エージェントを使わない転職|第二新卒が直接応募で進める手順と注意点【2026年版】
〜エージェントを使わない選択には、明確なメリットがあります。ただし代わりに自分でやることが3つ増えます〜
転職といえばエージェント、という前提で語られることが多いですが、実際にはエージェントを使わずに転職する人は珍しくありません。企業の採用サイトから直接応募する、転職サイトの応募機能を使う、知人経由で紹介してもらう——いずれも正規の転職ルートです。
そして、エージェントを使わないことには実際に利点があります。採用側に紹介手数料が発生しないため、内定が出やすい場面があるのがその代表です。
一方で、エージェントが代わりにやってくれていたことを自分で引き受ける必要があります。この記事では、エージェントなしで進める場合の具体的な手順と、注意すべき3つの落とし穴を整理します。
1. 結論:エージェントなしで進めるなら、3つを自分でやる
① 求人の発見と、企業情報の確認
エージェントは、非公開求人の提示と、その企業の内部情報(離職率、残業実態、面接の傾向)を提供します。これを自分でやる場合、企業サイト・口コミ・IR資料・SNSを自力で当たる必要があります。
② 日程調整と選考の進行管理
複数社を並行すると、日程調整だけで週に何通ものメールが発生します。面接後のフォローや、返信が来ないときの催促も自分で行います。
③ 条件交渉
年収・入社日・勤務地。エージェントが間に立たない場合、これを自分で企業に伝えることになります。これが最も心理的な負荷が大きい部分ですが、やり方は決まっています(第6章)。
この3つを引き受ける代わりに得られるのが、「エージェント経由では応募できない企業に応募できること」と「採用側のコスト負担が軽いこと」です。
2. なぜ「エージェントなし」が有利になる場面があるのか
転職エージェント経由で採用が決まると、企業はエージェントに採用者の想定年収の30〜35%程度を紹介手数料として支払います。年収400万円なら120〜140万円です。
このコスト構造から、次のことが起きます。
| 状況 | 何が起きるか |
|---|---|
| 中小企業・スタートアップ | 手数料の負担が重く、直接応募を優先する企業がある |
| 同スペックの2名が最終に残った | コストの低い直接応募者が選ばれる場合がある |
| 採用予算を使い切った時期 | エージェント経由の採用を一時停止する企業がある |
| 自社採用サイトを持つ企業 | 直接応募のほうが選考が早く進むことがある |
ただし、これは「直接応募のほうが常に有利」という意味ではありません。大手企業や、採用予算が潤沢な企業では、この差はほとんど発生しません。
有利になりやすいのは、社員数50〜300名程度の企業です。この規模帯は採用の必要性が高い一方、手数料の負担感が大きいためです。
3. 編集長の実体験:直接応募で内定が出た話
私の第二新卒の転職では、10社に応募して2社から内定が出ました。そのうち1社は直接応募でした。
経緯
「エージェント2社に登録して、そこから8社に応募していた。並行して、転職サイトで気になった会社を自分でも見ていた。
あるSaaS企業の求人が、エージェントの紹介一覧には出てこなかった。調べたら、自社の採用ページで募集していた。エージェントに『この会社は紹介できますか』と聞いたら、『そちらとは契約がありません』と言われた」
直接応募したときのこと
「採用ページのフォームから、職務経歴書を添付して送った。3日後に返信が来て、1週間後にカジュアル面談。そこから面接2回で内定が出た。エージェント経由の会社より、明らかに進行が速かった」
面接で聞いたこと
私「エージェント経由の応募と、直接応募で選考に違いはありますか」
採用担当「選考基準は同じです。ただ、直接応募の方は自分でうちを見つけて調べてきているので、志望動機の解像度が高いことが多いですね」
この最後の一言が、直接応募の本質だと思っています。
エージェント経由の応募では、「紹介されたから受けている」応募者が一定数混ざります。その中で、自分で企業を見つけて調べてきた応募者は、志望動機の具体性で自然に差がつきます。
直接応募の有利さは、コストの話以上に、この「志望度の証明」にあります。
4. エージェントなしの3つのルート
ルートA:転職サイトからの応募
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 向いている人 | 求人を幅広く見て、自分で比較したい人 |
| 求人数 | 最も多い |
| 進め方 | サイト上で応募 → 企業から直接連絡が来る |
| 注意点 | 応募が簡単な分、企業側も大量の応募を受けている |
転職サイト経由は、直接応募の最も一般的な形です。ただし、応募ボタンが押しやすい分、応募者数も多くなります。志望動機欄がある場合、必ず埋めてください。空欄のまま送る応募者が一定数いるため、書くだけで差がつきます。
ルートB:企業の採用サイトからの直接応募
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 向いている人 | 行きたい企業がある程度決まっている人 |
| 求人数 | 自分で探す必要がある |
| 進め方 | 企業サイトの採用ページから応募 |
| 注意点 | 企業を自分で見つける手間がかかる |
最も志望度が伝わる応募方法です。企業の探し方は、①転職サイトで見つけた企業の採用ページを直接開く、②業界のニュースやプレスリリースから探す、③使っているサービスの運営会社を調べる、の3通りが実用的です。
ルートC:リファラル(知人紹介)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 向いている人 | 前職や大学の人脈がある人 |
| 求人数 | 限られる |
