印刷業界へ転職する|第二新卒が紙以外へ広がる事業を知る【2026年版】
〜「紙が減っている業界」という理解だけで判断すると、事業の中身を見誤ります〜
印刷業界と聞くと、多くの人が「縮小している業界」という印象を持ちます。紙の需要が減っているのは事実です。
ただ、この業界の企業の多くは、その前提で事業を変えてきました。パッケージ、建材の表面材、電子部品の部材、そして情報の処理と発送。
「紙に印刷する」という技術を、別の対象に応用してきた歴史があります。
この記事では、事業の分類から整理して、第二新卒が入れる職種をまとめます。
1. 結論:押さえるべきは3点
この業界を考えるときの3つの前提
① 企業によって、主力の事業がまったく違う
② 「紙に印刷する」以外の事業が伸びている企業がある
③ 営業は、顧客の課題を聞いて形にする仕事
①が最も重要です。
同じ「印刷会社」でも、チラシを刷る会社と、包装材を作る会社と、電子部品の部材を作る会社があります。
応募先がどの事業で稼いでいるかを調べずに面接に行くと、話が噛み合いません。
2. 事業の分類
| 分野 | 中身 |
|---|---|
| 商業印刷 | チラシ、カタログ、販促物 |
| 出版印刷 | 書籍、雑誌 |
| パッケージ | 商品の箱、包装材、ラベル |
| ビジネスフォーム | 帳票、伝票 |
| 情報処理・発送 | 請求書などの作成と送付 |
| 建材・生活資材 | 建材の表面材、内装材 |
| 電子部品の部材 | 精密な印刷技術の応用 |
下の3つが、多くの企業で伸びている領域です。
「情報処理・発送」は、大量の書類を作成して送る事業です。企業が自社でやるより、まとめて任せるほうが効率的なため、需要があります。
「建材・電子部品の部材」は、印刷の技術を紙以外に応用した領域です。精密に、大量に、均一に印刷する技術が、そのまま使えます。
パッケージ側は紙・パッケージ業界へ転職する|第二新卒が知る職種と入口、出版側は出版・メディア業界へ転職|第二新卒が編集職以外の入口を知るにまとめています。
「縮小している」の中身
紙の印刷が減っているのは事実です。
ただ、企業ごとに、その減少をどう補っているかが違います。
調べる方法
・公式サイトの事業紹介を見る
・公開されている資料で、事業別の割合を確認する
・直近数年で、何に投資しているかを見る
・採用している職種の種類を見る
4つ目が意外に分かりやすい指標です。
技術者やIT関連の職種を採用している企業は、事業を変えようとしています。
企業の見方は企業の将来性をどう見るか|公開情報から読む手順を参照してください。
3. 職種の全体像
| 職種 | 仕事の中身 | 未経験の可否 |
|---|---|---|
| 法人営業 | 顧客の課題を聞き、提案する | 可能 |
| 制作進行・ディレクション | 納期と品質の管理 | 可能 |
| 生産管理 | 工場の工程を管理する | 可能 |
| 品質管理 | 検査、規格への適合 | 可能 |
| 企画・デザイン | 表現の設計 | 実務経験が必要 |
| 技術・研究 | 材料や工法の開発 | 理系が中心 |
| IT・システム | 情報処理の仕組み | IT経験者 |
法人営業と制作進行が、第二新卒の入口として広い職種です。
制作進行は、顧客とデザイナーと工場の間に立って、納期までに形にする仕事です。段取りの力が評価され、他業界でも通用する経験になります。
「IT・システム」も見落とされています。情報処理の事業を持つ企業では、システムの人材を採用しています。
生産管理の書類は生産管理の自己PR|第二新卒の例文6パターンと納期と在庫の数字化、進行管理の書き方はWebディレクターの自己PR|第二新卒の例文6パターンと進行管理の書き方が参考になります。
4. 営業の実態
この業界の営業は、価格の交渉だけをしているわけではありません。
実際にやること
・顧客が何を伝えたいかを聞く
・それをどういう形にするかを提案する
・費用と納期の見通しを立てる
・デザインと工場の間で調整する
・仕上がりを確認して納品する
3行目と4行目が、実務では大きな比重を占めます。
顧客の要望をそのまま工場に流すと、費用も納期も合いません。実現できる形に翻訳するのが、この仕事の中心です。
そのため、「聞く力」と「調整する力」が評価されます。
5. 話を聞いた例:小売から法人営業へ移った人
知人に、雑貨店の販売職から印刷会社の法人営業へ移った人がいます。
その人が書類に書いたのは、次のような内容でした。
前職から出した材料
・店舗の販促物を、自分で企画して作っていた
・印刷会社に発注し、納期と費用を調整していた
・作った販促物ごとに、売上の変化を見ていた
・仕上がりが想定と違ったときの対応をしていた
2つ目と4つ目が効きました。
発注する側の経験があると、顧客が何に困るかが分かります。納期の焦り、色の違い、修正の手間。これらは実際に発注した人にしか分かりません。
