スタートアップの資金調達フェーズ|第二新卒が入社前に読む働き方の違い【2026年版】
〜同じ「スタートアップ」でも、入る時期で経験できることが変わります〜
スタートアップへの転職を考えるとき、多くの人は事業内容と社風を見ます。ただ、それと同じくらい働き方を左右するのが「今どの資金調達フェーズにいるか」です。
社員10名の会社と、100名になった会社では、同じ社名でも別の組織です。任される範囲も、教えてもらえる量も、求められる自走の度合いも変わります。
第二新卒にとって重要なのは、「どのフェーズなら自分が育つか」を見極めることです。早すぎる段階に入って教育がないまま消耗する例も、成熟した段階に入って裁量を期待していたのに歯車になる例も、どちらも実際に起きています。
この記事では、フェーズごとの違いと、外から調べる方法を整理します。
1. 結論:見るべきは3点
スタートアップを見るときの3つの軸
① 調達フェーズで、任される範囲と教育の量が変わる
② 第二新卒に向くのは、体制ができ始めた段階(人数が数十名〜)
③ 調達状況は公開情報から調べられる(面接前に確認できる)
②が結論です。ごく初期の段階は、教える人がいないため未経験者の受け入れ体制がありません。一方で、組織が固まりきった段階では大企業に近い分業になります。
その間、つまり「仕組みを作っている最中」の段階が、第二新卒にとって最も学びが多い時期です。
2. フェーズごとの違い
| フェーズ | 人数の目安 | 組織の状態 | 第二新卒への向き |
|---|---|---|---|
| シード | 数名〜10名台 | 役割分担がほぼない | 教育体制がなく、難しい |
| シリーズA | 20〜50名程度 | 部署ができ始める | 条件次第で可 |
| シリーズB | 50〜150名程度 | 仕組みを整備中 | 最も向く |
| シリーズC以降 | 150名〜 | 分業が進む | 安定するが裁量は減る |
人数はあくまで目安で、事業内容によって大きく変わります。受託型の事業では早い段階から人数が増えますし、開発中心の事業では長く少人数のままです。
重要なのは人数そのものではなく、「教える人がいるか」と「仕事の型があるか」です。
シード期が難しい理由
シード期は、事業そのものがまだ固まっていません。
この段階で起きること
・事業の方向が数か月で変わることがある
・採用は「今すぐ動ける人」が優先される
・教育に割ける時間がほぼない
・自分で仕事を定義しないと何も進まない
これは能力の問題ではなく、組織の構造の問題です。経験のある人には面白い環境ですが、最初の職種転換をする第二新卒には負荷が高くなります。
シリーズB前後が向く理由
この段階では、事業に一定の見通しが立ち、組織を作る動きが始まります。
「仕組みがまだない仕事を、作りながら回す」経験ができるのがこの時期です。これは大企業では得にくく、かつ後の職務経歴書で強い材料になります。
ベンチャーと大企業の比較軸はベンチャーと大企業の選び方|第二新卒が7つの軸で比べる判断表にまとめています。
3. 調達フェーズをどう調べるか
これは面接前に、公開情報から確認できます。
調べる手順
① 企業の公式サイトのニュース欄(調達の発表が載っていることが多い)
② プレスリリース配信サービスでの社名検索
③ 採用ページの社員数の記載
④ 求人票の募集職種の幅(多職種を同時募集していれば拡大期)
⑤ 採用ブログや社員インタビューの更新頻度
①と②で、いつ、どの段階の調達をしたかがわかります。直近の調達から時間が経っている場合、次の調達に向けて成果を求められる時期である可能性があります。
公開情報から企業を読む手順は企業の将来性をどう見るか|公開情報から読む手順、採用ページの読み方は企業の発信から実態を読む|第二新卒がSNS・ブログ・プレスリリースで確かめる5点にまとめています。
4. 話を聞いた例:入る時期を1年ずらした人
知人に、あるスタートアップに興味を持ちながら、入社を1年遅らせた人がいます。
最初に話を聞いた時点で、その会社は社員15名程度でした。面接は好感触でしたが、話を聞くうちに気づいたことがありました。
面接で分かったこと
・自分の職種で先輩にあたる人が1名だけだった
・その1名も入社半年だった
・教育の仕組みは「一緒にやりながら覚える」だった
・事業の方向を検討中という説明があった
その人は、未経験の職種に移るタイミングだったため、「教わる相手がいない状態で職種を変えるのは負荷が高い」と判断しました。
1年後、その会社が調達を実施して人数が倍になった時期に、改めて応募して入社しました。そのときには職種ごとのチームができており、教育の担当も決まっていたそうです。
会社を諦めるのではなく、入る時期を選ぶという選択肢があります。
5. 面接で聞くべき7項目
フェーズを確かめるには、直接聞くのが確実です。
聞く7項目
① 直近の調達はいつか
② この1年で社員数はどう変わったか
③ 配属予定のチームは何名か
④ 入社後3か月で何を担当するか
⑤ 教育やオンボーディングの仕組みはあるか
⑥ 直近1年で辞めた人の理由
⑦ 今期の最優先事項は何か
③と⑤が、第二新卒にとって最も重要です。
配属先が1〜2名のチームで、教育の仕組みが「一緒にやりながら」であれば、自走できる準備が必要です。それが悪いわけではありませんが、覚悟の有無で結果が変わります。