| 進め方 | 知人経由で人事につないでもらう |
| 注意点 | 断りにくくなる。条件交渉がしづらい |
通過率は最も高い一方、辞退しにくいという構造的な難しさがあります。紹介してくれた人との関係があるためです。紹介を受ける段階で「他社も並行して見ています」と伝えておくと、後で断りやすくなります。
5. エージェントなしで進める手順
ステップ1:応募先リストを作る(1〜2日)
転職サイトで職種・条件を絞り、気になる企業を20社リストアップします。この段階では応募しません。
ステップ2:各社の情報を調べる(各社15分)
エージェントが代わりに教えてくれていた部分です。次の5点を確認します。
| 確認項目 | どこで見るか |
|---|---|
| 事業内容と収益源 | 企業サイト、IR資料(上場企業) |
| 社員数と採用の背景 | 採用ページ、求人票の「募集背景」欄 |
| 平均勤続年数・離職率 | 上場企業なら有価証券報告書、口コミサイト |
| 残業の実態 | 口コミサイト、求人票の「平均残業時間」 |
| 直近のニュース | プレスリリース、業界メディア |
20社を15分ずつで5時間です。この5時間が、エージェントを使わない場合の最大のコストであり、同時に最大の武器になります。
ステップ3:優先順位をつけて10社に応募する(1週間)
並行応募は10社前後が標準です。1社ずつ受けると半年以上かかります。応募のペースは、週に3〜4社が現実的です。
ステップ4:進行管理表を作る
エージェントがやっていた部分です。表計算ソフトで次の項目を管理します。
| 企業名 | 応募日 | 選考段階 | 次のアクション | 期限 |
|---|---|---|---|---|
| A社 | 9/5 | 一次面接済 | 二次面接 9/12 14:00 | 9/12 |
| B社 | 9/6 | 書類選考中 | 1週間返信なければ問合せ | 9/13 |
この表がないと、必ず抜けが出ます。並行応募では、返信の見落としが最も多い失敗です。
ステップ5:面接後24時間以内にお礼メールを送る
エージェント経由だと担当者がフォローする部分です。直接応募では自分で送ります。形式的な文面で構いませんが、面接で話した具体的な内容に1行触れると、印象が残ります。
6. 条件交渉を自分でやる方法
エージェントなしで最も不安が大きいのが、年収交渉です。手順は決まっています。
タイミング:内定通知を受け取った直後、承諾する前
内定前の交渉は、選考に影響する可能性があるため避けてください。内定が出てから、承諾期限までの間が唯一の交渉タイミングです。
伝え方:3つの要素で構成する
① 感謝と、入社意欲の明示 「この度は内定のご連絡をいただき、ありがとうございます。貴社で働きたいという気持ちは変わっておりません。」
② 希望額と、その根拠 「ご提示いただいた年収について、1点ご相談させていただけますでしょうか。現職の年収が420万円で、賞与を含めた実績は今期450万円程度となる見込みです。可能でしたら、450万円前後でご検討いただくことは難しいでしょうか。」
③ 調整がつかない場合も入社したい旨 「難しい場合でも、入社の意思に変わりはございません。ご検討いただけますと幸いです。」
③が最も重要です。この一文があるかどうかで、交渉が「条件闘争」ではなく「相談」になります。③を省くと、企業側は「断られるかもしれない」と身構えます。
根拠として使えるもの
- 現職の年収実績(給与明細や源泉徴収票で示せる範囲)
- 他社からの内定条件(金額を具体的に言うかは慎重に)
- 求人票に記載された想定年収の幅(下限で提示されている場合)
使えないもの
- 「生活費がかかるので」(企業側に関係がない)
- 「同年代の平均が」(根拠として弱い)
7. エージェントなしの3つの落とし穴
落とし穴1:情報収集を省略してしまう
最も多い失敗です。エージェントがいないと、企業の内情を確認する工程がまるごと抜けます。結果として、求人票の情報だけで判断して入社し、また合わずに辞めることになります。
対策は、第5章のステップ2を必ず実行することです。1社15分の調査を省くと、エージェントを使わない意味そのものが失われます。
落とし穴2:応募社数が少なくなる
自分で探すため、どうしても応募数が減ります。3〜5社しか応募せず、全部落ちて振り出しに戻るのが典型パターンです。
対策は、最初に20社リストアップしてから応募を始めること。探しながら応募すると、必ず数が足りなくなります。
落とし穴3:客観的な視点が入らない
エージェントは、書類の添削と、応募先の妥当性について第三者の意見をくれます。これがないと、職務経歴書の弱点に自分で気づけません。
対策は2つあります。①エージェントに1社だけ登録して書類添削だけ受ける(応募はしなくてよい)、②転職経験のある知人に職務経歴書を見てもらう。①は完全に可能で、実際によく使われる方法です。
8. エージェントと併用するのが最も現実的
ここまで書いておいてなんですが、実務上は「エージェントも使いつつ、直接応募もする」が最も合理的です。
| 使い分け | 内容 |
|---|---|
| エージェント経由 | 非公開求人、書類添削、面接対策、業界の相場感の把握 |
| 直接応募 | 行きたい企業が明確な場合、中小・スタートアップ |
| 転職サイト | 求人の全体像の把握、市場の相場感 |
両方を使ってはいけないというルールはありません。同じ企業に両方から応募すると重複応募になるため、そこだけ管理すれば問題ありません。
特に第二新卒の場合、書類添削と面接対策の価値は大きいです。職務経歴が薄い時期は、書き方で通過率が大きく変わるためです。エージェントを「求人紹介の窓口」ではなく「書類と面接のコーチ」として使うのは、十分に合理的な使い方です。
9. よくある質問
エージェントを使わないと、非公開求人には応募できませんか?
