介護・福祉業界へ転職する|第二新卒が現場職以外の職種を知る【2026年版】
〜収益が制度で決まる、という一点を知るだけで見え方が変わります〜
介護・福祉業界は、人手が不足しており、未経験でも入りやすい業界として知られています。その一方で、給与や働き方の面から敬遠されることもあります。
ただ、この業界を「現場で介助をする仕事」だけで理解すると、実態を見誤ります。
この業界の最大の特徴は、収益の大部分が制度によって決まることです。提供したサービスに応じて報酬が決まる仕組みがあり、事業者が自由に価格を決められるわけではありません。
この構造を知ると、なぜ給与がこの水準なのか、事業者は何で差をつけようとしているのかが見えてきます。この記事では、そこから整理します。
1. 結論:押さえるべきは3点
この業界を理解する3つの軸
① 収益は制度に基づいて決まる(事業者が価格を自由に決められない)
② サービスの種別によって働き方がまったく違う
③ 現場職以外に、運営・本部・関連事業の職種がある
①がこの業界の構造を決めています。
そのため、事業者は「どれだけ効率よく、質を保って運営できるか」で差がつきます。人員の配置、稼働率、記録の仕組みが経営の焦点になります。
この理解があると、志望動機が「人の役に立ちたい」から一段深くなります。
なお、介護・福祉に関する制度には法令上の定めがあり、報酬や基準は改定されます。この記事は一般的な整理であり、個別の判断は専門機関や所管の窓口に確認してください。
2. サービス種別の違い
| 種別 | 中身 | 働き方 |
|---|---|---|
| 訪問系 | 利用者の自宅へ訪問して支援 | 移動が多い、1対1 |
| 通所系(デイサービス) | 日中に施設で過ごしてもらう | 日勤中心、夜勤なし |
| 入所系(特養・老健など) | 施設で生活を支える | 交替制、夜勤あり |
| 居住系(グループホームなど) | 少人数での生活を支える | 交替制 |
| 障がい福祉 | 障がいのある方の生活や就労を支援 | 事業により異なる |
| 相談・調整 | 計画の作成、関係機関との調整 | 日勤中心 |
「夜勤があるかどうか」は、種別によってはっきり分かれます。
通所系と相談・調整の職種は、日勤中心です。夜勤を避けたい場合、この2つが選択肢になります。
出る側の視点は介護職から一般企業へ転職|第二新卒が現場経験を武器に変える5ステップにまとめています。入る前に読んでおくと、離れる人の理由が分かります。
3. 現場職以外の職種
| 職種 | 仕事の中身 | 未経験の可否 |
|---|---|---|
| 生活相談員・支援相談員 | 利用者と家族、関係機関の調整 | 資格要件がある場合が多い |
| ケアマネジャー | 計画の作成 | 実務経験と資格が前提 |
| 施設の運営管理 | 人員、稼働、収支の管理 | 経験により可 |
| 本部の管理部門 | 人事、経理、施設開発 | 経験により可 |
| 営業・地域連携 | 医療機関や地域への働きかけ | 可能 |
| 介護関連の事業会社 | 記録の仕組み、用具、給食など | 可能 |
| 障がい者の就労支援 | 企業とのマッチング、定着支援 | 可能 |
最後の2つは、この業界の外側に近い位置にあります。
介護記録の仕組みを提供する会社、福祉用具を扱う会社、給食を提供する会社などは、業界を顧客とする事業者です。現場の経験があると、顧客の事情が分かるため強くなります。
就労支援の領域も、企業と利用者の間に立つ仕事であり、営業や人材の経験が活きます。
本部・運営側への道筋
現場から運営側へ移るには、材料が必要です。
在籍中に作る材料
・稼働率や利用者数を把握していた
・シフトの作成を担当していた
・記録の書き方を統一する仕組みを作った
・新人の教育を担当していた
「現場しかやっていない」と思っている人ほど、この4つのどれかを持っています。数字と仕組みの話に翻訳できるかどうかが分かれ目です。
4. 話を聞いた例:現場から関連事業へ移った人
知人に、入所施設の介護職から、介護記録の仕組みを提供する会社へ移った人がいます。
その人が書類に書いたのは、次のような内容でした。
前職から出した材料
・記録の書き方が人によって違い、引き継ぎで漏れが出ていた
・書式を統一し、記入にかかる時間を短縮した
・シフトを作成し、人員の配置を調整していた
・新人が定着しない原因を分析し、教育の順番を変えた
1つ目と2つ目が決め手になりました。
現場の記録に何が起きているかを知っている人は、その仕組みを売る側にとって貴重です。顧客の困りごとを、体験として知っているからです。
面接では「人の役に立つ仕事がしたい」ではなく、「記録に時間を取られて、利用者と向き合う時間が減っていた。その時間を戻す側に回りたい」という形で話しました。
業界を離れずに、現場を離れるという選択肢があります。
5. 資格の位置づけ
| 資格 | 位置づけ |
|---|---|
| 介護職員初任者研修 | 入口の資格。未経験でも取得しやすい |
| 実務者研修 | 次の段階。上位資格の前提になる |
| 介護福祉士 | 国家資格。実務経験が要件 |
| ケアマネジャー | さらに上位。実務経験が要件 |
| 社会福祉士 | 相談援助の国家資格 |
