印刷会社からの転職|第二新卒が持っている3つの武器【2026年版】
印刷会社に入って2年。営業として案件を回してきたが、業界の先行きが不安で転職を考えている。ただ、印刷の知識が他の業界で使えるとは思えない。
これは誤解です。印刷営業の仕事の中身は、印刷の知識ではなく「進行管理」だからです。複数の関係者を並行して動かし、締切を守り、修正を反映し、コストを合わせる。この作業は、業界が変わってもそのまま使えます。
問題は、それが職務経歴書に書けていないことです。「印刷物の受注と納品を担当」とだけ書くと、印刷でしか通用しない経験に見えます。
この記事では、印刷会社で身についている力の言い換え方、狙える職種、そして書類と面接での説明のしかたを整理します。
1. 結論:武器は3つ
①進行管理の経験。デザイナー、製版、印刷、加工、配送。5つ以上の工程を並行して管理してきた経験は、そのまま制作進行やディレクションの仕事に使えます。
②仕様と見積もりを詰める力。紙、部数、色数、加工。条件を確定させて金額に落とす作業は、法人営業の基礎そのものです。
③修正対応の量。校正のやり取りを何十回も回した経験は、顧客と社内の板挟みで動く仕事に直結します。
この3つは、印刷という言葉を一切使わずに説明できます。そこが要点です。
2. 印刷業界の職種と、他業界での置き換え
| 印刷会社での職種 | 実際にやっていること | 他業界での近い職種 |
|---|---|---|
| 印刷営業 | 受注、仕様調整、進行管理、納品 | 法人営業、制作進行、営業事務 |
| 工務・生産管理 | 工程の割り振り、納期調整 | 生産管理、プロジェクト管理 |
| 製版・DTP | データ制作、修正対応 | 制作、デザイン、Webの制作進行 |
| 企画・提案営業 | 販促物の企画、効果の説明 | 広告営業、販促企画、マーケティング |
| 品質管理 | 検査、不良の原因追及 | 品質管理、カスタマーサポート |
印刷営業は、外から見ると「営業」ですが、実務の半分以上は進行管理です。この比率を書類に反映させると、応募できる職種が広がります。
業界の外から見た印刷営業
異業種の採用担当は、印刷の工程を知りません。だから「印刷営業でした」と言われても、何ができる人か分かりません。
伝わるのは、工程数・関係者数・案件数といった数字です。「1案件あたり5工程、社内外7名が関わる案件を、常時15件並行して管理していました」と言えば、印刷を知らない人にも規模が伝わります。
3. 編集長の実体験:印刷営業から広告代理店に移った人
私が広告営業をしていたとき、印刷会社から転職してきた同僚がいました。仮にGさんとします。
Gさんは入社1か月で、進行管理の部分だけ突出して速いことが分かりました。
Gさん「印刷だと、色校が出てからの修正で1日ずれると納品が飛ぶので、逆算が癖になってるんです」
私「うちの案件、逆算してる人ほとんどいないですよ」
Gさん「え、締切から引かないんですか」
Gさんが転職活動でつまずいたのも、この点だったそうです。
Gさん「最初の書類には『印刷物の受注から納品まで担当』としか書いていなくて、3社続けて落ちました」
私「何を変えたんですか」
Gさん「エージェントの人に『印刷という言葉を全部消してみてください』と言われたんです」
書き直した後の職務経歴書は、こうなっていました。
「クライアント15社を担当し、常時15〜20件の制作案件を並行管理。1案件につき社内3部署と外部2社が関わるため、工程表を作成し、遅延の兆候を週次で確認。納期遵守率は在籍2年間で98%を維持」
印刷という言葉が一度も出てきません。そして、この書類で書類通過率が大きく変わったそうです。
Gさん「面接で『それ、うちの制作進行と同じ仕事ですね』と言われました。同じだと気づいていなかったのは自分だけでした」
4. 狙いやすい職種
| 職種 | 使える経験 | 未経験からの入りやすさ |
|---|---|---|
| 制作進行・ディレクター | 工程管理、修正対応 | 入りやすい |
