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業界・職種研究

SaaS業界研究|第二新卒が面接前に押さえる3つの数字と職種の全体像【2026年版】

木戸 悠介 なぜキャリア? 編集長 公開 2026年9月5日 読了 約18分
SaaS業界研究|第二新卒が面接前に押さえる3つの数字と職種の全体像【2026年版】

〜SaaSの面接で「なぜSaaSですか」と聞かれたとき、成長市場だからと答えると、そこで止まります〜

SaaS業界は、第二新卒の転職先として人気があります。伸びている領域である、未経験可の求人が多い、リモートワークが選択肢に入る。実際、営業・カスタマーサクセス・インサイドセールスは、未経験採用が非常に活発です。

ただし、面接では必ずこう聞かれます。

「なぜSaaS業界なのですか」

ここで「成長している業界だから」と答えると、大半の応募者と同じになります。そして、その次に来る質問——「SaaSのビジネスモデルの特徴は何だと思いますか」——で、業界理解の深さが判別されます。

この記事は、面接前に押さえておくべき業界の構造を、最短で整理するためのものです。

1. 結論:押さえるべきは3つの数字

SaaSのビジネスモデルは、3つの数字を理解すれば、面接での会話が成立します。

① 解約率(チャーンレート)

SaaSで最も重要な数字です。売り切りのビジネスと違い、SaaSは契約が続く限り収益が入り続けます。逆に、解約されると、そこで収益が止まります。だから、「売ること」と同じくらい「使い続けてもらうこと」が重要になります。

これが、SaaS企業にカスタマーサクセスという職種が存在する理由です。

② 継続的な収益(月次・年次の積み上げ)

SaaSの売上は、毎月の契約が積み上がる形で増えます。今月の新規契約は、来月以降も収益として計上され続けます。

したがって、SaaS企業は短期の売上より、契約数の積み上げと解約の防止を重視します。この理解があると、営業職の志望動機の書き方が変わります。

③ 顧客獲得コストと、回収までの期間

SaaSは、契約獲得のコストを回収するまでに時間がかかります。広告費や営業の人件費をかけて1件を獲得しても、月額数万円の契約なら、回収に半年〜1年以上かかることがあります。

だから、短期で解約されると赤字になります。ここでも、解約率の重要性に戻ります。

この3つが理解できていれば、面接での「SaaSの特徴は何だと思いますか」に答えられます。

2. なぜSaaSに「カスタマーサクセス」があるのか

この質問に答えられると、業界理解が伝わります。

売り切りのビジネスでは、売った時点で収益が確定します。したがって、営業が売ることに集中し、その後のフォローは相対的に優先度が下がります。

SaaSでは、売った時点ではまだ収益は確定していません。顧客が使い続けてくれて、初めて収益になります。

売り切り型SaaS
収益の確定販売時点契約が続く限り
解約の影響なし(すでに売却済み)収益が止まる
重視される指標売上高継続率・解約率
販売後の役割サポート(受動的)カスタマーサクセス(能動的)

