第二新卒のキャリアを深掘りする。
書類

守秘義務がある仕事の書き方|性質と量だけで伝える【2026年版】

木戸 悠介 なぜキャリア? 編集長 公開 2026年9月6日 読了 約15分
守秘義務がある仕事の書き方|性質と量だけで伝える【2026年版】

職務経歴書に業務内容を書こうとして、「これは書いていいのか」で手が止まる。この状況は、特定の職種で頻繁に起きます。

金融、医療、法務、警備、公務、そして一般企業でも顧客情報を扱う職種。具体的な案件の内容を書けないため、「〇〇として3年間勤務」で終わってしまう。

ただ、書ける範囲はあります。この記事では、書けることと書けないことの線引きと、性質と量で伝える方法を整理します。

なお、守秘義務の範囲は雇用契約や誓約書、業法の定めによって変わります。判断に迷う場合は、勤務先の規程を確認のうえ、必要に応じて専門機関にご確認ください。

1. 結論:書くのは「何をしたか」ではなく「どういう業務を、どのくらい」

書けないもの:個別の案件の内容。顧客名、案件名、取引の内容、システムの構成。

書けるもの:業務の性質と量。どういう種類の業務を、1日あたり何件、何年やったか。

この線引きで、ほとんどの職種は書けます。

書けないこと書けること
「〇〇社の案件を担当」「法人向けの案件を月8件担当」
「〇〇の内容の相談を受けた」「年間約400件の相談対応」
「〇〇システムの改修」「小売業向け在庫管理システムの改修」
「〇〇様の対応」「1日平均12名の対応」

右の列に、判断材料は十分に含まれています。読み手が知りたいのは、個別の案件の内容ではなく、その人がどういう業務をどのくらいやってきたかです。

2. 書ける範囲の線引き

項目書けるか
勤務先の会社名書ける(一般に公開情報)
所属部署・職種書ける
業務の種類書ける
担当した件数・人数書けることが多い
担当した規模(金額の桁など)判断が分かれる。迷えば書かない
顧客の業種特定できない形なら書けることが多い
顧客名・案件名書けない
取引の具体的な内容書けない
内部のシステム構成書けない
非公開の数値書けない

5行目と6行目が判断に迷う部分です。

原則:迷ったら書かない。書かなくても、業務の性質と量で十分に伝わります。

判断の基準

「この記述から、特定の顧客や案件が推測できるか」を考えてください。推測できるなら書かない、できないなら書ける、という線引きです。

「地方銀行向けのシステム開発を担当」→ 業種は広く、特定できない。書ける。 「〇〇県の第二地銀向けのシステム開発を担当」→ 絞り込むと特定できる可能性。書かない。

3. 編集長が相談を受けた話:書けないと思い込んでいた

金融機関から転職を考えていた方から、相談を受けました。

相談者「職務経歴書に書けることがなくて」

私「業務は何を担当されてました?」

相談者「法人のお客様の融資の審査です。ただ、案件の内容は書けないので」

私「案件の内容は書かなくていいです。1日に何件くらい見てました?」

相談者「多いときで8件、平均5件くらいです」

私「担当していた企業の規模は?」

相談者「中小企業が中心です。年商1億から30億くらいの」

私「それ、全部書けますよね」

本人は「案件の内容を書けない=何も書けない」と思い込んでいました。

書けたのはこういう内容です。

「地域金融機関にて法人融資の審査業務を2年6か月担当。中小企業(年商1億〜30億円規模)を対象に、1日平均5件、繁忙期は8件の審査を担当しました。財務諸表の分析と、事業内容のヒアリングをもとに稟議書を作成し、月間約100件を処理しています。」

個別の案件は1つも書いていませんが、業務の性質と量は十分に伝わります。

「書けない」のは案件の内容だけで、業務そのものは書けます。

4. 職種別の書き方

金融(審査・営業)

「法人融資の審査業務を2年6か月担当。中小企業を対象に1日平均5件の審査を実施。財務諸表の分析と稟議書の作成を担当し、月間約100件を処理。」

医療事務・医療職

「〇〇科の外来にて医療事務を2年担当。1日平均60名の受付と会計、レセプト作成を担当。返戻件数を月5件から1件以下に改善。」

法務

「法務部にて契約書の審査を2年担当。年間約200件の契約書をレビューし、うち新規取引先との契約が約60件。契約類型別のチェックリストを作成し、部内3名で運用。」

エンジニア(受託開発)

「小売業向け在庫管理システム(利用店舗約80店)の保守・改修を2年担当。チーム5名のうち、集計処理と画面表示部分の改修を担当。」

警備・公務

「オフィスビル(入居企業12社、1日の来訪者約300名)にて施設警備を2年3か月担当。24時間隔日勤務で、1勤務あたり8フロアの巡回を6回実施。」

共通する構造

要素内容
業務の種類「法人融資の審査」「契約書の審査」
対象の範囲「中小企業」「小売業向け」
件数、人数、頻度
期間年月
自分で変えたこと改善の取り組み

5つとも、個別の案件に触れずに書けます。

5. 「自分で変えたこと」の書き方

ここが最も差がつく部分です。そして、守秘義務に触れずに書けます。

書ける改善の例

  • 手順書やチェックリストを作った
  • 処理の順番を変えた
  • 記録の形式を統一した
  • 確認のタイミングを変えた
  • 新人向けの資料を作った

いずれも、個別の案件の内容ではなく、業務の進め方の話です。

書き方の例

「契約類型別のチェックリストを作成し、部内3名で運用しました。それまで担当者ごとに確認の観点が異なっていたため、差し戻しの発生率にばらつきがありました。チェックリストの導入後、差し戻しの件数が月8件から3件に減っています。」

