IR担当という職種|第二新卒が知る仕事の実際と未経験からの入口【2026年版】
上場企業の管理部門の求人を見ていると、この職種名が出てきます。
「IR」。
Investor Relations の略で、日本語では投資家向け広報と呼ばれます。
ただし、この訳語だけでは仕事の中身が分かりません。
IRの仕事は、自社の状況を、投資家が判断できる形で伝えることです。
決算の数字、事業の状況、今後の見通し。これらを資料にまとめ、説明会で説明し、投資家からの質問に答えます。
つまり、経理と広報の間にある仕事です。
数字を扱う点では経理に近く、外部に伝える点では広報に近い。この両方が必要になります。
そして、第二新卒の未経験からの直接の入口は、かなり狭い。
ただし、道筋はあります。この記事では、仕事の実際、広報・経理との違い、隣接職種からの経路、求められる力を整理します。
1. 結論:この職種を検討する判断は3点
1. 数字を扱うことが苦にならないか。決算の数字が業務の中心です。
2. 同じ内容を、相手によって説明し分けられるか。
3. 上場企業(またはこれから上場する企業)に絞る前提を受け入れられるか。
3番目が前提条件です。
IRは、株式を公開している会社にしか存在しない職種です。
つまり、応募先が上場企業とその予備軍に限定されます。
この時点で、求人の絶対数がかなり少なくなります。
| 前提 | 内容 |
|---|---|
| 対象企業 | 上場企業、上場準備中の企業 |
| 部門の人数 | 1〜5名程度のことが多い |
| 求人の頻度 | 多くない |
| 経験者採用 | 中心 |
2. 仕事の実際
1年の流れで見ると、決算の周期に合わせて動きます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 決算の締め後 | 決算短信・説明資料の作成 |
| 決算発表 | 説明会の運営、資料の公開 |
| 発表後 | 投資家・アナリストとの面談 |
| 通年 | 問い合わせ対応、開示資料の準備 |
| 年1回 | 株主総会の準備・運営 |
四半期ごとに、この山が来ます。
だから、繁忙期が年4回あります。
業務時間の配分で見ると、資料の作成が最も多い。
資料作成が業務の中心
決算説明資料は、数字を並べるだけの資料ではありません。
「なぜこの数字になったか」を説明する資料です。
そのため、事業部門や経理から情報を集め、それを外部に説明できる形に整理する作業が中心になります。
| 集める先 | 内容 |
|---|---|
| 経理 | 確定した数字 |
| 事業部門 | 数字の背景、今後の見通し |
| 経営層 | 方針、伝えたいこと |
| 法務 | 開示に関する確認 |
社内の調整が業務のかなりの部分を占めます。
この点で、社内調整の経験は直接的に活きます。
3. 広報・経理との違い
| 項目 | IR | 広報 | 経理 |
|---|---|---|---|
| 相手 | 投資家、アナリスト | メディア、一般 | 社内、税務署等 |
| 扱うもの | 決算数字、事業の見通し | 事業のニュース | 会計処理 |
| 求められる正確さ | 極めて高い | 高い | 極めて高い |
| 制約 | 開示のルール | 少ない | 会計基準 |
4行目が、この職種の特徴です。
IRでは、開示に関するルールを守る必要があります。
特定の投資家にだけ未公表の重要な情報を伝えることは、認められていません。
だから、「何を、いつ、どう伝えるか」が厳密に管理されます。
この制約の中で伝える必要があるため、広報とは進め方がかなり違います。
なお、開示に関するルールの詳細は、法令や取引所の規則で定められています。実務では、法務部門や外部の専門家と連携して判断します。
4. 未経験からの入口
直接の入口は狭い。理由は2つあります。
1つ目は、求人の絶対数が少ないこと。
2つ目は、数字と開示の両方の理解が必要なため、経験者が優先されること。
現実的な道筋は次の3つです。
| 道筋 | 内容 |
|---|---|
| 社内異動 | 経理・広報・経営企画から |
| 隣接職種から転職 | 経理、経営企画、証券・金融 |
| 上場準備中の企業 | 体制を作る段階で募集がある |
3行目が、第二新卒には現実的です。
上場を準備している企業では、IRの体制をこれから作ります。
この段階では、経験者を確保できないことも多く、経理や経営企画の経験がある人を採用して育てる場合があります。
隣接職種からの接続
| 職種 | IRへの接続 |
|---|---|
| 経理 | 決算数字の理解、開示資料の作成経験 |
| 経営企画 | 事業計画、数字の分析 |
| 証券・金融 | 投資家側の視点、財務諸表の読解 |
| 広報 | 外部への説明、資料の作成 |
| コンサル | 資料の作成、説明の構成 |
3行目は見落とされがちですが、有力です。
証券会社や金融機関で財務諸表を読んでいた経験は、IRで直接活きます。
投資家がどこを見ているかを知っているためです。
「前職では法人向けの融資審査を担当し、決算書から事業の状況を読み取る業務を行っていました。投資家がどの数字に注目するかを、審査する側から見てきた経験があります」
この翻訳は、IRの応募で強く効きます。
5. 求められる力
| 力 | 具体的に何をするか |
|---|---|
| 数字を読む | 決算数字の意味を理解する |
| 数字を説明する | なぜその数字かを言葉にする |
| 資料を作る | 分かりやすい構成にまとめる |
| 社内を動かす | 各部門から情報を集める |
| 正確さを守る | 開示のルールに従う |
2番目が最も評価される部分です。
数字を並べるだけなら、経理の資料で足ります。
IRに求められるのは、「売上が前年比で12%増えた」の後に「なぜか」を説明することです。
この説明のためには、事業を理解している必要があります。
「説明し分ける」力