カスタマーサクセスは、「問い合わせを待つ」サポートではなく、「使われていない機能があれば、こちらから提案する」職種です。使ってもらえないと解約されるためです。

この違いを説明できるかどうかが、SaaS企業の面接での大きな判別点になります。

3. 編集長の実体験:SaaS企業に転職して驚いたこと

私自身、第二新卒でメディア広告の営業からSaaS企業の営業職に転職しました。入社して最初に驚いたのは、営業会議で話される内容でした。

前職(メディア広告)の営業会議

「今月の売上目標に対して、あと◯◯万円。誰がどの案件で埋めるか」

転職先(SaaS)の営業会議

「今月の新規契約は◯件。ただ、先月契約した◯社の利用状況が低い。このままだと3ヶ月後に解約される可能性があるので、カスタマーサクセスと連携して手を打つ」

売った後の話が、営業会議で議論されていました。

前職では、売った後の話が営業会議に出てくることはほとんどありませんでした。掲載が終われば、その案件は完了です。

もう1つ、驚いたことがあります。

入社1ヶ月目、上司に言われたこと

「無理に売らなくていいよ。合わないお客さんに売ると、3ヶ月で解約されて、結局マイナスになる

私「マイナス、ですか」

上司「うちは1件の契約を取るのに、広告費と人件費で数十万かかってる。月額5万の契約なら、回収に1年かかる。3ヶ月で解約されたら、その分は全部損

これが、SaaSのビジネスモデルの核心です。

「売れればいい」ではなく、「使い続けてもらえる相手に売る」。この構造を理解している応募者と、していない応募者では、面接での受け答えがまったく違います。

面接で「営業として大事にしたいことは何ですか」と聞かれたとき、「合わない顧客には無理に売らない」と答えられると、それだけで業界理解が伝わります。

4. SaaS企業の職種と、未経験の入りやすさ

職種何をするか未経験の入りやすさ前職で有利になる経験
インサイドセールス(IS)電話・メールでの初期接触、商談化コールセンター、営業、接客
フィールドセールス(FS)商談から受注まで営業全般
カスタマーサクセス(CS)導入後の活用支援、解約防止接客、サポート、営業事務
カスタマーサポート問い合わせ対応コールセンター、接客
導入コンサルタント初期設定、定着支援業界知識、業務理解
マーケティングリード獲得、広告運用広告、販促、SNS運用
セールスオペレーション営業の数字と仕組みの管理営業経験+数字
プロダクトマネージャー(PdM)製品の仕様と優先順位×経験者採用が中心
エンジニア製品の開発学習が必要

第二新卒が最も入りやすいのは、IS・FS・CS・サポートの4つです。

そして、この4つは相互に移動しやすい職種です。ISで入ってFSへ、CSからISへ、といった社内異動が一般的に行われています。

「まずどこかに入って、中で動く」という戦略が成立するのが、SaaS業界の特徴です。

5. 業界研究の進め方(合計3時間)

ステップ1:応募先の製品を実際に使う(1〜2時間)

これが最も効きます。多くのSaaSには無料プランまたは体験版があります。実際に登録して、触ってみてください。

面接で使える形

「無料プランに登録して操作いたしました。◯◯の設定画面が分かりにくいと感じましたが、導入時のお客様も同じ箇所で詰まることが多いのではないかと想像しています。」

この一言が言える応募者は、ほとんどいません。

ステップ2:導入事例を3本読む(30分)

企業サイトの「導入事例」「お客様の声」を読んでください。誰が、どんな課題で、どう使っているかが分かります。

面接で使える形

「導入事例の◯◯様の記事を拝見しました。前職でも同じ業界のお客様を担当していたため、その課題感は理解できます。」

ステップ3:業界の全体像を掴む(30分)

次の3点を、応募先について確認してください。

確認項目どこで分かるか
ターゲット(中小企業か大企業か)料金プラン、導入事例の企業規模
価格帯(月額いくらか)料金ページ
競合(似たサービス)「◯◯ 比較」で検索

ターゲットの企業規模は特に重要です。中小企業向けと大企業向けでは、営業の進め方がまったく違います。

中小企業向け大企業向け
商談期間数週間〜1ヶ月3ヶ月〜1年
決裁者社長・部長複数部署の合意が必要
商談数多い少ない
単価低い高い

ステップ4:直近のニュースを確認(30分)

プレスリリース、資金調達のニュース、新機能の発表。上場企業なら決算資料も読めます。

面接で使える形

「先月発表された◯◯の機能について拝見しました。これは、△△の課題に対応するものと理解しているのですが、既存のお客様からの要望が多かった領域なのでしょうか。」

6. 面接で追撃される5つの質問

Q1.「なぜSaaS業界を志望するのですか」

「成長市場だから」は避けてください。

答え方の例

「契約後も使い続けてもらう必要があるという構造に関心があります。前職では商品を売った時点で関係が終わることが多く、その後どう使われたかを知る機会がありませんでした。売った後の使われ方まで含めて責任を持つ形の営業に取り組みたいと考えています。」

Q2.「SaaSのビジネスモデルの特徴は何だと思いますか」

第1章の3つの数字で答えてください。「継続的な収益であること」「解約率が重要であること」「顧客獲得コストの回収に時間がかかること」。この3点に触れられれば十分です。

Q3.「なぜカスタマーサクセスという職種があるのだと思いますか」

業界理解を測る質問です。「使い続けてもらわないと収益にならないため、能動的に活用を支援する役割が必要になるからだと理解しています」。

Q4.「弊社の製品を使ってみましたか」

SaaS企業の面接では、頻繁に聞かれます。使っていない場合、志望度が低いと判断されます。必ず、応募前に触ってください。

Q5.「合わないお客様に、どう対応しますか」

SaaS特有の質問です。「無理に契約いただいても、使われずに解約となれば双方にとって損失になると理解しています。導入前に業務内容を伺い、合わないと判断した場合は、その旨をお伝えしたいと考えています」。

