リハビリ職から転職する|理学療法士・作業療法士の選択肢【2026年版】
理学療法士や作業療法士として数年働いたあと、一般企業への転職を考える人は少なくありません。理由は人それぞれですが、相談で共通して出てくるのは「このまま10年後も同じことをしているのか」という感覚です。
一方で、転職活動を始めると別の壁にぶつかります。職務経歴書に何を書けばいいのか分からない。単位数、評価、プログラム立案、カンファレンス。医療・介護の現場の言葉は、一般企業の採用担当にはほぼ通じません。
この記事では、日々やっていることを企業の言葉に翻訳する対応表から始めて、狙える職種と面接での答え方まで整理します。
1. 翻訳表:やっていたことを企業の言葉に置き換える
| リハビリ職の業務 | 一般企業での言い方 |
|---|---|
| 評価(初期・中間・最終) | 現状分析、課題の特定、効果測定 |
| プログラム立案 | 目標設定と計画立案 |
| 目標設定(短期・長期) | KGI・KPIの設計、期間を区切った目標管理 |
| カンファレンス | 多職種との調整、関係者間の合意形成 |
| 家族への説明 | 決裁者・関係者への説明と納得の獲得 |
| 記録・報告書 | ドキュメント作成、報告資料の作成 |
| 担当単位数の管理 | 稼働管理、生産性の管理 |
| 後輩・実習生の指導 | 教育、育成、業務手順の標準化 |
最も強い材料は上から3行目です。リハビリ職は「現状を測る→目標を数値で置く→計画を立てる→期間後に効果を測る」というサイクルを日常的に回しています。これは事業会社の目標管理とまったく同じ構造です。
4行目と5行目も見落とされがちです。医師・看護師・介護職・ケアマネ・家族という立場の違う相手を集めて、方針を合わせる仕事をしている。これは社内外の調整力そのものです。
2. 数字の作り方
| 探す場所 | 出てくる数字 |
|---|---|
| 1日の担当単位数 | 「1日18〜21単位、月平均〇単位」 |
| 担当患者数 | 「常時15〜20名を担当」 |
| 施設の規模 | 「病床数120床、リハビリ科スタッフ14名」 |
| 指導した人数 | 「実習生を年3名、新人2名を担当」 |
| 改善の実績 | 「担当患者の在宅復帰率」「歩行自立に至った割合」 |
| 委員会・チーム活動 | 「転倒予防チームに所属、月1回の勉強会を運営」 |
最後の行が効きます。院内の委員会活動やチーム活動は、職務経歴書では「担当業務以外の取り組み」として書けます。会社で言えば、部署をまたいだプロジェクトへの参加です。
書き方の例です。
ビフォー 「理学療法士として3年間、回復期病棟でリハビリテーションを担当しました。」
アフター 「回復期リハビリテーション病棟(120床、リハビリ科14名)にて理学療法士として3年勤務。常時15〜20名を担当し、1日18〜21単位を実施。患者様ごとに3か月単位の目標を設定し、2週ごとに達成度を測定しながら計画を修正する運用を担当しました。転倒予防チームに所属し、月1回の勉強会の企画・運営を2年間担当しています。」
数字:120床、14名、3年、15〜20名、18〜21単位、3か月、2週、月1回、2年。9つ入っています。
3. 編集長が相談を受けた話:「目標設定」が評価された
リハビリ職から法人向けサービスの企業に転職した方から、選考の話を聞いたことがあります。
相談者「面接で一番食いついてもらえたのが、意外なところでした」
私「どこですか」
相談者「3か月の目標を立てて、2週ごとに測って、達成できていなかったら計画を変える、っていう話をしたら、面接官が身を乗り出してきて」
私「なんて言われました?」
相談者「『それをずっとやってきたんですね』って。うちの営業でそれができる人が少ない、と」
本人にとっては当たり前の業務でした。目標を数値で置いて、途中で測って、届いていなければ計画を修正する。リハビリ職はこれを患者さん1人ごとにやっています。
一般企業では、これを実際に回せる人は多くありません。「目標を立てる」までは誰でもやるが、「途中で測って計画を変える」までやり切る人は少ないからです。
当たり前にやっていたことほど、書き漏らします。翻訳表を1行ずつ埋めるのは、そのための作業です。
4. 狙える職種
| 職種 | 活きる経験 | 難易度 |
|---|---|---|
| 医療機器・福祉用具メーカーの営業 | 現場を知っている。専門用語が通じる | ◎ |
