法務の面接|第二新卒が聞かれる想定問答12と評価される答え方【2026年版】
〜法務の面接で最も嫌われるのは、「リスクがあるので止めます」と答える人です〜
法務は、第二新卒からの転職が最も難しい職種のひとつです。求人数が少なく、経験者採用が中心で、法学部出身や法律関連の資格を持つ応募者が集まります。
それでも、未経験の枠がまったくないわけではありません。特に、事業拡大に伴って法務部門を立ち上げる企業や、契約書の量が増えて人手が必要な企業では、ポテンシャル採用が行われることがあります。
そして、その選考で最も重視されるのは、法律知識ではありません。
「事業を止めない法務ができるか」です。
「この契約はリスクがあるので締結できません」と言うだけの法務は、事業部門から相談されなくなります。相談されなくなれば、法務を通さずに契約が進み、結果的にリスクが増えます。
この記事では、段階別の想定問答12と、この理解を示す答え方を整理します。
1. 結論:法務の面接は3つの軸で採点されている
軸①:代替案を出せるか
最も重視される点です。「できません」ではなく「この条件を変えれば進められます」と言えるか。法務の価値は、リスクを指摘することではなく、リスクを管理したうえで事業を進める方法を示すことにあります。
軸②:リスクの大きさを区別できるか
すべてのリスクを同じ重さで扱うと、事業が止まります。「絶対に受けられない条項」と「望ましくないが受容できる条項」を区別できるかが問われます。
軸③:分からないことを扱えるか
法務は、判断を誤ると会社が損害を受ける職種です。推測で答えず、確認する、外部の弁護士に相談する、といった線引きができるかが見られます。
2. 一次面接(人事・法務メンバー)で聞かれる5問
2-1. Q1「自己紹介をお願いします」
1分。「契約書や規程に触れた経験」を入れてください。
回答例
「◯◯と申します。前職では不動産管理会社の総務部で、契約書類の管理と請求処理を2年間担当しておりました。管理していた契約は約120件、月に約180件の書類を処理しています。契約更新の期日管理を担当し、更新日の90日前・30日前に確認する仕組みを作って、更新漏れをゼロにしました。また、定型の契約書について、記載内容の確認を担当していました。契約の中身そのものに関わる仕事に移りたいと考え、法務職を志望しております。」
2-2. Q2「法務の仕事は、どんな仕事だと思いますか」
最重要の質問です。
回答例
「事業を、法的なリスクを管理したうえで進められる形にする仕事だと理解しています。契約書の審査、社内規程の整備、トラブル時の対応が主な業務ですが、目的はリスクをゼロにすることではなく、事業が止まらない形でリスクを管理することだと考えています。
リスクがあるから止める、という判断だけを続けると、事業部門が法務に相談しなくなり、結果的にリスクが増えると理解しています。」
2-3. Q3「なぜ法務を志望するのですか」
回答例
「前職で契約書類を扱うなかで、条項の意味を理解しないまま管理していることに不安を感じていました。特に、更新や解約の条件について、営業担当から質問を受けても答えられないことが何度かありました。
自分で調べるうちに、契約の条項が実際の業務にどう影響するかに関心を持つようになりました。書類を管理する側から、内容を判断する側に移りたいと考えています。」
2-4. Q4「法律の知識はどの程度ありますか」
正直に答えたうえで、学習の形跡を示してください。
回答例
「法学部出身ではなく、実務経験もありません。現在、ビジネス実務法務検定3級を取得しており、2級の学習を進めております。民法の契約に関する基本的な考え方と、下請法・独占禁止法の概要については学習しました。
ただ、実務では条文の知識より、その条項が実際の取引でどう機能するかを理解する必要があると伺っており、入社後に事業を理解しながら学んでいきたいと考えています。」
2-5. Q5「なぜ弊社ですか」
回答例
「御社は◯◯(事業)を展開されており、直近では◯◯(新規事業・海外展開など)にも取り組まれていると理解しています。事業の拡大に伴って、契約の種類と量が増える段階にあり、法務の役割が広がる環境だと考えました。前職でも、扱う契約の種類が増える過程で、管理の仕組みを作る経験をしています。」
3. 二次面接(法務責任者)で聞かれる4問
3-1. Q6「事業部門から『この契約を今日中に締結したい』と言われたら、どうしますか」
法務の面接で最頻出の質問です。
回答例
「まず、なぜ今日中なのかを確認します。先方の締切なのか、社内の事情なのかで、取れる手段が変わるためです。
そのうえで、リスクの大きさで対応を分けます。致命的な条項(無制限の損害賠償、一方的な解除権など)がある場合は、その部分だけでも修正を求めます。一方、望ましくないが受容できる範囲であれば、リスクを明示したうえで、事業部門と上長の判断で進めることもあると考えています。
