広告業界研究|第二新卒が4つの型で理解する収益構造と職種【2026年版】
〜「広告代理店」と一括りにすると、面接で何も答えられなくなります〜
広告業界は、第二新卒に人気があります。テレビCMやWeb広告など、身近な成果物が目に見える業界であり、若手の採用も活発だからです。
ただ、この業界を志望する人の多くが、「広告代理店」を1つの業態として捉えています。
実際には、総合代理店、専門代理店、運用型のデジタル代理店、そして媒体社。この4つは、収益構造も、日々の仕事も、求められる能力もまったく違います。
そして面接では、必ずこう聞かれます。
「なぜ広告業界なのですか」「なぜ弊社なのですか」
4つの型の違いを理解していないと、この2問に答えられません。
この記事は、面接前に押さえておくべき業界の構造を、最短で整理するためのものです。
1. 結論:広告業界は4つの型に分かれる
| 型 | 何をするか | 収益 | 未経験の入りやすさ |
|---|---|---|---|
| 総合広告代理店 | 大手クライアントの広告全般を統括 | 手数料(媒体費の一定割合) | △ |
| 専門広告代理店 | 特定の媒体・業界に特化 | 手数料、制作費 | ○ |
| 運用型(デジタル)代理店 | 検索・SNS広告の運用代行 | 運用手数料(広告費の20%前後) | ◎ |
| 媒体社(メディア) | 自社の広告枠を販売 | 掲載料 | ◎ |
第二新卒が最も入りやすいのは、下の2つです。
運用型代理店は、デジタル広告の需要拡大に伴って人材が不足しており、未経験採用が活発です。媒体社は、自社の広告枠を売る営業職なので、営業経験があれば翻訳しやすい領域です。
総合広告代理店は、新卒採用が中心で、中途は経験者採用が主流です。第二新卒での応募は可能ですが、競争は厳しくなります。
2. 収益構造の違い
この違いが、そのまま働き方の違いになります。
総合・専門代理店:手数料モデル
クライアントの広告費を預かり、媒体に出稿し、その一定割合を手数料として受け取ります。
この構造から生じること
- 広告費が大きいほど、代理店の収益も大きくなる
- したがって、大手クライアントを持つことが重要になる
- 1件あたりの案件規模が大きく、関わる人数も多い
運用型代理店:運用手数料モデル
クライアントの広告予算を、検索広告やSNS広告に配分し、成果を改善する対価として手数料を受け取ります。手数料率は広告費の20%前後が一般的です。
この構造から生じること
- 成果が数字で明確に見える(クリック数、申込数、獲得単価)
- 成果が出ないと、予算を減らされる=収益が減る
- 日々の運用が業務の中心。管理画面を毎日見る
媒体社:掲載料モデル
自社が持つ媒体(Webサイト、雑誌、フリーペーパー、屋外広告など)の広告枠を販売します。
この構造から生じること
- 掲載時点で収益が確定する
- ただし、掲載後に成果が出ないと、次回の受注につながらない
- 原稿の質と、掲載後のフォローが重要になる
面接で「弊社はどうやって収益を得ていると思いますか」と聞かれたとき、この構造で答えられれば十分です。
3. 編集長の実体験:媒体社の営業をしていた話
私自身、前職でメディア広告の営業をしていました。媒体社の営業です。
当時の仕事
「飲食・宿泊・レジャー業界のお客様に、自社メディアの広告枠を提案する仕事だった。担当は年間で約40社。
掲載が決まった時点で売上は立つ。ただ、掲載して集客が増えなければ、次の更新は取れない」
この「更新」が、媒体社の営業の本質でした。
新規と更新の違い
「新規で取るのは大変だけど、更新のほうが利益率が高い。だから、掲載後にどれだけ成果が出るかが、次の売上を決める。
それで私は、掲載後の1ヶ月時点で必ず数字を持って訪問するようにした。問い合わせが何件来たか、その内訳はどうか。
数字が悪ければ、原稿の写真や見出しを変える提案をする。これをやるようになってから、更新率が上がった」
もう1つ、当時気づいたことがあります。
クライアント側の事情
「担当していた飲食店の多くは、うちの媒体だけでなく、Web広告も並行して回していた。
ある店主に『どっちが効いてるんですか』と聞いたら、『Webのほうが数字が見える』と言われた。クリック数も、予約数も、1件あたりのコストも全部出る」
「紙の媒体だと、『掲載して何件来たか』を正確には測れない。この差が、業界の構造そのものを変えていた」
この経験が、私が転職を考えたきっかけの1つでした。
広告業界を志望する第二新卒に伝えたいのは、この点です。
「数字で成果が測れるか」が、この業界の中で領域を分けています。運用型のデジタル広告は測れる。マス広告や紙媒体は測りにくい。この違いを理解したうえで、どちらに行きたいかを選んでください。
4. 広告業界の職種
| 職種 | 何をするか | 未経験の入りやすさ | 前職で有利になる経験 |
|---|---|---|---|
| 営業(アカウントプランナー) | クライアントの窓口、提案 | ◎ | 営業全般 |
| 運用(広告運用コンサルタント) | 検索・SNS広告の出稿と改善 | ◎ | 数字を扱った経験 |
| メディアプランナー | 媒体の選定と予算配分 | △ | 数字の分析 |
| クリエイティブディレクター | 表現の方向を決める | × | 制作経験 |
| コピーライター | 文章の制作 | △ | ポートフォリオが必要 |
| デザイナー | 制作物のデザイン | △ | ポートフォリオが必要 |
| 制作進行・ディレクター | 制作の進行管理 | ○ | 進行管理の経験 |
| 媒体社の営業 | 自社の広告枠の販売 | ◎ | 営業全般 |
