人材派遣の内勤から転職する|調整力を数字にする【2026年版】
人材派遣会社の内勤として2年。スタッフの登録面談、企業への提案、シフトの調整、トラブルの対応。毎日いろいろやっているが、何の専門性が身についたのか分からない。
これは、業務の幅が広すぎて、自分でも整理できていない状態です。
実際に身についているのは、複数の関係者を同時に動かして着地させる力です。スタッフ、派遣先の企業、社内の営業。この3者の間に立ち続ける仕事は、他の業界でそのまま評価されます。
問題は、それが職務経歴書に書けていないことです。「登録者の対応と企業への提案を担当」では、何をしていたか伝わりません。
この記事では、書ける数字、経験の言い換え方、狙える職種を整理します。
1. 結論:武器は3つ
①同時に動かした人数と企業数。担当していた登録者数、派遣先の企業数。この数字が、業務の規模を示します。
②板挟みの経験。スタッフと企業の希望が合わないときの調整は、そのまま法人営業やカスタマーサクセスに移せます。
③欠員対応のスピード。急な欠勤への対応は、優先順位づけと段取りの経験として書けます。
この3つは、人材業界の用語を使わずに説明できます。
2. 内勤の業務を分解する
| 業務 | 実際にやっていること |
|---|---|
| 登録面談 | 相手の希望と条件を聞き出し、記録する |
| マッチング | 条件を照合し、提案する |
| 企業への提案 | 要件を聞き、候補を提示する |
| 就業後のフォロー | 定期的な確認、問題の早期発見 |
| 欠員対応 | 短時間で代替を手配する |
| 契約の管理 | 期間、更新、条件の変更 |
| トラブル対応 | 双方の主張を聞き、着地点を作る |
これらは、名前を変えれば他業界の業務と同じです。
- 登録面談 → 顧客のヒアリング
- マッチング → 提案営業
- 就業後のフォロー → カスタマーサクセス
- 欠員対応 → 緊急時の優先順位づけ
- 契約の管理 → 契約更新の管理
職務経歴書では、後者の言葉で書いてください。
この置き換えができると、応募できる職種が一気に広がります。人材業界の中でしか通じない経験だと思っていたものが、営業や顧客対応の経験として書けるようになります。
3. 編集長の実体験:数字を出したら変わった
私の知人に、人材派遣会社の内勤から事業会社の営業に転職した人がいます。仮にDさんとします。
Dさんの最初の職務経歴書は、次のような内容でした。
「登録スタッフの面談およびフォロー、派遣先企業への提案業務を担当」
6社出して、書類が通ったのは1社だけでした。
私が話を聞きました。
私「担当していた登録者は何人くらいですか」
Dさん「常時120人くらいです」
私「派遣先の企業は」
Dさん「30社ほどです」
私「欠員が出たときは、どのくらいで手配していましたか」
Dさん「当日の朝に連絡が来て、始業までに代わりを立てることもありました。2時間以内ですね」
どれも書類には一言も書かれていませんでした。
書き直した内容は、こうです。
「登録者約120名と、取引先企業30社を担当。企業からの要件をもとに候補者を提案し、就業開始後は月次で状況を確認。
急な欠勤が発生した際は、2時間以内に代替の手配を完了させる体制を担当していました。年間で〇件の欠員対応を行い、就業先への影響を最小限に抑えています。
就業者と企業の間で条件の認識にずれが生じた際は、双方から状況を聞き取り、契約内容に沿った形で調整しました」
次の4社で、3社の書類が通りました。
面接では、欠員対応の話が必ず聞かれたそうです。
面接官「2時間で代わりを立てるというのは、どうやっていたんですか」
Dさん「日頃から、稼働していない登録者の状況を把握していました。誰がどの曜日なら動けるかを、頭に入れておくようにしていて」
面接官「その情報は、どう管理していましたか」
管理の方法まで聞かれたそうです。それだけ、他業界から見て珍しい経験でした。
業務の幅が広いことは、弱点ではありません。ただし、書類では焦点を絞ってください。全部を並べると、何ができる人か伝わらなくなります。応募する職種に近い業務を、前に出してください。
4. 書ける数字
| 数字 | 例 |
|---|---|
| 担当していた登録者数 | 「常時約120名」 |
| 担当していた企業数 | 「取引先30社」 |