| 医療・介護系の人材紹介 | 求職者と施設の双方の事情が分かる | ◎ |
| 介護・医療系サービスの導入支援 | 現場のオペレーションを理解している | ◎ |
| カスタマーサクセス | 目標設定と効果測定のサイクル | ○ |
| 健康経営・産業保健の支援 | 身体機能の知識が直接使える | ○ |
| 人事(採用・教育) | 指導経験、多職種との調整 | ○ |
| 営業(無形商材) | 説明と納得を得る経験 | ○ |
| IT・エンジニア | 学習が必要。医療系システムなら接続あり | △ |
上3行が最も現実的です。医療・介護の現場を知っている人材は、その領域の企業から強く求められます。営業先の施設長やリハビリ科の責任者と、対等に話せるからです。
5行目の健康経営領域も伸びています。企業向けの健康支援サービス、運動指導、産業保健の分野では、資格と知識がそのまま使えます。
5. 退職理由をどう答えるか
「国家資格を取ったのになぜ」という疑問が面接官の側にあるため、ここは丁寧に組みます。
避けたい答え方 「給料が上がらないので」「体力的にきついので」
事実だとしても、これだけだと次も同じ理由で辞めると受け取られます。
使える型
回答例:「回復期病棟で3年間、患者様お一人ずつに3か月の目標を立てて、2週ごとに測りながら計画を修正する仕事をしてきました。この、現状を測って計画を立て直す部分に一番手応えを感じていました。ただ、対象が目の前の患者様お一人に限られます。同じ考え方を、より多くの人が使う仕組みの側で使いたいと考えて、福祉用具メーカーの営業を志望しました。前職で使っていた製品でもあり、現場でどう使われているかを説明できる立場だと思っています。」
構成は4つです。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| やってきたこと | 数字を入れて具体的に |
| 面白かった部分 | 業務の中の一部分を特定する |
| 今の環境の限界 | 「対象が限られる」など構造の話にする |
| だから応募先 | 応募先で何ができるか |
3つめを「人間関係」や「待遇」ではなく「構造」で言うのがコツです。構造の話なら、転職先で解消できることが明確になります。
資格を活かす道と離れる道の比較
| 項目 | 資格を活かす道 | 資格から離れる道 |
|---|---|---|
| 職種の例 | 福祉用具メーカー営業、医療介護系の人材紹介、健康経営支援 | 営業、人事、カスタマーサクセス、企画 |
| 選考の通りやすさ | 資格と現場経験が要件になり通りやすい | 経験の翻訳が必要 |
| 初年度の年収 | 横ばい〜上がる場合がある | 下がる場合がある |
| 書類の手間 | 現場経験をそのまま書ける | 第1章の翻訳が必要 |
| 数年後の広がり | 医療・介護領域が中心 | 業界を選ばない |
順番としては、資格を活かす道から見るのが合理的です。通過率が高く、書類の準備も軽いため、自分の市場での位置を早く確かめられます。そのうえで条件が合わなければ、離れる道に広げる。この順なら、材料が増えた状態で決められます。
復職の道も残ります。リハビリ職の求人は継続的にあり、数年のブランクを経て現場に戻る方もいます。片道切符と考えると判断が重くなりすぎるので、「一度企業側を見てみる」くらいの構えで構いません。
6. 職務経歴書の構成
| 位置 | 内容 |
|---|---|
| 冒頭(要約) | 4〜5行。施設規模、担当数、単位数、目標管理の運用 |
| 職務経歴 | 病棟・施設の種別、担当業務、数字 |
| 担当業務以外の取り組み | 委員会、勉強会、実習生指導、マニュアル作成 |
| 活かせる経験 | 応募先の業務に対応する形で3つ |
| 資格 | 免許、取得年月、その他の資格 |
3行目を独立させるのが要点です。リハビリ職の日常業務は職種名でほぼ想像がつくため、そこだけだと差がつきません。委員会活動、勉強会の運営、実習生の指導。この欄が、その人が「言われたことをやる人」か「自分で動く人」かを分けます。
7. 面接で聞かれる3問と答え方
Q1「せっかくの資格を使わないのはもったいなくないですか」
回答例:「資格は返上するわけではありません。福祉用具の営業では、身体機能の評価の考え方を理解していることが提案に直結すると伺っています。資格を取るまでに学んだ内容は、そちらでも使えると考えています。」