第二新卒が最も入りやすいのは、営業・運用・媒体社の営業の3つです。
運用職について
運用型代理店の広告運用は、未経験採用が最も活発な職種のひとつです。
ただし、実務の8割は地味な数字の作業です。毎朝、管理画面を開いて前日の数字を確認し、成果の悪いキーワードを止めて、良いところに予算を寄せる。この繰り返しです。
「企画を考える仕事」というイメージで入ると、ギャップが生じます。面接では、この実態を理解していることを示してください。
5. 業界研究の進め方(合計2時間)
| 時間 | やること |
|---|---|
| 30分 | 応募先が4つの型のどれかを判別する |
| 30分 | 応募先の主なクライアント業種を確認する |
| 30分 | 応募先の実績・事例ページを3本読む |
| 30分 | 前職での「数字を見て改善した経験」を整理 |
1番目の判別方法
| 判別のポイント | どの型か |
|---|---|
| 「統合的なコミュニケーション」「マス4媒体」 | 総合代理店 |
| 「◯◯業界に特化」「◯◯媒体に強み」 | 専門代理店 |
| 「運用型広告」「リスティング」「SNS広告」 | 運用型代理店 |
| 「自社メディア」「◯◯(媒体名)を運営」 | 媒体社 |
企業サイトの事業紹介ページで、ほぼ判別できます。
2番目のクライアント業種も重要です。
前職と同じ業界のクライアントを持つ企業なら、その業界知識がそのまま強みになります。飲食出身なら飲食に強い代理店、医療事務出身なら医療系に強い代理店。これは、志望動機の最も強い材料になります。
6. 面接で追撃される5つの質問
Q1.「なぜ広告業界を志望するのですか」
「クリエイティブな仕事に興味がある」は避けてください。広告業界の仕事の大半は、クリエイティブではなく調整と数字の管理です。
答え方の例
「前職の販売職で、店舗のSNSを運用していました。投稿の内容によって来店数が変わることを実感し、告知の設計そのものに関心を持ちました。特に、数字で効果を確認できる領域に取り組みたいと考え、運用型の広告を志望しています。」
Q2.「弊社はどうやって収益を得ていると思いますか」
第2章の内容で答えてください。「クライアントの広告費の一定割合を、運用手数料として受け取る形と理解しています」。
Q3.「総合代理店ではなく、なぜ運用型なのですか」
4つの型の違いを理解しているかを測る質問です。
答え方の例
「成果が数字で明確に見える点です。総合代理店が扱うマス広告は、影響範囲が大きい一方、個別の施策の効果を切り分けるのが難しいと理解しています。運用型は、予算の配分を変えた結果が翌日には数字で返ってくる。この短いサイクルで改善を繰り返す形が、自分に合っていると考えています。」
Q4.「広告運用は地味な作業が多いですが、大丈夫ですか」
実態を知っているかを測る質問です。「管理画面を毎日確認し、数値の変化を追う業務が中心だと理解しています。前職でも◯◯の数字を毎日記録していました」と、経験に紐づけてください。
Q5.「激務と言われますが、大丈夫ですか」
正直に理解を示してください。「クライアントの都合に合わせる必要があり、繁忙の波があると理解しています。前職でも◯◯の時期は業務量が増えていました」。そのうえで、面接で「直近3ヶ月の平均残業時間」を確認してください。
7. 「激務」と言われる理由
広告業界には、労働時間が長くなりやすい構造的な要因があります。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| クライアントの都合に合わせる | 修正依頼が夕方以降に来ることがある |
| 修正の往復が多い | 制作物は何度も直しが入る |
| 案件の同時進行 | 1人が複数クライアントを担当 |
| キャンペーンの時期に集中 | 出稿の開始前後に業務が集中 |
| 数字への責任 | 成果が出ないと予算を減らされる |
ただし、企業による差が非常に大きい領域です。
面接で確認すべき4項目
| 確認項目 | 聞き方 |
|---|---|
| 1人あたりの担当社数 | 「1人あたり、何社くらいを担当されますか」 |
| 直近の残業時間 | 「配属予定の部署の、直近3ヶ月の平均残業時間を教えてください」 |
| 繁忙のタイミング | 「業務が集中する時期はいつでしょうか」 |
| 分業の状況 | 「営業と運用は、分業されていますか」 |
4番目が重要です。営業と運用を1人で兼務する体制だと、業務量が明確に増えます。
8. 年収と、その後のキャリア
| 職種 | 未経験入社時 | 3年後 |
|---|---|---|
| 運用(デジタル広告) | 300〜400万円 | 450〜650万円 |
| 営業(代理店) | 320〜420万円 | 450〜700万円 |
| 媒体社の営業 | 320〜420万円+インセンティブ | 450〜650万円 |
| 制作進行 | 300〜380万円 | 400〜550万円 |
広告業界で身につくものは、他業界でも通用します。
| 移り先 | 活きる経験 |
|---|---|
| 事業会社のマーケティング | 広告運用、効果測定の経験 |
| 事業会社の広報・宣伝 | 媒体の知識、制作の進行 |
| SaaS企業のマーケティング | デジタル施策の設計と実行 |
| EC担当 | 集客と数字の改善 |
| フリーランスの広告運用 | 実務経験3年以上が目安 |
特に、運用型代理店で3年の経験を積むと、事業会社のマーケティング職への転職が現実的になります。代理店で複数クライアントの運用を経験しているため、1社しか見ていない事業会社の担当者より、経験の密度が高いためです。
9. よくある質問
未経験でも広告業界に入れますか?