| 法人営業(他業界) | 見積もり、仕様調整、既存深耕 | 入りやすい |
| 販促・販売促進 | 販促物の企画経験 | 経験次第 |
| 生産管理 | 工程の割り振り、納期管理 | 工務経験があれば有利 |
| Web制作の進行管理 | 制作フローの管理 | 入りやすい |
| カスタマーサクセス | 顧客対応、社内調整 | 入りやすい |
最も相性がよいのは、制作進行と法人営業です。どちらも印刷営業の日常業務がそのまま移せます。
一方、企画職やマーケティング職に直接移るのは、実績の書き方次第です。販促物の効果を数字で追った経験があるなら書けますが、受注と納品が中心だった場合は、まず制作進行を経由するほうが現実的です。
業界を変えるか、職種を変えるか
両方を同時に変えると難易度が上がります。印刷業界の中で職種を変える(営業から企画へ)か、職種は維持して業界を変える(印刷営業から他業界の営業へ)か、どちらか一方にしてください。
第二新卒であれば、業界を変えるほうが選択肢は広くなります。
5. 職務経歴書の書き方
書き換えのルールは3つです。
①印刷用語を全部消す。色校、面付け、令数、菊判。これらは業界外に伝わりません。「校正」「工程」「部数」といった一般語に置き換えます。
②数で書く。担当社数、同時進行の案件数、関係する部署と外部の数、納期遵守率。数字があると規模が伝わります。
③工程の名前ではなく、自分の役割を書く。「製版に入稿」ではなく「入稿データの不備を事前に確認し、差し戻しを月〇件から〇件に削減」。
書き換え前:
印刷物の受注業務を担当。クライアントからの依頼を受け、社内の製版部門と工場に手配し、納品まで対応。
書き換え後:
クライアント15社を担当し、制作案件を常時15〜20件並行して管理。1案件につき社内3部署・外部2社が関わるため、工程表で進捗を可視化し、週次で遅延リスクを確認。
入稿データの事前チェックの手順を作成し、差し戻し件数を月12件から4件に削減。納期遵守率98%を2年間維持。
後者は、印刷を知らない人が読んでも仕事の中身が分かります。
書き換えた後は、印刷を知らない家族や友人に読んでもらってください。読んで仕事の中身が想像できなければ、まだ用語が残っています。
6. 落ちる説明5つ
| 説明 | どう受け取られるか |
|---|---|
| 「印刷業界の先行きが不安で」 | 業界のせいにする人に見える |
| 印刷用語をそのまま使う | 何をしていたか伝わらない |
| 「営業を担当していました」だけ | 進行管理の経験が消える |
| 「幅広く対応していました」 | 具体性がなく、印象に残らない |
| 数字が一つもない | 規模が伝わらない |
1番目に注意してください。業界の縮小は事実でも、面接でそれを退職理由にすると「環境が変われば辞める人」に見えます。
言い換えるなら、次の形です。
「制作の進行管理をやってきて、この部分をもっと大きな規模でやりたいと考えるようになりました。〇〇業界は案件の規模と関わる人数が大きく、管理の設計が仕事の中心になると理解しています」
業界の話ではなく、自分がやりたい作業の話にするのが要点です。
2問目については、答えの中に「印刷業界だから」という言葉を入れないでください。業界の話をした瞬間に、退職理由が環境の説明になります。自分がこれから何をしたいかだけを話します。
7. 面接で聞かれる3問
- 「印刷の知識は、うちでは使えないと思いますが、大丈夫ですか」
- 「なぜ印刷業界を離れるのですか」
- 「一番大変だった案件を教えてください」
1問目は、試されている質問です。知識ではなく、進め方が使えることを答えてください。
「印刷特有の知識は使えないと思います。ただ、複数の関係者を並行して動かして締切に着地させる進め方は、業界が変わっても同じだと考えています。実際に、1案件で社内3部署と外部2社を動かしていました」
3問目は、進行管理の力を見せる場面です。トラブルの内容ではなく、どう立て直したかを話してください。工程表を引き直した、優先順位を組み替えた、といった具体的な行動が評価されます。