面接では「印刷が好き」ではなく、「販促物を発注する側で、伝えたいことがうまく形にならない場面を見てきた。提案する側に回りたい」という形で話しました。
この業界でも、発注する側の経験は提案する側の材料になります。
6. 待遇と働き方の実態
| 項目 | 傾向 |
|---|---|
| 給与 | メーカーとして安定した水準の企業が多い |
| 休日 | 土日祝が中心のことが多い |
| 繁忙期 | 顧客の商戦期や決算期に連動 |
| 納期 | 短納期の案件がある |
| 工場勤務 | 生産管理や品質管理では発生する |
繁忙期は、顧客の事情に連動します。
年末年始、決算期、新学期といった時期に、案件が集中する場合があります。年間の波を面接で確認してください。
また、短納期の案件では、進行が詰まることがあります。その頻度も聞いておくと、入社後のずれが減ります。
年間休日の読み方は年間休日日数の読み方|105日と125日で何が違うのかを参照してください。
7. 確認する7項目
確認する7項目
① 主力の事業は何か(商業/パッケージ/情報処理/建材など)
② 顧客の業界
③ 職種(営業/制作進行/生産管理/品質/IT)
④ 自社工場を持つか、外注か
⑤ 直近数年で投資している領域
⑥ 繁忙期と短納期案件の頻度
⑦ 勤務地と転勤の範囲
⑤が将来を見るうえで最も有効です。
紙の印刷だけに依存している企業と、別の領域へ広げている企業では、3年後の状況が変わります。
公開されている資料で確認できることが多いので、面接前に見ておいてください。
出る側の視点は印刷会社からの転職|第二新卒が持っている3つの武器にまとめています。入る前に読んでおくと、離れる人の理由が分かります。
8. 面接で聞かれることと答え方
| 質問 | 見られていること | 答え方の軸 |
|---|---|---|
| なぜこの業界か | 理解の深さ | 紙以外の事業に触れる |
| 縮小する業界だと思うか | 調べているか | 事業の変化で答える |
| 段取りの経験 | 進行管理の適性 | 調整した相手と方法で話す |
| 短納期は大丈夫か | 認識の確認 | 前職の経験で話す |
| どの事業に関心があるか | 業界理解 | 分野を挙げて答える |
「縮小する業界だと思うか」は、実際に聞かれることがあります。
「紙は減っているが、御社は◯◯の領域に広げている」と具体的に答えられると、調べていることが伝わります。
この一問で、他の応募者と差がつきます。
志望動機の組み立て方は未経験職種の志望動機の書き方|第二新卒が3ブロックで作る型と例文6パターンを参照してください。
9. よくある質問
縮小している業界に入るのは危険ですか
企業によります。紙以外の領域に広げている企業を選べば、状況が変わります。事業別の割合を確認してください。
デザインができないと入れませんか
営業、制作進行、生産管理では不要です。デザインを担当する職種は、実務経験が求められます。
工場勤務になりますか
職種によります。営業は営業所や本社、生産管理や品質管理は工場に近い場所が一般的です。
短納期の案件は多いですか
分野によります。商業印刷では発生しやすく、パッケージや建材では計画的に進むことが多くなります。
IT系の職種はありますか
情報処理の事業を持つ企業では採用があります。大量の書類を作成して送る仕組みを支える職種です。
パッケージ業界とどう違いますか
重なります。印刷会社がパッケージも手がける場合があり、境目は明確ではありません。紙・パッケージ業界へ転職する|第二新卒が知る職種と入口を参照してください。
出版業界とは違いますか
違います。出版社は企画して売る側、印刷会社は作る側です。出版・メディア業界へ転職|第二新卒が編集職以外の入口を知るを参照してください。
未経験でも入れますか
入れます。営業と制作進行は、未経験可の求人があります。
10. まとめ:面接前にやる3つのこと
印刷業界は、「紙が減っている」だけで判断すると、事業の中身を見誤ります。
面接前にやる3つのこと
① 応募先の事業別の割合を、公開されている資料で確認する
② 直近数年で何に投資しているかを調べる
③ 前職で「何かを発注した」場面を書き出す
①と②をやると、「縮小する業界だと思うか」という質問に具体的に答えられます。この一問が、面接での立ち位置を決めます。
この先、読むべき記事
- 印刷会社からの転職|第二新卒が持っている3つの武器(出る側の視点)
- 紙・パッケージ業界へ転職する|第二新卒が知る職種と入口(隣接する領域)
- 出版・メディア業界へ転職|第二新卒が編集職以外の入口を知る(作る側と売る側の違い)
- 企業の将来性をどう見るか|公開情報から読む手順(事業の変化を調べる)
- 生産管理の自己PR|第二新卒の例文6パターンと納期と在庫の数字化(生産管理の書類)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。