この業界の特徴は、資格と実務経験が段階的につながっていることです。
入社後に資格を取得する支援制度を持つ事業者が多くあります。費用の負担や勤務中の受講が可能かを、面接で確認してください。
資格の要件や制度は改定されることがあります。最新の要件は所管の窓口や専門機関で確認してください。資格の考え方は第二新卒に資格は必要か|取ってから動くか、動きながら取るかの判断を参照してください。
6. 待遇と働き方の実態
| 項目 | 傾向 |
|---|---|
| 給与 | 制度に基づく収益のため、大きな幅は出にくい |
| 資格手当 | 支給されるのが一般的 |
| 夜勤手当 | 入所系では別途支給される |
| 休日 | シフト制。種別による |
| 人員配置 | 基準が定められている |
給与について、事業者が自由に上げられる構造ではないという点は理解しておく必要があります。
その中で差がつくのは、資格手当、夜勤の回数、役職手当です。求人票の年収欄を見るときは、その内訳を確認してください。
読み方は求人票の年収の読み方|第二新卒が6項目に分解して比較する手順にまとめています。
7. 確認する7項目
確認する7項目
① サービスの種別(訪問/通所/入所/居住/障がい福祉)
② 夜勤の有無と回数
③ 人員の配置状況(基準に対してどうか)
④ 資格取得の支援内容
⑤ 記録や業務の仕組み(紙か、システムか)
⑥ 離職の状況と、直近の採用の動き
⑦ 運営側への異動の実績
③と⑤は、働きやすさに直結します。
人員が基準ぎりぎりの事業所と、余裕がある事業所では、日々の負担がまったく違います。また、記録の仕組みが整っている事業所は、事務作業の時間が短くなります。
この2つを面接で聞くと、事業所の実態が見えます。
8. 面接で聞かれることと答え方
| 質問 | 見られていること | 答え方の軸 |
|---|---|---|
| なぜこの業界か | 理解の深さ | 制度に基づく収益の話に触れる |
| 夜勤は可能か | 条件の合致 | 曖昧にしない |
| 体力面は大丈夫か | 認識の確認 | 正直に答える |
| 前職で人と関わった経験 | 適性 | 具体的な場面で話す |
| 資格取得の意思 | 継続性 | 具体的に答える |
「人の役に立ちたい」だけの志望動機は、この業界では最も多く聞かれます。
代わりに、「収益が制度で決まる中で、事業者は運営の質で差をつけている。その運営に関わりたい」という理解を示すと、他の応募者と差がつきます。
また、夜勤や体力面については、正直に答えてください。無理をして入ると続きません。
9. よくある質問
未経験でも入れますか
入れます。資格がなくても入れる求人があり、入社後に取得する支援制度を持つ事業者が多くあります。
給与は上がりますか
資格の取得、役職への昇格、夜勤の回数で変わります。ただし、制度に基づく収益のため、他業界のような大きな変動は起きにくい構造です。
夜勤を避けられますか
避けられます。通所系(デイサービス)と相談・調整の職種は日勤中心です。
体力に自信がありません
種別と職種によります。通所系や相談職では、身体的な負担が入所系より小さくなります。
現場以外の仕事に移れますか
移れます。運営管理、本部の管理部門、関連事業の会社という道筋があります。ただし、現場で数字と仕組みに関わる経験を作っておく必要があります。
障がい福祉と高齢者介護は違いますか
制度も支援の内容も違います。就労支援など、企業と関わる仕事は障がい福祉の領域にあります。
資格は先に取るべきですか
多くの場合、入社後の取得を前提としています。ただし、持っていると選べる求人が増えます。
他業界へ移るときに不利になりますか
なりません。ただし「何を担当し、どう改善したか」を数字で書ける必要があります。翻訳の手順は介護職から一般企業へ転職|第二新卒が現場経験を武器に変える5ステップにまとめています。
10. まとめ:今週やる3つのこと
介護・福祉業界は、収益が制度で決まるという構造を知ると、見え方が変わります。
今週やる3つのこと
① 求人をサービス種別で分けて読む(夜勤の有無が変わります)
② 面接で「人員の配置状況」と「記録の仕組み」を聞く準備をする
③ 前職で「人と関わって、仕組みを整えた」場面を書き出す
②が、事業所の実態を最も正確に映します。制度で収益が決まる以上、差が出るのは運営の質だからです。
この先、読むべき記事
- 介護職から一般企業へ転職|第二新卒が現場経験を武器に変える5ステップ(出る側の視点)
- 介護職の自己PR|第二新卒が対人経験を実績に変える例文6パターン(書類での書き方)
- 第二新卒に資格は必要か|取ってから動くか、動きながら取るかの判断(資格の取り方)
- 求人票の年収の読み方|第二新卒が6項目に分解して比較する手順(手当の内訳の確認)
- 財団法人・外郭団体へ転職する|第二新卒が求人を見つける手順(近い性質の組織)
- 給食・食品受託サービスへ転職する|第二新卒が現場職以外の職種を知る(施設の食事を担う会社)
- 福祉用具・介護用品の会社へ転職する|第二新卒が知る職種と入口(福祉用具という入口)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。