7. SaaS業界の年収と、その後

職種未経験入社時3年後
インサイドセールス300〜400万円400〜550万円
フィールドセールス350〜450万円+インセンティブ500〜700万円
カスタマーサクセス320〜420万円450〜600万円
カスタマーサポート280〜380万円350〜480万円
マーケティング320〜420万円450〜650万円
セールスオペレーション380〜480万円500〜700万円

SaaS業界で身につくものは、他社でも通用します。

無形商材の提案経験顧客の業務を理解する力数字で管理する習慣。この3つは、SaaS以外の業界でも評価されます。

特に、SaaS営業の経験は、他のSaaS企業への転職で高く評価されます。業界内での転職市場が活発なため、3年後の選択肢は広いです。

8. SaaS企業を選ぶときの5つの確認項目

確認項目なぜ重要か聞き方
事業のフェーズ立ち上げ期と拡大期で仕事が違う「現在の従業員数と、3年前からの推移を教えてください」
ターゲットの企業規模営業の進め方が変わる「主なお客様の企業規模を教えてください」
解約率の水準製品の競争力を測る指標「継続率はどのくらいで推移していますか」
職種間の異動キャリアの選択肢「IS から FS への異動の実績はありますか」
未経験入社者の状況育成体制「未経験で入社された方は、何ヶ月で独り立ちされますか」

3番目の「解約率」を聞ける応募者は、ほとんどいません。この質問をすると、業界理解の深さが伝わります。

なお、具体的な数字を答えてもらえない場合もありますが、質問したこと自体に意味があります。

9. よくある質問

SaaSとは何ですか?

ソフトウェアを、インストールして買い切るのではなく、インターネット経由で月額・年額で利用する形のサービスです。顧客管理、会計、勤怠管理、営業支援など、業務ソフトの多くがこの形に移行しています。面接では「サブスクリプション型で提供されるソフトウェア」と説明できれば十分です。

未経験でもSaaS企業に入れますか?

入れます。特にインサイドセールス、カスタマーサクセス、カスタマーサポートは、未経験採用が非常に活発です。前職が営業・接客・コールセンター・事務であれば、経験を翻訳して応募できます。

IT知識は必要ですか?

営業・CS・サポート職では、高度なIT知識は不要です。製品の操作方法と、顧客の業務を理解できれば務まります。ただし、「ITパスポート」程度の基礎知識があると、業界への関心の証明になります。

インサイドセールスとフィールドセールス、どちらがいいですか?

未経験ならインサイドセールスが入りやすいです。電話・メールでの初期接触が中心のため、対面の商談経験がなくても始められます。ISで実績を作ってからFSへ異動するのが、SaaS業界では一般的なルートです。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは?

サポートは「問い合わせに答える」受動的な役割、カスタマーサクセスは「使われていない機能を提案する」能動的な役割です。CSは解約防止と追加契約(アップセル)に責任を持つため、営業に近い性質があります。この違いは、面接で必ず問われます。

ベンチャーと大手SaaS、どちらがいいですか?

ベンチャーは業務範囲が広く裁量が大きい一方、教育体制が整っていないことがあります。大手は分業が進んでおり、教育体制がある一方、担当範囲は限定的です。未経験なら、教育体制のある企業のほうが立ち上がりが楽です。面接で「未経験で入社された方が独り立ちするまでの期間」を確認してください。

「成長市場だから」と答えてはいけませんか?

それだけでは不十分です。市場が伸びていることは、応募者の大半が知っています。「継続的に使われることで収益になる構造に関心がある」「売った後の使われ方まで責任を持つ形の営業がしたい」など、ビジネスモデルへの理解を示してください。

製品を使ってみる時間がありません。

30分でも触ってください。登録して、主要な画面を開いて、1つ操作してみるだけで構いません。「使ってみて、◯◯が分かりにくいと感じました」という一言が言えるかどうかで、面接の印象が変わります。無料プランがない場合は、製品紹介ページと導入事例を読み込んでください。

10. まとめ:今夜やる3つのこと

SaaS業界の面接では、ビジネスモデルの理解と、製品を触ったかどうかが問われます。合計3時間の準備で、他の応募者と明確に差がつきます。

今夜やること

① 応募先の製品に無料プランがあるか確認し、あれば登録して触る(30分でも構いません)

② 応募先の導入事例を3本読む(誰が、どんな課題で、どう使っているか)

③ 応募先の料金ページを開き、ターゲットの企業規模と価格帯を確認する(中小企業向けか、大企業向けか)

①が最も効きます。「製品を使ってみましたか」という質問に、具体的な感想で答えられる応募者は、ほとんどいません。この1つだけで、志望度と業務理解の両方が伝わります。

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この記事を書いた人

木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。

23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。