印刷の知識が逆に効く応募先
すべての応募先で印刷を隠す必要はありません。販促物を扱う事業会社、広告関連、通販、店舗を持つ小売では、印刷の発注側に回る仕事があります。
こうした企業では、印刷会社側の事情を知っていること自体が価値になります。「見積もりのどこが変動費で、どこを削ると品質が落ちるかが分かる」という説明は、発注する側にとって具体的なメリットです。
応募先によって、印刷の知識を出すか消すかを切り替えてください。一律に消すのではなく、相手が発注側かどうかで判断します。
8. 進め方と時間配分
| 段階 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 棚卸し | 90分 | 担当社数・案件数・関係者数・遵守率を数える |
| 用語の置き換え | 60分 | 印刷用語を一般語に全部変換 |
| 職務経歴書 | 3時間 | 数字入りで書き直す |
| 職種の選定 | 60分 | 制作進行と法人営業を中心に10件 |
| 面接準備 | 90分 | 3問の答えを作る |
合計8時間ほどです。最も重要なのは用語の置き換えで、ここを飛ばすと書類が読まれません。
数字が思い出せない場合は、手帳や案件管理表を見返してください。正確な数字が出ないときは「常時15件前後」といった書き方で構いません。
9. よくある質問
印刷業界の経験は、他業界で評価されますか
進行管理と法人営業の経験として評価されます。評価されないのは、印刷でしか通じない書き方をした場合だけです。
印刷営業から未経験の職種に移れますか
移れます。制作進行、法人営業、カスタマーサクセスは相性がよい職種です。企画やマーケティングは、効果を数字で追った経験があるかどうかで変わります。
業界が縮小していることを退職理由にしていいですか
避けてください。事実であっても、環境を理由にする説明は不利になります。やりたい作業の話に変えてください。
DTPオペレーターからの転職は難しいですか
Web制作やデザイン領域への移動は現実的です。制作物の点数、使用ソフト、修正対応の量を数字で書いてください。制作進行への転換も選択肢になります。
印刷会社の営業は、他業界の営業より不利ですか
不利ではありません。むしろ、仕様を詰めて見積もりを出す作業をやっているぶん、無形商材の営業より具体的です。提案から納品まで一貫して見ている点は強みになります。
何年目で動くのがよいですか
2〜3年目です。1年未満だと案件数が足りず、書ける数字が集まりません。3年を超えると、業界を変える難易度が少し上がります。
資格は必要ですか
必須ではありません。進行管理の経験を数字で書くほうが優先度が高いです。Web領域を狙う場合のみ、関連するツールの習熟を書けると有利になります。
同じ印刷業界の他社に移るのはどうですか
条件を改善する手段としては有効です。ただし業務内容は大きく変わらないため、仕事の中身を変えたい場合は解決になりません。何を変えたいのかを先に決めてください。
10. まとめ:今週やる3つのこと
印刷会社での経験は、言い換えれば異業種でそのまま通用します。通用しないのは、印刷用語で書かれた書類だけです。
1. 数字を4つ数える。担当社数、同時進行の案件数、1案件に関わる社内外の人数、納期遵守率。この4つが書類の骨格になります。
2. 職務経歴書から印刷用語を全部消す。色校、面付け、入稿。これらを「校正」「工程」「データ提出」に置き換えます。印刷という言葉を一度も使わずに書けたら完成です。
3. 制作進行と法人営業の求人を5件ずつ見る。要件を読むと、自分の経験がどこに当てはまるかが分かります。
持っているのは印刷の知識ではなく、締切に着地させる力です。そこを書いてください。
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この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。