すべてを完璧にしてから締結する、という運用は現実的でないと理解しています。何を必ず直し、何を許容するかを区別することが法務の役割だと考えています。」
「時間がかかっても確認します」だけでは不十分です。
3-2. Q7「契約書を見るとき、どこから確認しますか」
未経験でも、考え方は答えられます。
回答例
「実務経験はありませんが、学習した範囲では、次の順で見るべきだと理解しています。
まず、契約の目的と当事者。何をする契約で、誰と誰の間の契約かがずれていると、以降の条項が意味を持たないためです。
次に、金銭に関する条項。金額、支払時期、支払条件。
そして、責任に関する条項。損害賠償の範囲と上限、免責、保証。
最後に、終了に関する条項。契約期間、更新、解除の条件。
特に、損害賠償の上限が定められていない条項は、リスクが大きいと理解しています。」
3-3. Q8「分からない論点が出てきたら、どうしますか」
回答例
「推測で判断することはしません。法務の判断は会社の損害に直結するためです。
まず、社内の過去の類似案件を確認します。同じ論点が過去に扱われていれば、そのときの判断が参考になります。次に、上長に確認します。それでも判断がつかない場合は、顧問弁護士への相談を提案します。
ただし、『分かりません』で止めるのではなく、いつまでに回答できるかを事業部門に伝えることが必要だと考えています。」
3-4. Q9「事業部門と意見が対立したら、どうしますか」
回答例
「まず、なぜその条件で進めたいのかを聞きます。事業上の理由があるはずで、それを理解しないと代替案が出せないためです。
そのうえで、リスクの内容と大きさを具体的に説明します。『リスクがあります』ではなく、『この条項だと、こういう場合に当社が◯◯の責任を負う可能性があります』という形で。
最終的に、リスクを取るかどうかの判断は事業側と経営が行うものだと考えています。法務の役割は、判断に必要な情報を正確に出すことだと理解しています。」
4. 最終面接(役員・管理部長)で聞かれる3問
4-1. Q10「法務は事業のブレーキだと言われることがありますが、どう考えますか」
回答例
「ブレーキだけの法務は、機能しなくなると考えています。止められることが分かっていれば、事業部門は法務を通さずに進めるようになり、結果的に確認されないままリスクが残ります。
『この条件なら進められます』という形で代替案を出せることが、法務が相談される状態を保つ条件だと理解しています。相談される状態を維持すること自体が、リスク管理の一部だと考えています。」
4-2. Q11「3年後、どうなっていたいですか」
回答例
「まず1年で、定型的な契約書の審査を単独で行える状態を目指します。3年後には、非定型の契約についても論点を整理し、代替案を出せる状態になりたいと考えています。あわせて、ビジネス実務法務検定2級の取得と、社内規程の整備にも関わりたいと考えています。」
4-3. Q12「他社の選考状況を教えてください」
正直に、社数と段階を答えてください。
5. 面接前日の準備(90分)
| 時間 | やること |
|---|---|
| 25分 | 応募先の事業内容と、そこで発生する契約の種類を想像する |
| 20分 | 契約書を見る順序(目的→金銭→責任→終了)を言えるようにする |
| 20分 | 前職での「契約書や規程に触れた経験」を数字つきで整理 |
| 15分 | 「今日中に締結したい」への答えを声に出す(Q6) |
| 10分 | 逆質問を3つ用意 |
1番目が重要です。
事業内容によって、扱う契約の種類が変わります。
| 事業 | 主な契約 |
|---|---|
| メーカー | 売買契約、業務委託、秘密保持契約、品質保証 |
| SaaS・IT | 利用規約、業務委託、秘密保持、データの取扱い |
| 小売・EC | 取引基本契約、テナント契約、利用規約 |
| 人材 | 職業紹介、労働者派遣、業務委託 |
| 建設・不動産 | 請負契約、賃貸借契約、下請法の対応 |
「御社では、どのような種類の契約を扱われることが多いでしょうか」と面接で聞けると、業務理解の姿勢が伝わります。
6. 落ちる回答の型5つ
| 型 | 具体例 | なぜ落ちるか |
|---|---|---|
| 止める型 | 「リスクがあるので締結できません」 | 事業部門から相談されなくなる |
| 完璧主義型 | 「すべての条項を確認してから」 | 現実的でない。事業が止まる |
| 知識アピール型 | 条文の暗記を披露する | 実務は条文の適用と判断 |
| リスク一律型 | すべてのリスクを同じ重さで扱う | 優先順位がつけられない |
| 推測回答型 | 分からない論点を想像で答える | 法務で最も避けるべき行為 |
1番目が最も多く、最も致命的です。
法務の実務では、「NG」と言うことより「どう直せばOKになるか」を示すことのほうが、はるかに難しく、価値があります。