面接での逆質問の作り方は面接の逆質問|第二新卒がそのまま使える30例と聞いてはいけない質問を参照してください。
6. ストックオプションをどう考えるか
スタートアップの求人では、ストックオプションが条件に含まれることがあります。
| 項目 | 押さえること |
|---|---|
| 性質 | 将来、株式を取得できる権利 |
| 実際の価値 | 会社の状況によって変わり、確定していない |
| 権利行使の条件 | 在籍期間などの条件が付くことが多い |
| 年収との関係 | 現金の年収とは別に考える必要がある |
重要なのは、これを現在の年収の一部として計算しないことです。
生活は現金の給与で成り立ちます。ストックオプションは「もし将来こうなれば」という性質のものとして、現金の条件とは切り離して判断するのが安全です。
なお、税務上の取り扱いを含め、この分野には専門的な判断が必要な点があります。この記事の内容は一般的な整理であり、個別の条件については専門機関に確認してください。
年収の判断軸は年収が下がる転職の判断基準|第二新卒が3年で戻せるかを見るにまとめています。
7. リスクをどう見積もるか
| 見るべき点 | 確認方法 |
|---|---|
| 事業の収益源 | 何で売上が立っているか説明できるか |
| 顧客の集中度 | 特定の1社に依存していないか |
| 直近の調達からの経過 | 期間が空いていないか |
| 離職の状況 | 直近1年の退職者について聞く |
| 給与の支払い実績 | 遅延がないか(聞きにくいが重要) |
「事業の収益源を、面接官が具体的に説明できるか」は有効な確認方法です。
説明が抽象的なまま終わる場合、社内でも共有されていない可能性があります。逆に、数字を交えて説明できる会社は、組織として状態を把握しています。
口コミサイトの使い方は転職の口コミサイトの使い方|第二新卒が偏りを踏まえて読む5つの基準を参照してください。
8. 入る場合の準備
フェーズが早い会社に入ると決めた場合の準備です。
入社前にやっておくこと
① 3か月後に何ができていればよいかを、面接で握っておく
② 教わる相手が誰かを確認しておく
③ 自分で調べて進める癖をつけておく
④ 生活の固定費を見直しておく
①は入社後の評価を守るためにも重要です。期待値が曖昧なまま入ると、何をもって成果とするかが定まりません。
入社直後の動き方は入社後の3ヶ月|第二新卒がつらい時期を抜ける順番にまとめています。
9. よくある質問
未経験でもスタートアップに入れますか
入れます。ただしフェーズによります。教育の仕組みがある段階を選ぶほうが、職種転換の成功率は上がります。
ベンチャーとスタートアップは違うのですか
日本では近い意味で使われますが、スタートアップは「急成長を前提に外部資金を入れている会社」を指すことが多くなります。判断軸はベンチャーと大企業の選び方|第二新卒が7つの軸で比べる判断表を参照してください。
年収は下がりますか
求人によります。調達直後の会社は採用に予算を割いているため、条件が良い場合もあります。一方で、現金の年収を抑えてストックオプションで補う設計の会社もあります。
会社がなくなるリスクはどう考えればいいですか
ゼロにはできません。ただし第二新卒の年代であれば、そこで得た経験を次に持ち運ぶことは可能です。重要なのは、在籍中に持ち運べる経験を作れるかどうかです。
何を持ち運べる経験と考えればいいですか
「仕組みがない状態から作った」経験です。業務フローを整備した、採用の仕組みを作った、といった話は、規模の大小に関わらず評価されます。
面接で調達について聞いても失礼になりませんか
なりません。公開情報として発表されていることについて聞くのは、企業研究をしている証拠として受け取られます。聞き方は「直近の調達を拝見しました。今期の重点はどこですか」といった形にします。
社員数が急に増えている会社は良い会社ですか
拡大していること自体は前向きな材料ですが、受け入れ体制が追いついていない場合もあります。③の「配属チームの人数」と⑤の「教育の仕組み」を必ず確認してください。
大企業からの転職と比べて不利になりますか
その後の転職において、スタートアップでの経験が不利に働くことは多くありません。ただし「何をやったか」を説明できないと、規模の小ささだけが残ります。担当範囲を数字で書けるようにしておいてください。
10. まとめ:今週やる3つのこと
同じ会社でも、入る時期で得られる経験が変わります。フェーズは、面接前に調べられます。
今週やる3つのこと
① 気になる企業の公式サイトで、調達の発表を探す
② 採用ページで社員数と募集職種の幅を確認する
③ 面接で聞く7項目のうち、③と⑤を必ず入れる
③を聞かずに入社を決めると、入社後の負荷が読めません。配属チームの人数と教育の仕組みは、遠慮せずに聞いてください。
この先、読むべき記事
- ベンチャーと大企業の選び方|第二新卒が7つの軸で比べる判断表(規模で比べる判断軸)
- 企業の将来性をどう見るか|公開情報から読む手順(外から調べる方法)
- 転職の口コミサイトの使い方|第二新卒が偏りを踏まえて読む5つの基準(評判の読み方)
- 年収が下がる転職の判断基準|第二新卒が3年で戻せるかを見る(条件面の判断)
- 面接の逆質問|第二新卒がそのまま使える30例と聞いてはいけない質問(聞き方の設計)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。