守秘義務がある仕事の書き方|性質と量だけで伝える【2026年版】
職務経歴書に業務内容を書こうとして、「これは書いていいのか」で手が止まる。この状況は、特定の職種で頻繁に起きます。
金融、医療、法務、警備、公務、そして一般企業でも顧客情報を扱う職種。具体的な案件の内容を書けないため、「〇〇として3年間勤務」で終わってしまう。
ただ、書ける範囲はあります。この記事では、書けることと書けないことの線引きと、性質と量で伝える方法を整理します。
なお、守秘義務の範囲は雇用契約や誓約書、業法の定めによって変わります。判断に迷う場合は、勤務先の規程を確認のうえ、必要に応じて専門機関にご確認ください。
1. 結論:書くのは「何をしたか」ではなく「どういう業務を、どのくらい」
書けないもの:個別の案件の内容。顧客名、案件名、取引の内容、システムの構成。
書けるもの:業務の性質と量。どういう種類の業務を、1日あたり何件、何年やったか。
この線引きで、ほとんどの職種は書けます。
例
| 書けないこと | 書けること |
|---|---|
| 「〇〇社の案件を担当」 | 「法人向けの案件を月8件担当」 |
| 「〇〇の内容の相談を受けた」 | 「年間約400件の相談対応」 |
| 「〇〇システムの改修」 | 「小売業向け在庫管理システムの改修」 |
| 「〇〇様の対応」 | 「1日平均12名の対応」 |
右の列に、判断材料は十分に含まれています。読み手が知りたいのは、個別の案件の内容ではなく、その人がどういう業務をどのくらいやってきたかです。
2. 書ける範囲の線引き
| 項目 | 書けるか |
|---|---|
| 勤務先の会社名 | 書ける(一般に公開情報) |
| 所属部署・職種 | 書ける |
| 業務の種類 | 書ける |
| 担当した件数・人数 | 書けることが多い |
| 担当した規模(金額の桁など) | 判断が分かれる。迷えば書かない |
| 顧客の業種 | 特定できない形なら書けることが多い |
| 顧客名・案件名 | 書けない |
| 取引の具体的な内容 | 書けない |
| 内部のシステム構成 | 書けない |
| 非公開の数値 | 書けない |
5行目と6行目が判断に迷う部分です。
原則:迷ったら書かない。書かなくても、業務の性質と量で十分に伝わります。
判断の基準
「この記述から、特定の顧客や案件が推測できるか」を考えてください。推測できるなら書かない、できないなら書ける、という線引きです。
例
「地方銀行向けのシステム開発を担当」→ 業種は広く、特定できない。書ける。 「〇〇県の第二地銀向けのシステム開発を担当」→ 絞り込むと特定できる可能性。書かない。
3. 編集長が相談を受けた話:書けないと思い込んでいた
金融機関から転職を考えていた方から、相談を受けました。
相談者「職務経歴書に書けることがなくて」
私「業務は何を担当されてました?」
相談者「法人のお客様の融資の審査です。ただ、案件の内容は書けないので」
私「案件の内容は書かなくていいです。1日に何件くらい見てました?」
相談者「多いときで8件、平均5件くらいです」
私「担当していた企業の規模は?」
相談者「中小企業が中心です。年商1億から30億くらいの」
私「それ、全部書けますよね」
本人は「案件の内容を書けない=何も書けない」と思い込んでいました。
書けたのはこういう内容です。
「地域金融機関にて法人融資の審査業務を2年6か月担当。中小企業(年商1億〜30億円規模)を対象に、1日平均5件、繁忙期は8件の審査を担当しました。財務諸表の分析と、事業内容のヒアリングをもとに稟議書を作成し、月間約100件を処理しています。」
個別の案件は1つも書いていませんが、業務の性質と量は十分に伝わります。
「書けない」のは案件の内容だけで、業務そのものは書けます。
4. 職種別の書き方
金融(審査・営業)
「法人融資の審査業務を2年6か月担当。中小企業を対象に1日平均5件の審査を実施。財務諸表の分析と稟議書の作成を担当し、月間約100件を処理。」
医療事務・医療職
「〇〇科の外来にて医療事務を2年担当。1日平均60名の受付と会計、レセプト作成を担当。返戻件数を月5件から1件以下に改善。」
法務
「法務部にて契約書の審査を2年担当。年間約200件の契約書をレビューし、うち新規取引先との契約が約60件。契約類型別のチェックリストを作成し、部内3名で運用。」
エンジニア(受託開発)
「小売業向け在庫管理システム(利用店舗約80店)の保守・改修を2年担当。チーム5名のうち、集計処理と画面表示部分の改修を担当。」
警備・公務
「オフィスビル(入居企業12社、1日の来訪者約300名)にて施設警備を2年3か月担当。24時間隔日勤務で、1勤務あたり8フロアの巡回を6回実施。」
共通する構造
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 業務の種類 | 「法人融資の審査」「契約書の審査」 |
| 対象の範囲 | 「中小企業」「小売業向け」 |
| 量 | 件数、人数、頻度 |
| 期間 | 年月 |
| 自分で変えたこと | 改善の取り組み |
5つとも、個別の案件に触れずに書けます。
5. 「自分で変えたこと」の書き方
ここが最も差がつく部分です。そして、守秘義務に触れずに書けます。
書ける改善の例
- 手順書やチェックリストを作った
- 処理の順番を変えた
- 記録の形式を統一した
- 確認のタイミングを変えた
- 新人向けの資料を作った
いずれも、個別の案件の内容ではなく、業務の進め方の話です。
書き方の例
「契約類型別のチェックリストを作成し、部内3名で運用しました。それまで担当者ごとに確認の観点が異なっていたため、差し戻しの発生率にばらつきがありました。チェックリストの導入後、差し戻しの件数が月8件から3件に減っています。」