7. 未経験でも使える「法務に近い経験」
| 前職の経験 | 法務への翻訳 |
|---|---|
| 契約書の管理・更新 | 契約の管理、期日管理 |
| 定型契約の内容確認 | 契約審査の入口 |
| 社内規程の運用 | 規程の整備・運用 |
| 個人情報の取扱い | 個人情報保護の実務 |
| クレーム・トラブル対応 | 紛争の初期対応 |
| 取引先との条件交渉 | 契約交渉 |
| 社内からの問い合わせ対応 | 事業部門からの相談対応 |
| 書類の正確性の確認 | 契約書の確認 |
特に「契約書の管理」と「社内からの問い合わせ対応」の経験は、直接的に翻訳できます。
総務・営業事務・不動産・保険の実務経験者は、この職種で最も応募しやすい層です。
8. 面接の場での振る舞いで見られていること
| 項目 | 見られている点 |
|---|---|
| 断定を避けているか | 「絶対」「必ず」を安易に使っていないか |
| 代替案を出せるか | 「できない」で終わっていないか |
| 正確さ | 曖昧な表現を避けているか |
| 確認の姿勢 | 分からないことを推測で答えないか |
| 事業への関心 | 会社が何をしているかに触れるか |
「断定を避けているか」が、この職種で特に見られます。
法律の解釈には幅があり、事案によって結論が変わります。「絶対に問題ありません」「必ず勝てます」という言い方をする人は、法務では危険だと判断されます。
「一般的には◯◯と考えられますが、具体的な事案によります」という言い方ができると、この職種の姿勢が伝わります。
9. よくある質問
法学部出身でないと無理ですか?
不利ではありますが、不可能ではありません。特に、契約書の管理・確認の実務経験があると、翻訳して応募できます。ビジネス実務法務検定2級を取得しておくと、学習の形跡として明確に効きます。
求人が少ないのですが、どう探せばいいですか?
「法務」だけでなく、「総務・法務」「管理部門」「コンプライアンス」「契約管理」でも検索してください。中小企業では、総務と法務を兼務するポジションが多くあります。そこから法務の実務経験を積むのが、現実的な入口です。
資格は必要ですか?
必須ではありません。ビジネス実務法務検定2級、行政書士、宅建(不動産系)などが関連しますが、実務経験のほうが重視されます。未経験からの応募では、ビジネス実務法務検定が最も費用対効果が高い準備です。
英語力は必要ですか?
海外との取引がある企業では、英文契約書を扱うため必要になります。国内取引のみの企業では不要です。求人票の応募資格欄と、応募先の事業内容で判断してください。
「リスクがある」と言うだけではダメですか?
ダメです。リスクの指摘は、法務の仕事の入口に過ぎません。「この条項をこう変えれば、リスクが下がって進められます」という代替案までがセットです。面接では、必ず代替案を出す形で答えてください。
弁護士との違いは何ですか?
企業内の法務は、事業を進めるための実務を担います。訴訟の代理は弁護士の役割で、企業法務は契約審査、規程整備、リスク管理、紛争の初期対応が中心です。複雑な論点は顧問弁護士に相談する形が一般的です。
法務からのキャリアはどうなりますか?
法務のマネジメント、コンプライアンス、内部監査、経営企画などへの展開があります。また、事業を横断的に見る立場のため、事業部門への異動や、経営に近いポジションへ進むルートもあります。
逆質問は何を聞けばいいですか?
扱う契約の種類と体制について聞いてください。「どのような種類の契約を扱われることが多いでしょうか」「法務部門は何名体制でしょうか」「顧問弁護士への相談は、どのような場合に行われますか」。最初の質問は、事業への関心が伝わります。
10. まとめ:前日にやる3つのこと
法務の面接は、「止める人」ではなく「進める方法を示す人」として答えられるかで決まります。
前日にやること
① 応募先の事業内容から、扱う契約の種類を1つ想像する(第5章の表を参考に)
② 契約書を見る順序を言えるようにする(目的と当事者→金銭→責任→終了)
③ 「今日中に締結したいと言われたら」への答えを、声に出して1回言ってみる(第3章のQ6)
③が、この職種で最も重い質問です。「確認に時間をください」だけだと、事業を止める法務だと判断されます。リスクの大きさで対応を分ける、という考え方を示してください。
この先、読むべき記事
- 法務の志望動機|未経験・第二新卒の例文5パターンと現実的な入り方(志望動機の書き方)
- 総務の面接|第二新卒が聞かれる想定問答12と評価される答え方(兼務が多い隣接職種)
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- 第二新卒が狙える職種一覧|未経験からの入りやすさと3年後で選ぶ全体地図(他の職種も見るなら)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。