非公開求人はエージェント経由でのみ応募できます。ただし「非公開だから良い求人」とは限りません。非公開にする理由は、応募が殺到するのを避けたい、競合に知られたくない、退職者の補充であることを伏せたい、など様々です。公開求人の中にも良い求人は十分にあります。
直接応募のほうが内定が出やすいというのは本当ですか?
企業によります。紹介手数料の負担が重い中小企業では有利に働く場合がありますが、大手企業ではほとんど差がありません。直接応募の本当の利点は、コストではなく「自分で企業を見つけて調べているため、志望動機が具体的になること」です。
職務経歴書は誰にチェックしてもらえばいいですか?
エージェントに1社登録して添削だけ受けるのが最も確実です。登録しても、紹介された求人に応募する義務はありません。それが気が引ける場合、転職経験のある知人か、ハローワークの職業相談窓口でも書類の相談は可能です。
面接の日程調整を自分でやるのは大変ですか?
3社程度なら問題ありませんが、10社並行すると、週に5〜10通のメールのやり取りが発生します。在職中だと、返信が翌日になり、日程が後ろにずれていきます。並行数が多い場合は、エージェント併用のメリットが大きくなります。
年収交渉は、直接応募だと不利ですか?
不利ではありませんが、自分で言う必要があるという心理的な負荷があります。第6章の3要素(感謝と意欲/希望額と根拠/調整がつかなくても入社したい旨)の順で伝えれば、関係が悪化することはありません。交渉自体を理由に内定が取り消されることは、実務上ほぼありません。
応募後、返信が来ないときはどうすればいいですか?
1週間経っても連絡がなければ、問い合わせて構いません。「◯月◯日に応募いたしました◯◯と申します。選考状況についてご確認をお願いできますでしょうか」で十分です。エージェント経由なら担当者がやる部分ですが、直接応募では自分でやります。催促によって印象が悪くなることは、まずありません。
リファラル(知人紹介)は使うべきですか?
通過率は高いですが、断りにくくなるという構造上の問題があります。使う場合は、紹介を受ける段階で「他社も見ています」と伝えておいてください。また、紹介者に給与や勤務条件の詳細を確認するのは避け、必ず人事に直接確認してください。紹介者経由の情報は、善意でも不正確なことがあります。
エージェントに登録すると、しつこく連絡が来ませんか?
担当者によります。連絡頻度は最初の面談で伝えておけば調整されます。「週1回のメールでお願いします」「電話は平日19時以降でお願いします」と最初に言えば、それに沿って対応されるのが一般的です。合わない担当者の場合、担当変更を申し出るか、そのエージェントの利用を止めれば済みます。
10. まとめ:今夜やる3つのこと
エージェントを使わない転職は、十分に成立します。ただし「探す」「管理する」「交渉する」の3つを自分で引き受ける覚悟が要ります。そこさえ押さえれば、直接応募には確かな利点があります。
今夜やること
① 転職サイトで職種と条件を絞り、気になる企業を20社リストアップする(この時点では応募しない)
② そのうち3社について、採用ページと直近のプレスリリースを読む(15分×3社)
③ 表計算ソフトで進行管理表の枠を作る(企業名/応募日/選考段階/次のアクション/期限)
③を先に作っておくことが、直接応募で最も効きます。並行応募の失敗はほぼ全部「抜け」から起きるので、管理の枠だけは応募前に用意してください。
この先、読むべき記事
- 転職サイトの選び方|第二新卒がエージェントと使い分ける基準(サイト経由で進めるなら)
- 転職エージェントは複数社使うべきか|第二新卒の並行運用と重複応募の防ぎ方(併用するなら)
- 求人検索エンジンの使い方|第二新卒が転職サイトと使い分ける基準(企業を自分で探すなら)
- 求人票からブラック企業を見抜く|第二新卒が2社目を外さない15のチェック(自分で企業を調べるとき)
- 転職エージェントの断り方|第二新卒が使える文面と場面別の手順(エージェントの断り方)
- 企業の採用ページから直接応募|第二新卒が使うべき場面と手順(採用ページからの直接応募)
- エージェント経由と直接応募の違い|同じ求人で通過率が変わる理由(直接応募が有利になる場面)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。