この記述に、守秘義務に触れる内容は1つもありません。
それでも、この人が何を考えて何をしたかは十分に伝わります。
探し方
「誰にも言われていないのに始めたことは何か」を3つ書き出してください。その3つが、書類の中心になります。
6. 面接で聞かれた場合
面接では、書類より踏み込んだ質問が来ることがあります。
基本の答え方
「具体的な案件の内容は守秘義務の関係でお話しできませんが、業務の進め方についてはお答えできます。」
この一言を最初に置いてください。これがないと、答えを渋っているように見えます。
答えられる範囲
| 質問 | 答え方 |
|---|---|
| 「どのような案件を担当しましたか」 | 業種と規模、件数で答える |
| 「難しかった案件は」 | 案件の内容ではなく、難しさの性質で答える |
| 「どう判断しましたか」 | 判断の基準を答える(案件の内容は伏せる) |
| 「顧客名を教えてください」 | 答えない。「守秘義務のためお答えできません」 |
2行目の答え方の例
「特定の案件の内容はお話しできませんが、難しさの種類で言うと、社内の複数部署の判断が必要な案件でした。それぞれの部署が異なる観点で見るため、確認の順番を決めていないと差し戻しが繰り返される。そこで、確認の順番を先に決めて、必要な資料を一度に揃える形に変えました。」
案件の内容を一切言わずに、仕事の進め方を説明できています。
4行目の質問が来た場合、断って構いません。むしろ、ここで答えてしまうと、「転職先でもうちの情報を外で話す」と見られます。
7. 面接で追撃される3問
Q1「守秘義務の範囲をどう判断していますか」
回答例:「顧客が特定できる情報と、内部の判断基準に関する情報は話さない、という線で判断しています。業務の種類や件数は、特定につながらないため書類にも記載しています。」
Q2「入社後、前職の知識をどう活かしますか」
回答例:「業務の進め方や判断の考え方は活かせると思っています。ただ、前職で得た顧客の情報や内部の資料を使うことはできませんので、そこは前提として持ち込まない形で考えています。」
この答えは、実は評価されます。秘密保持の意識がある人だと伝わるためです。
Q3「前職の顧客を紹介してもらえますか」
回答例:「前職で知り得た顧客情報は、秘密保持の対象になると理解しています。そのため、前職の顧客リストを使った営業はできません。ゼロから開拓する形で進めたいと考えています。」
この質問は、実際に聞かれることがあります。ここで「できます」と答えると、逆に信用されません。
8. 作る手順と時間配分
| 手順 | やること | 目安時間 |
|---|---|---|
| 1 | 担当した業務の「種類」を書き出す | 20分 |
| 2 | それぞれの「量」を思い出す(件数・人数・頻度) | 40分 |
| 3 | 対象の範囲を書く(業種、規模など) | 20分 |
| 4 | 自分で変えたことを3つ書き出す | 30分 |
| 5 | 書いた内容から個別の案件が推測できないか確認 | 15分 |
| 6 | 判断に迷う記述を削る | 10分 |
手順5を必ずやってください。書き終えたら、第三者の目で読んで「この記述から特定の顧客や案件が分かるか」を確認します。
手順6の原則は「迷ったら削る」です。削っても、業務の性質と量は残ります。
手順4が、書類の中心になります。ここが埋まらない場合、「誰にも言われていないのに始めたこと」を思い出す作業に時間をかけてください。
9. よくある質問
会社名は書いていいですか
一般に公開されている情報なので、書けることがほとんどです。ただし、勤務先が非公開である特殊な事情がある場合は、業種と規模で表記してください。
金額の規模は書けますか
判断が分かれます。「年商1億〜30億円規模の企業を対象」のように幅で書けば、特定にはつながりにくくなります。迷う場合は書かないでください。
顧客の業種は書けますか
「小売業向け」「金融機関向け」のように広い範囲なら書けることが多いです。絞り込むと特定される可能性があるため、注意してください。
退職後も守秘義務は続きますか
続くのが一般的です。誓約書や就業規則の定めを確認してください。
面接で答えられないと不利になりますか
なりません。むしろ、線引きができている人だと評価されます。ただし、「お答えできません」だけで終わらせず、答えられる範囲を示してください。
書けることが少なすぎます
第5章の「自分で変えたこと」に時間をかけてください。ここは守秘義務に触れずに書ける部分で、かつ最も差がつきます。
前職の資料を参考にしていいですか
会社の資料を持ち出すことは、秘密保持の問題になります。自分の記憶と、公開されている情報の範囲で書いてください。
エージェントには詳しく話していいですか
担当者も守秘義務を負っていますが、顧客名や内部の情報まで話す必要はありません。業務の性質と量で十分です。
10. まとめ:今日やる3つのこと
守秘義務がある職種でも、書けることは十分にあります。
1つめ、担当した業務の「種類」と「量」を書き出す。件数、人数、頻度、期間。個別の案件に触れずに書ける部分です。所要1時間。
2つめ、「自分で変えたこと」を3つ書き出す。手順書、チェックリスト、記録の形式、確認の順番。ここが書類の中心になります。所要30分。
3つめ、書いた内容を読み返して、個別の案件が推測できないか確認する。迷う記述は削ってください。削っても、業務の性質と量は残ります。所要15分。
なお、守秘義務の範囲は雇用契約や誓約書、業法の定めによって変わります。判断に迷う場合は、勤務先の規程を確認のうえ、必要に応じて専門機関にご確認ください。
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この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。