相手によって説明の深さを変える必要があります。
| 相手 | 求める情報 |
|---|---|
| アナリスト | 詳細な数字、前提条件 |
| 機関投資家 | 中長期の戦略 |
| 個人投資家 | 事業の分かりやすい説明 |
同じ内容を、3通りに説明し分ける。
この構造は、営業で相手によって提案を変えた経験と同じです。
前職でこの経験がある人は、それを書いてください。
6. 他業界からの翻訳
前職の経験を、IRの言葉に置き換えてください。
| 前職 | 翻訳できる経験 |
|---|---|
| 経理 | 決算、開示資料の作成 |
| 金融・証券 | 財務諸表の読解、投資家の視点 |
| 営業 | 相手に応じた説明、数字の説明 |
| 広報 | 対外的な発信、資料の作成 |
| 事務・管理 | 資料の正確な作成、期限の管理 |
| コンサル | 構造化、資料の作成 |
3行目に注目してください。
営業経験も、翻訳できます。
「数字を根拠に、相手に説明して納得を得る」という構造は、IRと共通しています。
「前職では法人営業を担当し、提案の際に相手の立場によって説明を変えていました。現場の担当者には運用の変化を、決裁者には費用と効果を中心に説明する形です。同じ内容を相手に応じて説明し分ける進め方は、IRでも必要だと考えています」
ただし、営業経験だけでは足りません。数字を扱った経験を必ず添えてください。
7. 求人の探し方
| 見る場所 | 内容 |
|---|---|
| 職種名 | 「IR」「経営企画(IR含む)」 |
| 会社の状況 | 上場済みか、準備中か |
| 部門の体制 | 人数、他の業務との兼務 |
| 必須要件 | 実務経験の有無 |
| 歓迎要件 | 隣接職種が入っているか |
1行目に注意してください。
IRが単独の職種として募集されることは、多くありません。
「経営企画」「管理部門」の求人の中に、業務の一つとして含まれている場合があります。
職種名で検索するだけでなく、業務内容の欄に「IR」が含まれる求人を探してください。
3行目も重要です。
IRを専任で担当する会社と、経営企画や経理と兼務する会社があります。
第二新卒であれば、兼務の形のほうが入りやすい場合があります。他の業務も担当しながら、IRを学べるためです。
8. キャリアの伸び方
| 進む方向 | 内容 |
|---|---|
| IRの責任者 | 部門の統括、戦略の設計 |
| 経営企画 | 事業計画、経営の意思決定 |
| 財務 | 資金調達、資本政策 |
| 他社のIR | 経験者としての転職 |
4行目が現実的です。
IRは経験者の採用が中心のため、一度経験を積むと転職の選択肢が広がります。
求人数は少ないものの、経験者の供給も少ないためです。
だから、最初に入る難しさに対して、その後の市場価値は高くなりやすい構造があります。
経営に近い位置で働ける
IRは、経営層と直接やり取りする機会が多い職種です。
決算の説明内容は、経営の方針そのものだからです。
第二新卒の年齢帯で経営層と接する機会があるのは、この職種の特徴です。
ただし、その分だけ求められる正確さも高くなります。
9. よくある質問
Q. 未経験でもIRになれますか
直接の入口はかなり狭い職種です。
社内異動か、隣接職種(経理、経営企画、金融)を経由する道筋が現実的です。上場準備中の企業では、育成前提の募集がある場合があります。
Q. 簿記の資格は必要ですか
必須ではありませんが、決算数字を扱うため理解は必要です。
日商簿記2級程度の知識があると、業務の理解が早くなります。
Q. 英語は必要ですか
会社によります。
海外の投資家が多い会社では求められますが、国内の投資家が中心の会社では必須でない場合があります。求人票の要件を確認してください。
Q. 広報とIRはどちらが入りやすいですか
広報のほうが求人数が多く、入口は広い。
広報で経験を積んでからIRに移る道筋もあります。ただし、IRでは数字の理解が必要になるため、その部分は別に補う必要があります。
Q. 残業は多いですか
決算の時期に集中します。
四半期ごとに繁忙期があるため、年4回の山があります。面接で、決算期の稼働を具体的に確認してください。
Q. 上場企業でないと働けませんか
基本的にはそうです。
ただし、上場を準備している企業では、体制を作る段階で募集があります。この段階では未経験からの採用の可能性が比較的あります。
Q. 求人が見つかりません
「経営企画」「管理部門」の求人の業務内容を確認してください。
IRが単独で募集されることは少なく、他の業務と併せて募集される場合が多くあります。
Q. 金融業界の経験は活きますか
強く活きます。
財務諸表を読む経験や、投資家側の視点を持っていることは、IRで直接の武器になります。必ず書いてください。
10. まとめ:今週やる3つのこと
1. 前職で「数字を根拠に、相手に説明した」経験を3つ書き出す。これが翻訳の材料です。
2. 相手によって説明を変えた経験を1つ選ぶ。IRの中核に近い経験です。
3. 「経営企画」「管理部門」の求人の業務内容に、IRが含まれるものを探す。職種名だけで検索しないでください。
入口は狭い職種ですが、経験者の供給も少ないため、一度入ると市場価値は高くなりやすい構造です。
この先、読むべき記事
- 経営企画の自己PR|第二新卒が数字の経験を翻訳する例文6パターン(最も近い経路)
- 広報・PRの自己PR|第二新卒の例文6パターンと発信の数字化(広報側の書き方)
- 経理の自己PR|第二新卒の書類が通る例文6パターンと数字の出し方(経理側の書き方)
- 内部監査という職種|第二新卒が知る仕事の実際と未経験からの入口(管理部門の選択肢)
- 企業の将来性をどう見るか|公開情報から読む手順(開示情報の読み方)
- サステナビリティ関連職へ転職|第二新卒が入口を見つける手順(近い開示の職種)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。