この記述に、守秘義務に触れる内容は1つもありません。

それでも、この人が何を考えて何をしたかは十分に伝わります。

探し方

「誰にも言われていないのに始めたことは何か」を3つ書き出してください。その3つが、書類の中心になります。

6. 面接で聞かれた場合

面接では、書類より踏み込んだ質問が来ることがあります。

基本の答え方

「具体的な案件の内容は守秘義務の関係でお話しできませんが、業務の進め方についてはお答えできます。」

この一言を最初に置いてください。これがないと、答えを渋っているように見えます。

答えられる範囲

質問答え方
「どのような案件を担当しましたか」業種と規模、件数で答える
「難しかった案件は」案件の内容ではなく、難しさの性質で答える
「どう判断しましたか」判断の基準を答える(案件の内容は伏せる)
「顧客名を教えてください」答えない。「守秘義務のためお答えできません」

2行目の答え方の例

「特定の案件の内容はお話しできませんが、難しさの種類で言うと、社内の複数部署の判断が必要な案件でした。それぞれの部署が異なる観点で見るため、確認の順番を決めていないと差し戻しが繰り返される。そこで、確認の順番を先に決めて、必要な資料を一度に揃える形に変えました。」

案件の内容を一切言わずに、仕事の進め方を説明できています。

4行目の質問が来た場合、断って構いません。むしろ、ここで答えてしまうと、「転職先でもうちの情報を外で話す」と見られます。

7. 面接で追撃される3問

Q1「守秘義務の範囲をどう判断していますか」

回答例:「顧客が特定できる情報と、内部の判断基準に関する情報は話さない、という線で判断しています。業務の種類や件数は、特定につながらないため書類にも記載しています。」

Q2「入社後、前職の知識をどう活かしますか」

回答例:「業務の進め方や判断の考え方は活かせると思っています。ただ、前職で得た顧客の情報や内部の資料を使うことはできませんので、そこは前提として持ち込まない形で考えています。」

この答えは、実は評価されます。秘密保持の意識がある人だと伝わるためです。

Q3「前職の顧客を紹介してもらえますか」

回答例:「前職で知り得た顧客情報は、秘密保持の対象になると理解しています。そのため、前職の顧客リストを使った営業はできません。ゼロから開拓する形で進めたいと考えています。」

この質問は、実際に聞かれることがあります。ここで「できます」と答えると、逆に信用されません。

8. 作る手順と時間配分

手順やること目安時間
1担当した業務の「種類」を書き出す20分
2それぞれの「量」を思い出す(件数・人数・頻度)40分
3対象の範囲を書く(業種、規模など)20分
4自分で変えたことを3つ書き出す30分
5書いた内容から個別の案件が推測できないか確認15分
6判断に迷う記述を削る10分

手順5を必ずやってください。書き終えたら、第三者の目で読んで「この記述から特定の顧客や案件が分かるか」を確認します。

手順6の原則は「迷ったら削る」です。削っても、業務の性質と量は残ります。

手順4が、書類の中心になります。ここが埋まらない場合、「誰にも言われていないのに始めたこと」を思い出す作業に時間をかけてください。

9. よくある質問

会社名は書いていいですか

一般に公開されている情報なので、書けることがほとんどです。ただし、勤務先が非公開である特殊な事情がある場合は、業種と規模で表記してください。

金額の規模は書けますか

判断が分かれます。「年商1億〜30億円規模の企業を対象」のように幅で書けば、特定にはつながりにくくなります。迷う場合は書かないでください。

顧客の業種は書けますか

「小売業向け」「金融機関向け」のように広い範囲なら書けることが多いです。絞り込むと特定される可能性があるため、注意してください。

退職後も守秘義務は続きますか

続くのが一般的です。誓約書や就業規則の定めを確認してください。

面接で答えられないと不利になりますか

なりません。むしろ、線引きができている人だと評価されます。ただし、「お答えできません」だけで終わらせず、答えられる範囲を示してください。

書けることが少なすぎます

第5章の「自分で変えたこと」に時間をかけてください。ここは守秘義務に触れずに書ける部分で、かつ最も差がつきます。

前職の資料を参考にしていいですか

会社の資料を持ち出すことは、秘密保持の問題になります。自分の記憶と、公開されている情報の範囲で書いてください。

エージェントには詳しく話していいですか

担当者も守秘義務を負っていますが、顧客名や内部の情報まで話す必要はありません。業務の性質と量で十分です。

10. まとめ:今日やる3つのこと

守秘義務がある職種でも、書けることは十分にあります。

1つめ、担当した業務の「種類」と「量」を書き出す。件数、人数、頻度、期間。個別の案件に触れずに書ける部分です。所要1時間。

2つめ、「自分で変えたこと」を3つ書き出す。手順書、チェックリスト、記録の形式、確認の順番。ここが書類の中心になります。所要30分。

3つめ、書いた内容を読み返して、個別の案件が推測できないか確認する。迷う記述は削ってください。削っても、業務の性質と量は残ります。所要15分。

なお、守秘義務の範囲は雇用契約や誓約書、業法の定めによって変わります。判断に迷う場合は、勤務先の規程を確認のうえ、必要に応じて専門機関にご確認ください。

この先、読むべき記事

この記事を書いた人

木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。

23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。