性 |
| 「その中で、この職種の役割は」 | 自分の位置づけ |
5番目まで聞いてください。
事業の方向性が分かっても、その中で自分の職種がどう位置づけられるかが分からなければ、判断の材料になりません。
「今後は〇〇に力を入れます」と言いながら、応募している職種がその領域と関係ない場合があります。
志望動機にも使える
事業の理解は、そのまま志望動機の材料になります。
「導入事例を拝見して、〇〇業界のお客様が中心だと理解しました。前職で同じ業界を担当していたため、顧客側の事情を理解したうえで提案できると考えています」
調べたことを志望動機に入れると、他の応募者と差がつきます。
多くの応募者は、企業のサイトのトップページしか読んでいません。導入事例まで読んで応募する人は、それだけで少数です。
7. 判断できないことの線引き
| 判断できること | 判断できないこと |
|---|---|
| 何で稼いでいるか | 5年後に伸びているか |
| 顧客が分散しているか | 業界がどうなるか |
| 従業員数が増えているか | 経営の判断が正しいか |
| 事業の方向性の説明があるか | その計画が実現するか |
右側は、応募者には判断できません。そして、企業の中にいる人にも判断できないことがあります。
だから、将来性の判断に時間をかけすぎないでください。
確認すべきは、「今、何で稼いでいて、それが説明できるか」までです。
説明できるかどうかが指標
面接で事業について聞いたとき、具体的に答えられるかどうかが、実は最も分かりやすい指標です。
| 答え方 | 読めること |
|---|---|
| 数字と構成を具体的に説明する | 経営が状況を把握している |
| 抽象的な話に終始する | 説明する準備がない、または把握していない |
| 「これから伸びます」だけ | 根拠が示されていない |
説明が具体的な企業は、少なくとも状況を把握しています。
応募の段階では簡易に
応募する10社すべてに1時間かけると、10時間になります。応募の段階では、事業紹介を5分読む程度で構いません。
詳しく調べるのは、書類が通って面接に進んだ企業だけです。その段階なら、時間をかける価値があります。
8. 進め方と時間配分
| 段階 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 事業の確認 | 20分 | サイトの事業紹介と導入事例 |
| 従業員数の確認 | 10分 | 会社概要と求人票 |
| 上場企業なら資料 | 20分 | 売上の推移とセグメント |
| 質問の準備 | 10分 | 5項目から3つを選ぶ |
| 面接での確認 | 面接内 | 逆質問の時間に |
1社あたり1時間ほどです。応募前に全社やる必要はありません。面接に進んだ企業だけで十分です。
9. よくある質問
業界の将来性で判断してはいけませんか
業界だけで判断すると、良い企業を落とします。縮小している業界の中で伸びている企業もあります。業界は参考にとどめ、企業単位で見てください。
非上場企業はどう判断しますか
面接で聞くしかありません。「主力の事業」「顧客の構成」「従業員数の推移」の3つを聞けば、おおよその状況が分かります。
財務の知識がありません
売上の推移と、事業別の売上の2つだけで足ります。利益率や財務の詳細まで見る必要はありません。
面接で事業のことを聞いていいですか
むしろ、聞いたほうが評価されます。事業への関心を示す質問として、自然に受け取られます。
従業員数が減っている企業は避けるべきですか
減っている理由を確認してください。事業の縮小の場合もあれば、効率化や事業の売却の場合もあります。面接で聞いてください。
「これから伸びます」と言われました
根拠を聞いてください。「どういう理由で、どのくらいの規模を想定していますか」と聞いて、答えが具体的かどうかを見てください。
口コミサイトの情報は使えますか
参考にはなりますが、偏りがあります。不満を持つ人が書きやすいため、悪い情報が集まりやすくなります。事業の状況は、公開情報と面接で確認してください。
どこまで調べればいいですか
1社1時間で十分です。それ以上かけても、判断できないことは判断できません。応募先を絞る作業に時間を使ってください。
10. まとめ:今週やる3つのこと
企業の将来性は、「業界」ではなく「その企業が何で稼いでいるか」で見てください。
1. 企業のサイトで、事業紹介と導入事例を読む。20分です。何を、誰に売っているかが分かります。顧客の業種が広いほど、特定の業界の影響を受けにくくなります。
2. 従業員数を確認する。現在の人数と、可能なら推移。増えているか減っているかが、最も分かりやすい指標です。
3. 面接で3つ聞く。「主力の事業と売上の比率」「顧客の業種の構成」「従業員数の3年間の変化」。答えの具体性そのものが、判断材料になります。
5年後を予測しようとしないでください。今の状況を把握できるかまでが、応募者にできることです。
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この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。