Q2「営業の経験がありませんが、大丈夫ですか」
回答例:「営業の型は入社後に覚える前提でいます。ただ、患者様やご家族に対して、なぜこの訓練が必要かを説明して納得いただく仕事は3年間続けてきました。相手が納得していないまま進めても結果が出ないという点は、共通していると考えています。」
Q3「現場に戻りたくなりませんか」
回答例:「今のところ考えていません。3年間現場を経験したうえでの判断です。現場に戻るとしても、一度企業側を見てからのほうが、できることが増えると思っています。」
3問目は必ず来ます。「戻らない」と言い切るより、「経験したうえでの判断」という根拠を添えるほうが説得力があります。
8. 勤務条件の変化を確認する
| 項目 | 医療機関での一般的な形 | 一般企業で確認すること |
|---|---|---|
| 勤務時間 | 診療時間に合わせた固定 | 残業の実態、みなし残業の有無 |
| 休日 | シフト制、4週8休など | 年間休日日数、土日祝かどうか |
| 夜勤・当直 | 施設により有無 | 原則なし |
| 賞与 | 年2回、法人により差 | 支給実績(月数)と在籍要件 |
| 年収 | 350〜450万円が中心 | 未経験入社の初年度と3年後の水準 |
| 移動 | 施設内が中心 | 外回りの有無、担当エリア |
営業職に移る場合、外回りが加わるのが最大の変化です。1日の動き方がまったく変わるので、面接で「1日の流れを教えてください」と聞いておくことをおすすめします。
9. よくある質問
理学療法士と作業療法士で転職のしやすさは変わりますか
大きくは変わりません。応募先の領域によって、どちらの知識が求められるかが変わる程度です。福祉用具や住宅改修の領域では作業療法士の知識が、運動器や整形外科領域では理学療法士の知識が活きやすい傾向があります。
言語聴覚士でも同じですか
同じ考え方が使えます。加えて、コミュニケーション支援や嚥下の知識は、介護食・栄養関連の企業でも評価されます。
在籍3年未満でも転職できますか
できます。第二新卒として扱われる期間なので、むしろ職種を変えるには動きやすい時期です。
年収は下がりますか
職種によります。医療機器・福祉用具の営業では下がらない場合が多く、一般事務では下がることが多いです。3年後の水準を面接で確認してください。
資格の更新や登録はどうしますか
免許自体は更新の必要がないものが多いですが、所属先の変更に伴う手続きが必要な場合があります。所管の窓口で確認してください。
訪問リハビリの経験は評価されますか
されます。単独で判断して動く経験、移動しながら複数の担当を回す経験は、営業職と構造が近いため説明しやすい材料です。
転職エージェントは医療系に特化したところがいいですか
資格を活かす方向なら医療系に強いエージェント、完全に離れるなら第二新卒向けの総合型が合います。両方に登録して紹介の質を比べるのが確実です。
職務経歴書は何枚が適切ですか
2枚が基本です。単位数や患者数の詳細を書きすぎて3枚以上になると、読まれない部分が出ます。
10. まとめ:今週やる3つのこと
リハビリ職からの転職は、経験が足りないのではなく経験が翻訳されていないことが壁になります。
1つめ、第1章の翻訳表を見ながら、自分の業務を書き出す。左に現場での言い方、右に企業での言い方。8行埋めてください。所要30分。
2つめ、第2章の表から数字を6つ探す。施設規模、担当患者数、単位数、指導した人数、委員会活動の頻度、勤続期間。所要20分。
3つめ、担当業務以外にやったことを3つ書き出す。委員会、勉強会、実習生指導、マニュアル作成。ここが職務経歴書で差がつく欄です。所要20分。
3つ合わせて1時間強で、書類の骨組みができます。
この先、読むべき記事
- 未経験職種向けの職務経歴書|第二新卒が書く順番を変えて通す型(書類の作り方)
- 歯科衛生士から転職する|国家資格を武器に変える書き方(同じ医療資格職からの転職)
- フィットネス業界から転職する|継続率を実績に変える(フィットネス業界からの転職)
この記事を書いた人
木戸 悠介(きど ゆうすけ)/なぜキャリア?運営者。
23歳で上場企業子会社に新卒入社し、飲食・宿泊・レジャー領域のメディア広告営業を担当。25歳で第二新卒として障がい福祉領域のSaaS企業へ転職し、営業から営業企画へ職種を変えた経験を持つ。2ヶ月で10社に応募し2社から内定。現在は自分の会社を経営している。