| 面談の件数 | 「月に〇件の登録面談」 |
| 欠員対応の速度 | 「2時間以内に代替を手配」 |
| 契約更新の件数 | 「月に〇件の更新手続き」 |
| 継続率 | 「担当先の契約更新率〇%」 |
| チームの人数 | 「〇名体制のうち〇社を担当」 |
正確な数字が出ない場合は、幅で書いて構いません。「約120名」で十分です。
最も効くのは「担当していた登録者数と企業数」です。同時に何件を管理していたかが、一言で伝わります。
「継続率」を出せる場合
契約の更新率や、就業者の定着率が分かる場合は、書いてください。これは、フォローの質を示す数字になります。
分からない場合は、次のように書けます。
「担当した就業者のうち、契約期間の途中で離脱したのは年間〇件でした」
また、担当していた業種も書いてください。「製造業の工場を中心に30社」と書けると、その業界への転職で有利になります。派遣先の業界に詳しいことは、そのまま知識として評価されます。
5. 狙いやすい職種
| 職種 | 使える経験 | 入りやすさ |
|---|---|---|
| 法人営業 | 企業への提案、要件のヒアリング | 入りやすい |
| カスタマーサクセス | 就業後のフォロー、継続の維持 | 入りやすい |
| 人事(採用担当) | 面談、候補者の見極め | 経験次第 |
| 営業事務・業務推進 | 契約管理、記録の作成 | 入りやすい |
| 総務・労務 | 契約、条件変更の手続き | 経験次第 |
| 生産管理・工程管理 | 人員の配置、緊急対応 | 経験次第 |
最も相性がよいのは、法人営業とカスタマーサクセスです。どちらも「関係を継続させる」という業務が共通しています。
人事の採用担当も狙えますが、経験者採用が中心のことが多く、求人数は限られます。
同業他社に移る場合
条件の改善が目的なら有効です。ただし業務内容は大きく変わらないため、仕事の中身を変えたい場合は解決になりません。
何を変えたいのかを先に決めてください。条件なのか、業務内容なのかで、応募先が変わります。
なお、派遣先の企業名は書けません。「製造業の工場」「小売の店舗」といった業種と規模で書いてください。取引先の情報は守秘の対象です。
6. 業界用語を置き換える
| 業界の言葉 | 書き換えの例 |
|---|---|
| 登録者・スタッフ | 担当した人材/就業者 |
| 稼働 | 就業中の状態 |
| 案件 | 取引先の求人/募集 |
| マッチング | 条件の照合と提案 |
| フォロー | 就業後の定期的な状況確認 |
| 更新 | 契約の継続手続き |
| 顔合わせ | 就業前の面談 |
「稼働」「案件」は、業界外では意味が変わります。職務経歴書からは消してください。
読み手が人材業界を知らない前提で書いてください。書き終えたら、業界の外の人に読んでもらうと確認できます。
個人情報の扱いに触れない
登録者の情報は個人情報です。職務経歴書にも面接にも、特定できる内容は書かないでください。
書けるのは、人数、属性の傾向、対応した件数といった集計された情報だけです。「〇歳の女性が」といった個別の事例は、匿名化しても避けてください。
情報の扱いに慎重であること自体が、面接では評価されます。
7. 面接で聞かれる3問
- 「同時に何件を管理していましたか」
- 「就業者と企業の意見が食い違ったとき、どう対応しましたか」
- 「なぜ人材業界を離れるのですか」
1問目は、規模の確認です。数字で答えてください。
2問目が、この経歴で最も評価される質問です。どちらかの味方をした話ではなく、着地点を作った話をしてください。
「就業者からは業務内容が説明と違うという申し出があり、企業側は契約通りという認識でした。両方から具体的な作業を挙げてもらったところ、契約書に書かれていない作業が2つ含まれていることが分かりました。その2つを切り分けて、企業側で対応いただく形に変更しました」
事実を確認して、切り分けた、という進め方が評価されます。
3問目は、業界の批判にしないでください。「一つの企業に継続して関わりたい」という形が使えます。
「複数の企業と就業者の間に立つ仕事でしたが、次は一つの組織の中で、継続して関わる仕事をしたいと考えています」
事例は2つ用意する
面接で聞かれるのは、うまく着地させた事例です。2つ用意してください。