入れます。特に運用型代理店と媒体社の営業は、未経験採用が活発です。営業・販売・接客の経験があれば、翻訳して応募できます。総合代理店は経験者採用が中心のため、難易度が上がります。
総合代理店と運用型、どちらがいいですか?
身につくものが違います。総合代理店は大規模な案件の統括とマス媒体の知識、運用型はデジタル広告の実務と数字の改善力が身につきます。第二新卒の入りやすさは運用型が上です。
「クリエイティブな仕事」ではないのですか?
クリエイティブ職(コピーライター、デザイナー、CD)は、広告業界の中の一部です。営業・運用・進行管理は、調整と数字の管理が中心になります。制作そのものに関わりたい場合、クリエイティブ職を志望する必要があり、その場合はポートフォリオが求められます。
資格は必要ですか?
必須の資格はありません。運用職を目指す場合、主要な広告プラットフォームの認定資格(無料・オンライン受験)を取得しておくと、本気度の証明になります。学習期間は数週間です。
激務ですか?
企業と時期による差が大きい領域です。クライアントの都合に合わせる構造上、業務量が読みにくい面はあります。面接で「1人あたりの担当社数」「直近3ヶ月の平均残業時間」「営業と運用の分業状況」を必ず確認してください。
数字が苦手ですが、大丈夫ですか?
運用職は数字を毎日見る仕事なので、抵抗があると厳しいです。ただし、高度な統計知識は不要で、四則演算と割合の理解があれば足ります。「数字を見るのが苦痛か」を、自分で確認してから応募してください。
インターネット広告と、マス広告のどちらが将来性がありますか?
市場としては、インターネット広告が伸びている状況が続いています。ただし、マス広告が不要になるわけではなく、両方を組み合わせる設計が求められる場面もあります。第二新卒としては、まず数字で成果が見える領域(運用型)で実務を積むほうが、その後の選択肢が広がります。
広告業界から他業界へ移れますか?
移れます。特に、事業会社のマーケティング職への転職は一般的なルートです。代理店で複数クライアントの運用を経験していると、1社しか見ていない事業会社の担当者より経験の密度が高く、評価されます。
10. まとめ:今夜やる3つのこと
広告業界の面接では、4つの型の違いと収益構造を理解しているかが、最初の関門です。
今夜やること
① 応募先が総合・専門・運用型・媒体社のどれかを判別する(企業サイトの事業紹介ページで分かります)
② 応募先の主なクライアント業種を確認する(前職と同じ業界なら、それが最大の武器になります)
③ 応募先の実績・事例ページを3本読む(どんな課題に、どう対応したかが分かります)
②が、志望動機で最も効く材料です。「前職で◯◯業界のお客様を担当していたため、その業界の事情については理解できる部分があります」——この一言があるかないかで、書類の印象が変わります。
この先、読むべき記事
- 広告代理店の志望動機|未経験・第二新卒の例文5パターンと落ちる書き方(志望動機の書き方)
- Webマーケターへの未経験転職|第二新卒の入口と最初の3ヶ月(運用側を狙うなら)
- Webディレクターの志望動機|未経験・第二新卒の例文5パターンと落ちる書き方(制作進行を狙うなら)
- SaaS業界研究|第二新卒が面接前に押さえる3つの数字と職種の全体像(別業界の構造)
- 広告代理店の面接|第二新卒が聞かれる想定問答12と実態を押さえた答え方(代理店の面接)
- 保険業界研究|第二新卒が3つの型で理解する収益構造と職種(他業界の収益構造)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。