1つ目は、就業者と企業の意見が食い違った事例。2つ目は、急な欠員に対応した事例です。どちらも「状況→自分がやったこと→結果」の3段で60秒にまとめてください。
うまくいかなかった事例を聞かれることもあります。その場合は、何を学んだかまで話せるようにしておいてください。
8. 進め方と時間配分
| 段階 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 数字の棚卸し | 60分 | 登録者数、企業数、対応件数 |
| 用語の置き換え | 30分 | 業界用語を一般語に変換 |
| 職務経歴書 | 3時間 | 数字入りで作成 |
| 事例の整理 | 60分 | 調整した事例を2つ用意 |
| 求人の選定 | 90分 | 法人営業とカスタマーサクセスを中心に |
合計7時間ほどです。事例の整理を飛ばさないでください。面接で必ず聞かれます。
9. よくある質問
人材業界の経験は評価されますか
複数の関係者を同時に動かす経験として評価されます。評価されないのは、業界用語のまま書いて内容が伝わらない場合です。
専門性がないと感じます
業務の幅が広いことが、専門性がないように見えているだけです。「同時に何件を管理していたか」という規模と、「調整した事例」を書けば、専門性として伝わります。
人事の採用担当に移れますか
移れます。ただし経験者採用が中心のため、求人数は限られます。面談の件数と、見極めの基準を具体的に書いてください。
業界が厳しいことを退職理由にしていいですか
避けてください。「一つの組織に継続して関わりたい」という形に変えてください。
営業とコーディネーターで書き方は違いますか
前に出す要素が変わります。営業なら企業数と提案の実績、コーディネーターなら登録者数とフォローの内容を中心にしてください。
数字を記録していませんでした
1週間だけ数えてください。担当している登録者数、企業数、その週の対応件数。平均として書けます。
何年目で動くのがよいですか
2〜3年目です。1年未満だと担当件数が少なく、書ける数字が集まりません。
資格は必要ですか
必須ではありません。数字と事例を書けるようにするほうが優先度が高いです。労務や社会保険に関する知識がある場合は、総務・労務職への応募で有利になります。
10. まとめ:今週やる3つのこと
人材派遣の内勤経験は、数字にすれば異業種でそのまま通用します。
1. 数字を4つ数える。担当していた登録者数、企業数、月の面談件数、欠員対応の速度。この4つが書類の骨格になります。
2. 業界用語を全部消す。稼働、案件、マッチング、フォロー。これらを一般語に置き換えてください。
3. 調整した事例を2つ書き出す。就業者と企業の間で意見が食い違ったときに、どう着地させたか。面接で最も聞かれる部分です。
持っているのは「調整力」という曖昧なものではなく、同時に何件を管理していたかという実績です。
この先、読むべき記事
- 人材業界研究|第二新卒が3つの型で理解する収益構造と職種(業界の構造)
- 第二新卒の業界変更完全ガイド|異業種転職で成功する3つの条件と失敗パターン(業界を変える手順)
- 営業からカスタマーサクセスへ|未経験の第二新卒が内定を取る3つのアピール法(カスタマーサクセス)
- 「活かせる経験」欄の書き方|求人票の要件に3つで返す(経験の書き方)
- 印刷会社からの転職|第二新卒が持っている3つの武器(隣接業界の例)
- 派遣事務から正社員の事務へ|第二新卒が業務範囲を数字で示す手順(派遣で働く側からの転職)
- 人材紹介(RA・CA)の自己PR|第二新卒の例文6パターンと間に立った経験の書き方(人材紹介への転職)
- 人材派遣の営業の自己PR|第二新卒の例文6パターンと充足率の書き方(この職種の自己PR)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。1996年生まれ、神戸市出身。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、メディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。その後スタートアップに3人目の社員として参画し、現在は自分の会社を経営している。